第4話 武器製造

 クラフト台は大きな四角い箱のような机をしています。クラフト台の横にはノコギリやトンカチ。そのほかに、よく図工の授業でつかうヘラのようなものまで付いていました。


 わたしは、伐採した木から採取した粘土状の木の幹をクラフト台の上に置いて、こねていきます。


 木の匂いが、ほのかにかおる。粘土の木材。ヘラで大きさを整え、細く伸ばしたり。時には丸めたりを繰り返して形をつくっていきます。


 倒木した木から枝を採取。木の葉をちぎりながら丸めていきます。ここからが最終工程。ひたいの汗を拭い、気合いを入れました。


——ヨシっ!もうちょっと


 枝を支柱にして、木の幹をこねて作った粘土を、枝の周りに巻き付けます。細過ぎず、長過ぎず、持ちやすい大きさに形を成形。最後に緑色の木の葉を丸めて作った装飾をつけました。


「できた!」


 杖をクラフト台から取り上げると、それは粘土のようなフニャフニャではなく、硬い魔法の杖となりました。硬くなった杖は、不思議なことに、木のざらざらとした感触と匂いがします。


 すくっと真っ直ぐに伸びた魔法のつえ。ツルのように細くこねた木の幹は、トグロを巻くように杖に巻きつき、小さな緑色の木の葉のマテリアルが、杖を装飾する。


 この杖で、どんな魔法が使えるかは、わからないケド……たぶん、上手くいくハズ!



「やっぱり、わたしたちはコレだよね」


 私たちは互いの作品を見せ合う。

 カナちゃんの杖は、わたしのと比べて少し浅黒い。「木の皮を中心に作ったんだ」と教えてくれました。


「カナちゃん、その宝石!?」

「へへぇーん、気づいた。宝箱の中にあった宝石を使ったの。エメラルドかな?」


 ゲームじゃ、こんなに細かくつくれなかったんだけどな……


 カナちゃんの浅黒い杖は緑色の装飾と、とても似合っていました。いびつな形に折れ曲がった杖の先に、大きな宝石の装飾。使い古した魔法の杖みたい。


「素敵なつえだね」

「ユリちゃんのも、かわいいネ」


「どんな魔法が使えるのかな?」

「わからない」

「次は他の素材でも、クラフトしてみたいネ」

「それ、いいね」


 二人でお互いの杖を褒め合っていた、その時でした。


「うわぁ!」とシュンスケ君の声が森のなかに響きます。


 森はもう暗がりで先を見通す事ができません。ざわざわと森の木々が揺らいでいます。


「どうしたんだろう。大丈夫かな?」

「急いで向かおう」

「そうだね」


 私たちは作ったばかりの魔法の杖を右の手に持ち、仲間のもとへと走り出しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る