第27話 最果ての夜

 扉の先。人工的な石レンガの橋を駆け抜ける。空は永遠の夜。永遠に太陽の登らない、静寂な星空に大きな月が輝いていました。


 その月光を遮るようにして姿を表す巨大な影。


「こ、これが……ラストドラゴン!」


 私達が驚いたのも束の間。巨大な黒いドラゴンが火炎を吹きました。目の前は悲惨な状況。生徒たちが、バタバタとやられては消えていきます。


「大丈夫。クラスメイトはゲームプレイヤーです。実際には問題はない。それより、僕たちは気をつけないと……」


 一瞬で何人かの生徒がやられた。緊張が走る。やっぱり、最後の敵は恐ろしく、強い。


「でも。どうやって倒すんだよ」


 シュンスケ君の一言に、みんなの視線が私に集まる。たぶんだけど、ラストドラゴンまでゲームを進めたのはクラスで私しかいないかも。


「ラストドラゴンは、飛ぶのにつかれたら中央の台座に戻って羽休めをするはず……そこを狙えばいいと思う」


 私は以前のゲームのことを思い出しながら話しました。その内容をふまえて、先生とカナちゃんが指揮をとります。


「なるほど。ユリさんはゲームでラストドラゴン戦を経験済みでしたね」

「よし、じゃあ。ウチらはドラゴンが降りてくるまで耐えるのよ」


 骨太の翼から放たれる突風。生徒たちが使うキャラクターは空に舞いあげられ、落下の衝撃で倒されていく。


「つ、強〜!それに、ぜんっぜん、アイツ降りてこないぞ」

「そういえば、コウモリ男がラストドラゴンとか言ってましたね……まさか!」


 嫌な予感がする。タクマ君の考えが、なんとなくだが分かる。そして、私もヒシヒシと感じていた。


ーー私がゲームで見たラストドラゴンとは、違うのかもしれない


 恐る恐る、タクマ君の顔を見る。


「もしかして、降りてこないってこと」

「その可能性が高いと思います」


 今までの攻略法が通用しない……。一瞬にして曇る表情。そんな、みんなを励ますように、カナちゃんが明るく笑いました。


「だったら、違うやり方で倒せばいいのよ。今までだって、ウチら、そうしてきたじゃん」


カナちゃんの杖が光。雷撃。杖の先、黄色い鉱石から放たれるイナズマ。

 しかし、ラストドラゴンの速さは魔法より上回る。ヒラリとかわすと続けざまに火炎攻撃。地面が燃え上がります。


「もう!ぜんぜん当たらないよ」

「ここは、僕の弓矢で!」


 タクマの放つ弓矢も軽々と弾かれダメージを与えることができない。


「どうすんだよ。ドラゴンには近づけねぇ。それに、地面が燃えてて逃げ場もねぇーぞ」

「大丈夫。カナちゃんも言ったじゃない。私達は、どんな困難も、いっぱい乗り越えて来たんだから!」


 カナちゃんがいれば、私は頑張れる。もう、昔の引っ込み思案の私じゃない。運動は苦手だけど、私にだってやれることはある。


「私が行く!」


 私はポケットからホウキを取り出し、ラストドラゴンまで飛び出しました!

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