第25話 コウモリ男と黒マント

 重厚な扉から湧き出ててくる吸血コウモリ。倒しても倒しても、数が減ることはありません。


「みんな、はやく逃げて!」

「逃げろって言ったって、どこに行けばいいんだよ!?」

「だいたい、ウチらはラストドラゴンを倒しに行かないと」


 コウモリの渦の中、パニックになりながらの戦闘。そんな私達の目の前に、コウモリを操る男が現れました。


「なかなか、しぶとい奴らだ。新しいラストドラゴンが無事に誕生した。それを、また……。それも、こんな……ちびっこに倒されては困るのだよ」


 大柄な男に睨まれる恐怖。ギロリと鋭い目、頬に大きな傷跡が二つ。


「いやよ。ウチらは、お家に帰りたいの!」


 恐怖に立ち向かう、カナちゃんの必死の叫び。私達もウンウンと頷きます。


「五月蝿い!この世界は滅びて貰わなければ困る。人類は月に夢に恋焦がれ、月を思い躍進して来た。今更、イチとゼロのまやかしに陶酔するなど、ありえない……あり得ては、いけないのだ!」


 何を言ってるかは分からない。でも、私には思うことがあります。


ーーこの世界を、滅ぼしていいワケがない!


「この世界は生きてる。だから……人が勝手に滅ぼしてはいけないと思います。私が出会ったフレイルさんや、ここにいるラストルさんは、生きてるもん!」


「この世界が生きてるだぁ?もうじき、この世界は終わる。終わらせる!ラストドラゴンが破壊の全てを尽くす。オマエ達は生贄だ。電脳世界の脅威を身をもって示してもらう。フハッ!ハッハッハー」


 太々しい笑い。私は悔しい。みんな、懸命に生きてるのに……

 確かにゲームと現実は違うかもしれない。でも、フレイムさんは、私に優しく話しかけてくれた。ラストルさんも、ここまで私達を連れてきてくれた。


 なのに……


「うるさいのは、オマエの方だ!」


 コウモリ男の狡猾な笑いを遮るように現れたのは黒マントを翻す男でした。ラストルに乗り、軽やかに、そして颯爽と、それは空を統べるかのような身のこなしでした。


「あぁ!アイツは、あの時の」

「ラストルを従えてる?仲間ということでしょうか?」

「み、味方って事でいいんだよな」


 その男を三人は知ってる人のようです。私は、捕まった時に三人が出会った男の話を思い出しました。


 空色の獣に乗る、黒マントの男。武器は大剣。その大剣の一振りが作り出すのは、黒き疾風のカマイタチ。

 私達のまわりを覆い尽くす程のコウモリが、一瞬に切り刻まれては、落下していきます。


「クソッが!どうせ貴様もチーターだろう」

「オマエなんかと一緒にしないで欲しいな。私は腐っても、ゲーマーだ」


 さらに、大剣を一振り……時空を切り裂くような巨大な黒い風の刃が大量のコウモリを吹き飛ばし、私の目の前には道ができました。


「今のうちに!世界を君達にたくす」


 男の声に私は違和感を感じながらも、みんなと顔を見合わせました。


「みんな、行こう!」


 私達は勢いよく走り出しました。

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