第24話 最後への入り口
私達はカナちゃんと合流しました。みんなが無事で本当に良かったです。
シュンスケ君が掲げているのは、まさしくラストルのツノ。タクマ君も負けじと、フレイルの赤いツノを掲げます。
「それはフレイルのツノじゃないか!君達は、本当にたいした子供達だね」
静かに笑う空色の獣。くるくると様子を伺うように歩いていました。揺れるツヤのある毛並み……。
私は我慢できずに、ラストルに飛び付きます。
「ちょ、ちょっと。ユリちゃん?」
ーーもふもふ。やゔぁい。モフモフ
「ユリちゃん。動物、好きだもんね」
「カナちゃん、違うよ。好きじゃない。大好きなんだよー」
尻尾をわしわし……
体をわしわし……
首をわしわし……
ラストルはゲームで見た時より素敵!美しい。「パパ、あれ飼いたい」と言った事を、私は思い出していました。
「これはゲームだぞ。それにラストルは敵なんだから……」なんて言われてガックシした事があります。
夢にまで見たラストル。その気品に満ちた姿。空色の触り心地は、お布団みたいに温かい。そして、なにより……その優しげな顔が、心を持っているかのようで
ーー生きている?
体の奥底。心臓の鼓動が、私の手を伝い聞こえてきます。すると、ラストルが私達に声をかけました。
「さて、君達。ワタシに乗りなさい。ラストドラゴンの所まで、連れていってあげよう」
「本当?」
「やったー!」
ラストルに乗っての移動。私達は風になったかのような感覚でした。
するりと洞窟を脱出したかと思うと、草原をこえ、山を越え、林の木々を縫うように進みます。
「この世界、広いのね!」
「さすが、これぞ第二のユートピアですね」
「タクマ、ユートピアっつたら、月だろ」
「私、前にお父さんに聞いた事がある。もしかしたら、ゲームの世界が次のユートピアになるかもって」
ラストルは林を抜け、海を駆ける。海面を弾むように蹴り上げ、ふわりと跳躍。
「君達は、なかなか……博識ですね」
「ハクシキってなんだ?」
「教養が高いってことですよ」
「じゃあ、シュンスケには関係ないわね」
風に乗って、ケラケラと笑い声が流れます。
「さぁ、着きましたよ」
空色の獣が立ち止まる。その表情は、先程の優しげな顔とは違い、少し強張っているようにも見えました。
海面にポツンと浮かぶ大きな扉。その黒い扉は閉ざされています。
「これがラストワールドの入り口か?ドアしか無いじゃん」
「間違いない。これがラストワールドの入り口だよ。鍵をクラフトして開ければ、ラストワールドまでワープするの」
「ユリさんが言うなら間違いないようですね」
「この先に、ラストドラゴンがいる。これでウチらはゲームから脱出できるのね…… でも大丈夫?ラストドラゴンって強いんでしょ?」
カナちゃんが不安そうな顔をしています。
「大丈夫。君達なら出来るさ」
ラストルさんに勇気づけられ、最後の扉を開けるための鍵をクラフトします。フレイルさんの「赤いツノ」とラストルさんの「青いツノ」。
2つの素材をこねて、混ぜる。細く尖らせて鍵穴に差し込むと、クラフトした鍵は勝手に形作っていきます。
ガチャリ!
音がします。ギィーと開く扉が開いたかと思うと黒いモヤのようなものが近づいてきます。
「これは、吸血コウモリですよ」
「やべ!早くドア閉めないと」
最後の扉の奥底から大量のコウモリが!私達めがけて襲いかかってきたのでした。
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