第22話 ラストル討伐戦
「オマエがラストル……で、間違いないよな」
「えぇ、ワタシが貴方達の探すラストルです」
波がまったく立つことのない地底湖の上。ラストルが軽やかに滑る。
「意外にあっさり答えてくれるのね」
「違うと言っても信じてくれなさそうなので」
「違うのか!?」
「そんなわけ無いでしょ。青いツノ、あるじゃん。シュンスケ、だまされないで」
ウチらの会話を聞いていた空色の獣がケラケラと笑う。
「君達は……面白いですね」
「うっせー!だましやがって」
シュンスケが剣を振る。赤色の鉱石で作られた炎の剣。その斬撃は燃えるような赤をまとい、魔法のように放たれる斬撃。
ラストルは、その斬撃をふわりと避ける。
「炎とは……対策はバッチリと言うことですね。ならば、ワタシも遠慮なく」
一角獣の青いツノが光る。先端に集まる魔力の結晶から放たれるビームは当たったものを凍らせる。岩壁、地底湖、松明。
「ファイアウォール」
炎の魔法。私の杖の先、地面から現れるいくつかの火柱が壁を作る。眩しいビームがぶつかる。炎すら凍らせる青白い光。
「コードまで扱えるとは、凄い執念。どうしても、この角が欲しい……という事ですね」
「そうよ。ウチらは、元の世界に戻りたいの。その為には、青いツノが必要なの」
反撃。火球をラストルめがけて放つ。が、冷静にかわされる。なんども放つ火球だが、蒼き獣は冷静に回避する。
「フレイルの赤いツノとワタシの青いツノ。その2つで作る最後のカギ。ラストドラゴンのいる最果てへの扉を開けるカギ……ですか」
「そこまで知ってるなら、ちょうだいよ」
「フフッ!それは、できませんね。貴方は自分の腕を頂戴と言われてあげますか?」
ーーそれは、あげないけど……
ラストルは霧のように身を隠す。闇の深い地底湖。何処から攻めてくるのか、分からない。背筋に走る寒気。
「あぶねぇ!」
間一髪。ラストルの体当たりをシュンスケが防ぐ。炎の剣と氷のツノがぶつかる。
また、霧のように隠れるラストル。素早い攻撃に反応できない。シュンスケも攻撃に転じることができない。
防戦が続く。ウチが足を引っ張ってる。シュンスケは、かろうじてラストルの動きについて行ってるが、私は目で追うことすらできない。
「シュンスケ、私……」
「大丈夫。ぜってぇ守ってやる」
ウチって、守られてばっかり。ユリちゃんみたいに凄い魔法は使えないし、男の子ほど力もない。悔しい……
「元気出せよ。俺らは負けてねぇ。俺らには、とっておきがあるじゃんか」
「でも、あれは……わかった。あの魔法をつかう。いくよ!」
左手に持ちかえる赤色の宝石の杖。ポケットから出す、黄色の宝石を散りばめた杖の二つ持ち。
唱える呪文は、ユリちゃんが見つけてくれた、ウチにしかできないコード。
「ライトニング スパーク!」
ウチの声といっしょに、洞窟の奥まで届くほどの眩い光。バリバリと唸る雷鳴。何処からともなく現れる稲妻は枝分かれするように、広範囲に広がっていく。
シュンスケを炎の壁で守りながら、稲妻はウチを中心にして、地底湖の奥まで轟く。そして、ついに!湖の端、ラストルをとらえた。
「今よ!シュンスケ」
「おっしゃーーー!」
守られていた火の壁から、シュンスケは、ラストルめがけて飛び出した。
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