第21話 青の洞窟

「ユリちゃん。大丈夫かな」

「オマエはいつも、そればっかりだな」

「だって……」


 細い洞窟を、松明片手に進む。天井から落ちる水滴。ピチョンと、岩壁に反響する。


「大丈夫だ。あっちには、タクマがついてるからな」

「そうね。ユリちゃんも凄い魔法つかえるし」


 二手に別れてから、どのくらい時間が経ったのだろう?


 同じような光景が続く中で、時間の感覚がなくなっていく。細い岩場をツルハシで掘り進め、足場をつくりながら奥へ奥へと進む。


「あっ、そうだ。松明を置いていかないと、だな」

「そうね。こんな迷路みたいな洞窟で、アンタと二人、迷子になったらサイアクよ」


 来た道にはオレンジ色に燃える松明が並ぶ。松明をクラフトするのに必要な材料は、十分すぎるほど集めて、ポケットに入っている。

 足元を流れる水は分岐を繰り返しながら、何度もぶつかり合い、奥に進むにつれて合流し勢いが増していった。


「まだまだ、先がありそうだな。そう言や、ラストルって、どんなヤツなんだ」

「アンタね。全然タクマの話、聞いてないじゃない」


 これから向かう水流の先。待っているのは、青の洞窟。ウチらの目的は、そこに生息するラストルを倒し、ドロップアイテムの青い角をゲットすること。


「ユリちゃんが言うには、ラストルは一角獣だって言ってたわ」

「タクマは狼に似てるって、言ってたっけ」


ーーなんだ。ちゃんと聞いてるじゃん


 勢いよく流れていた水は穏やかに、少し先には大きな湖?地底湖が広がっていた。

 気づけば……ウチらの声しか聞こえない。静かな暗闇。


 その闇は奥の奥まで続いていて、松明の明かりだけでは、先を見通すことができない。


「ココが青の洞窟か?」

「た、ぶん」


 ウチだって、わからない。でも、今までとは何か違う。水に勢いはなく、ゴウゴウと流れていた激流の音は聞こえない。


 松明を水面に近づける。燃える松明の明かりが、透き通る水底を照らす。地底湖の底。青の鉱石が神秘的に輝いていた。


ーーキレイね


 私は水を手にすくい、コクリと飲む。爽やかな液体が体の中を伝う。ふぅ〜と、ためいき。

 その時、背筋の凍らせるような、ひんやりとした空気が流れた。


「あぶねぇ!」


 ウチの前に立つシュンスケ。手には鉄の剣を握っている。その先、ドリルのような長いツノをした……オオカミのような、馬のような、大きな獣がいた。


「ワタシの気配に気づくとは……」


 ふんわりとした青白い毛並み。すかさず、ポケットから杖を取り出して戦闘体制。しかし、ウチらは驚きを隠せなかった。


「「しゃべった!!」」


「そんなことで驚かれるとは」


 獣は舌で毛づくろいをしながら、ふるふると身体を震わせている。


「アナタがラストル?」

「そう、と言ったら……どうします」


 獣が問いかける。風もないのに空色の柔らかな体毛が揺れている。

 ウチらはゴクリと唾を飲み、手に持つ武器をギュッと握りしめた。

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