第18話 赤の洞窟

 柵を壊し動物たちを逃がしてあげます。取れる作物は収穫し、魚は燻製にして保存食に。新しい武器や防具に身を包みます。


 みんなで力を合わせて生活した2週間。ご飯つくったり、魚を釣ったり、野菜や動物を育てたり、ときにはゴブリンを追いやったり……


 大変だったけど、なんか充実してて楽しかったな。


 名残惜しくも、目指すはラストドラゴンの討伐。私たちはログハウスを後にします。



 私たちは進む。山の中腹。いまでは懐かしいと感じる洞窟。シュンスケ君が開けてくれたトラップドアの岩壁。そして、さらに奥に進むと、私が魔法のホウキをクラフトして飛び越えたマグマの流れる谷。


 カナちゃんとシュンスケ君は軽やかに谷を降りる。タクマ君は目をつむり、なんとか下を見ないようにしてホウキで飛ぶ。その、タクマ君を私は導くように引っ張り、そして、谷底へと降り立ちました。


 少し遅れて谷底へ到着するカナちゃんとシュンスケ君。


 マグマと水流がぶつかる場所。黒っぽい岩の隆起。お互いに笑顔で別れます。


 カナちゃん達は地下水の流れる先。ラストルのいる青の洞窟へ。

 私たちは、マグマの流れる先。フレイルのいる赤の洞窟を目指して進み始めました。



 マグマの流れる洞窟内は明るい。溶岩の熱風を肌で感じながら、タクマ君と2人で進みます。


「ユリさんはラストドラゴンまでたどり着いたと聞いていますが、フレイルを倒したってことですよね」

「もちろん、ゲームの話なんだけどね。だけど倒したのは、ほとんどお父さんで、私は安全なところで魔法を使って攻撃していただけかな」


「でも、ラストドラゴンまで行ったってことは、フレイルもラストルも攻略したってことですよね。凄いですね。僕は地下世界で攻略できなくて……」


 ラストドラゴンに辿り着くには、フレイルの赤い角とラストルの青い角。2つのドロップアイテムから、最後の世界へ行くために重要なカギをクラフトしなければならない。


「大丈夫。私たちならできるよ!最後のカギをクラフトして、ラストドラゴンを倒さないと」


「そうですね。でもまずは、この洞窟に住んでる赤ゴブリンから。普通のゴブリンと違って魔法も使います。油断は禁物です……って、ユリさんに説明は必要ないですかね」


 気づけば、洞窟の小さな穴から赤いゴブリンが湧き出ていた。


「そんなことないよ。必要だよ。油断は禁物だからね」


 「はい」と頷いたタクマ君が矢を放つ。その矢は、水流を纏うようにうねりながらも敵を的確に仕留めました。


「やっぱり、火には水ですね。水属性を付与した武器をクラフトしておいて正解でしたね」


 タクマ君は弓矢で、私は魔法で、ゴブリンの魔法が発動する前に敵を倒していきました。


 赤ゴブリンは水に飲まれると水蒸気のように蒸発して消えていきます。


 タクマ君は、切れ目を少しばかり大きくあけると、ガッツポーズをひとつ。次の瞬間、私と目が合い、恥ずかしげに腕を下ろしました。


「この調子で城門目指してガンバリましょう」


 タクマ君は、そう言うと先頭を歩き始めました。私は、その後に続き背後を警戒。赤の洞窟。その先にあるはずのフレイルの砦を目指します。

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