第16話 魔法のひみつ
私たちの拠点は狭いけど雨風をしっかり防げるログハウス。夜間のゴブリン対策で家の周りは石ブロックの塀で囲み、さらには食料対策の畑や牧畜スペースも確保しました。
畑には小麦やにんじん、じゃがいも。その他にも、タマネギやトウモロコシなど。
種や苗は山や林の中をかき分けて探すと色々と見つかりました。ときには、ゴブリンのドロップアイテムにも種が混ざり込んでいたりして、そのたびタクマ君は、はしゃいで葉や種の特徴から、何が育つかを熱心に教えてくれました。
シャベルをクラフトして苗を畑に植え替えたり、種から育ててみたりと色々とチャレンジ。植物は季節に関係なく、育つスピードも驚異的な速さ!すぐに収穫することができました。
「育つの早いね!」
「それに、実際のゲームより食糧アイテムが多いですね」
畑はタクマ君が担当。せっせと耕しながら、どのマスに何を植えるか、いつも楽しそうに考えています。
「今日はトマトが取れたから、ピザにしよう!ユリちゃんが昨日に作ったチーズも、たっぷりと使ってね」
調理担当はカナちゃん。採掘した鉄鉱石からフライパンをクラフト。野菜炒めやシチュー、オムライス。今日の献立は新メニューのピザ。どうやって作るのかな?楽しみ。
「さすがに野菜ばっかりだとな、俺は釣りしてくる」
シュンスケ君は釣りが得意。拠点近くの湖畔で不思議なサカナを釣ってきます。タクマ君も知らないサカナらしいけど、この前みんなで焼いて食べたら美味しかった。
そして私は生き物がかり。塀の外に柵を作りニワトリ、ウシ、ヒツジを飼ってます。
肥料はタクマ君が運んでくれる新鮮な小麦。今日はウシさんのエサとして、トウモロコシも運んでくれました。
「今日は、羊の毛を刈り取ったよ」
「これだけあれば、みんなの新しい防具がつくれそうですね」
新しく作る防具の計画をタクマ君と話していると、カナちゃんがやってきました。
「ユリちゃんと似たような武器をクラフトしても、強い攻撃ができなくて」
私たちは、自分の新しい武器づくりにも力を入れています。
この世界の武器は、様々な鉱石を混ぜて作ることで、強力になります。実際の攻撃にプラスしたスキルを持つことができるのです。
「う~ん、私は魔法のレベルを上げるには『ゆうき』『チャレンジ』そして、『力を合わせる』の3つが必要だと思うんだよね」
なーんて。一度いってみたかったセリフ。カナちゃんが困った顔をしてしまいました。
「うそ、うそ。大切なことかもだけど……ホントに必要なのは呪文かな」
「呪文?」
私たちが話に夢中になっているとタクマ君が説明を始めました。
「たぶん。それはコードというものです」
「コード?」
「僕はプログラミングに興味があるのですが、ユリさんがオークの時に使った強力な水魔法。使う前に『アクアスプラッシュ』と唱えてました」
確かに、呪文を言ったら強くなるように感じていたけど……コードって言うんだ。
「コードを使うと普通とは違う強力な魔法や技が出せるってこと?」
「それできたら、楽勝じゃん」
いつの間にか、バケツ一杯に魚を釣ってきたシュンスケ君も合流します。
「そんな簡単な事ではありません。コードはゲーム、いうなればこの世界を作った人にしか分からないのですから。その武器に合ったコードを唱えなければ、技は発動しません」
「じゃあ、なんでユリにはできたんだ」
「それがわからないのですよ」
ここは、タクマ君も首をかしげました。そして、みんなが一斉に私の方へと向きました。
「いや?なんか呪文を唱えた方が強い魔法が使えるかと思って……」
「なんか、ユリちゃんらしいね」
「そうですね。まっ、いろいろと試してみるのがいいのかもしれません」
「なぁ、いろいろ考えたらお腹空いちった」
「あんたはホント緊張感がないわね。まっ、いいわ。そろそろ日が暮れるし、夕飯にしましょう」
石で作った釜戸から出てくる香ばしい匂いを囲む。とろけるチーズと爽やかなトマトの風味。私たちは美味しい、美味しいピザを食べました。
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