第15話 拠点に帰ろう

 巨大なオークから湯気が立ち上る。水が蒸発し雲になるように巨人は消えていく。私はゆっくりと地面に降り立ちました。


「それにしてもスゴいなぁー。ホウキで空をとべちゃうんだ」

「カナちゃんも試しに乗ってみる」


「やったー」と喜び、ホウキに跨るカナちゃん。シュンスケ君も魔法のホウキに興味津々。


 タクマ君も興味を持っている様子でしたが、それよりもドロップアイテムの巨大なオノを観察していました。


「飛べ〜〜〜!、、、飛べ!とべ!」


 カナちゃんが何度も念じるも、ホウキは空へ飛び上がりません。


「全然ダメ」

「じゃあ、次は俺の番だな。うっしゃ、飛べ!飛べ飛べ飛べ飛べ、とべぇ〜〜〜!」


 少しだけ、シュンスケはフワリと浮くものの……次の瞬間!ホウキはクルリと一回転。シュンスケは、ゴチリと頭を地面にぶつけました。


「大丈夫?」

「イツツ。へへっ、大丈夫。大丈夫」

「浮いても、乗りこなせなくちゃ意味ないわね」

「うるせい、やい」


「ちょっと僕も借りますね」


 アイテムを回収し終えたタクマ君が、戻ってきました。


「使える人が限定されるのでしょうか?不思議ですね。カナさんでは使えなく、シュンスケは使えるケド、うまく乗れない。この調子で行くと僕にも無理でしょう」


 ホウキに跨るタクマ君。無理と言いながらも、体はゆっくりと空へと上がっていく。


「おぉ!スゲー」


 さらに浮上。どんどん小さくなっていくタクマ君。


「ゆ、ユリさん。これは、どうやって降りれば良いんですか?」


 空から大声が降ってきます。


「うーん。感覚かな……」

「もっと論理的に教えて下さい」

「いいじゃん。もっと飛んで見せてよ」


「カナさん……コレ以上は無理ムリです。僕は高いところが苦手なんです〜!」


 私は急いで新しい魔法のホウキをクラフトし、空へと飛び立ちました。気づけば雲と同じくらいまで浮かんでいたタクマ君。

 ゆっくりと引っ張るようにして、なんとか地面に降り立つことができました。



「コホン」と照れながらも、タクマ君は咳払いを一つ。


「これから、どうしましょうか?」

「「「……」」」


 タクマ君は顔を赤くしながら、私に色々と説明してくれました。私がいなくなった時のこと。謎の男のこと。そして、みんなが私を必死になって探してくれたこと。


「とりあえず、その男たちは敵ではないようなのですが……」

「二週間は生き延びないとってことだね」


 この世界で生き延びる。大変なことだけど、みんなと一緒ならできる気がする。


「まず食糧問題を解決しないとだね」

「とりあえず、羊の肉だけなら、もって三日といったところでしょうか」

「えぇ~。もう羊の肉はあきたよ」

「シュンスケ。そこじゃない。このままだと食料が尽きるの」


 みんなで色々と話し合って、不意にカナちゃんが手をパチンと鳴らしました。


「とりあえず。お家に帰りましょ」

「帰るって。ラストドラゴンを倒すのか?」

「シュンスケ、違うわよ。ウチら四人のお家」


 ーーおウチ?ウチら?


「なるほど。そうですね。ユリさんがいなくなってから家を作ったんですよ」

「俺らだけでだぜ!」

「すご〜い。見てみたい!」


 カナちゃんを先頭に、私たちは草原を歩きます。洞窟を探検したり、山を登ったり降りたりと大変でしたが、落ち着いてみんなと話をしているとホッとします。

 夕暮れ時、夜になる手前。私たちは拠点に着くことが出来ました。少し壊れた木の柵を越えると、夕陽に照らされた温かみのある木のお家。


「いいでしょ。中にはベッドもあるよ」


 カナちゃんの手招き。私たちは私たちのおウチに入りました。

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