第14話 強くなりたい!

 オークの体は、いままでのゴブリンと変わらないのですが、筋肉質な体つきに何といっても普通のゴブリンの3倍も4倍も大きい背丈。それは、山に生える木々と同じくらいに、とっても大きい。


 シュンスケ君が木の陰から飛び出します。石剣でオークの足を切りつけるも弾かれてしまいました。


「クソっ!石の剣じゃ歯が立たない。ヤバッ!!!」

「あぶない」


 カナちゃんの杖が緑色に光る。強大な石ブロックがオーク目掛けて飛んでいきます。しかし、緑色の巨人は手にもつ大きなオノで、飛んできた石を木っ端みじんに砕いてしまいました。


「ふぅ。助かったぜ」

「でも、全然きいてない」

「一時、退却です。山を抜けます。僕についてきてください」


 全速力で山を下る。タクマ君の放つ矢も、オークに刺さることなく矢が弾かれました。


「足止めにもなりませんね」


 オークは森の木々をなぎ倒しながら追いかけてきます。


「クソっ。強くなりてぇな。せめて、あの男みたいに強い武器があれば……」

「おの男……?」


「あぁ、ユリちゃんは知らないよね。ユリちゃんが洞窟にいたときに、黒マントの男と戦ってね。そいつの武器の黒い剣がさ、剣なのに魔法みないな技も使って大変だったのよ」


 私はカナちゃんから、私たちが合流する前の一部始終を聴きました。


「僕も、このゲームは良くやりましたが、あんな武器は初めて見ました」


「まっ。俺が、アイツの剣をぶっ壊してやったケドな」

「もう、シュンスケはすぐ調子にのるんだから」


 私は洞窟の中、脱出するためにクラフトした魔法のホウキ。私はその時の考えをみんなに伝えることにしました。


「あのね。たぶんだけど、私、分かったことがあってね。この世界は実際のゲーム世界と、ちょっと違うと思うんだ」


「違うって?」カナちゃんが首を傾げました。


「実際のゲームにはない武器や道具も作れるんだと思う。カナちゃんの使ってる杖だって、本当は無いはずだもん」


「そうなの?」

「たしかに、僕もカナさんの杖には違和感を感じていました。でも、武器を作るにしても、どうやって?それに、あのオークと戦いながらでクラフトするのは……」


 私は洞窟で採掘した鉱石の残りを見せた


「鉱石を混ぜて武器を作れば良いんだと思う。だいじょうぶ。オークは私に任せて」


 ホウキに跨り空に飛び立った。


「ユリちゃん、すごい!!!ホントの魔法使いみたい」

「このホウキも鉱石を混ぜて作ったの。どんな効果があるかまでは、作ってみないと分からないけど、試す価値はあると思うの」


「やって、見ようぜ」

「出来るだけ急ぎます。それまで、お願いできますか」


 私は大きく頷き、そして、空を滑るように飛ぶ。オークの気を引くことだけを考えて飛び回りました。


「お待たせしました」


 しばらくして、タクマ君の声。放たれた弓がゾンビの足元を射抜く。凍る。オークの太い足が凍結し、巨人の動きが鈍りました。


「ユリちゃん。サンキューな!いい武器がつくれたぜ」


 さらに、シュンスケ君が物陰から飛び出しました。火柱を吹く剣。燃えるような刀身がオークを切りつけると、巨大がぐらりと揺らぐ。その瞬間を私は見逃しません。


「アクアスプラッシュ!」


 ホウキの上。上空から放つ水魔法。強力な一撃にオークは膝をつく。


「やっとできた!ウチこだわりの逸品。イッケェェェ〜〜!」


 カナちゃんの叫びと共に輝く杖。剥き出しの黄色の鉱石から、雷光がバリバリと音を立てる。濡れた緑の巨体を貫きました。


 プシューとオークから湯気があがり、やがて、大きな身体は、跡形もなく消えて行きました。


「やったーー!カナちゃん、凄いよ!!」

「ユリちゃんのおかげだよ」

「相性バッチリの連携魔法ですね」

「俺も活躍したぞ」


 カナちゃんが「はいはい」とシュンスケ君を嗜めると、笑い声が上がりました。こうして、私たちは強敵を倒すことができました。

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