第11話 決死の戦い

 シュンスケは3本目の石剣をクラフトする。


「カナさん。矢が付きました後衛まかせました」

「わかった!」


 タクマは冷静だ。弓をポケットにしまうと、石槍をクラフトしてシュンスケの援護に回る。

 私の杖は緑色の宝石が光る。それと、今クラフトした普通の木の杖の二本持ち。石礫と炎の連続魔法攻撃が相手の隙を作った。


「今よ!」


 ウチの声に反応してタクマは槍を投げた。男は何とか大剣で槍を弾くが、その懐へシュンスケが飛び出す。


「うらぁ〜〜!」


 寸前で防がれる。大剣と石剣の交差。気迫ではシュンスケの方が優っていた。そして、とうとう、相手の黒い剣は粉々に壊れた。


「やったッ!」


「こりゃ、驚いたな。杖の二本持ちに槍を投げるか……少年少女の発想は、さすがと言える。でも君達、喜ぶのは早いぞ」


 男はポケットから二本の剣を取り出した。


「クソっ!卑怯だぞ」

「やっと武器を破壊したのに」


 相手は一人。武器を壊せばクラフトする時間はない。倒せなくても勝てる。それがタクマが考えた作戦だった。

 私は落胆を隠しきれずも杖を構えた。夜風が靡く。男の持つ両刀は、さっきの大剣と同じで黒いが、今度は長細い湾曲したものと、左手に構えるは小ぶりの刀。二刀流ん構え……


 その時、割って入るように白衣姿の小柄な男が現れた。


「所長、そろそろ限界です」

「如月君。見てわからないか。勝負はこれからだ」


 男たちは、もめているようだった。


「新手ですか?」

「今なら隙だらけだ。二人とも、やっちまうか」

「シュンスケ、待って!」


 わたしは二人の会話に耳を傾ける。


「ユリさんが脱出しました。時間切れですね」

「まさか、あのオリを……か!?」

「えぇ。あのオリを…です。しかも、マグマの谷を越え、すでにトラップドアの手前、かち合ったらバレますよ」


 男たちの話からユリちゃんは無事だと思った。


「はぁ、わかった。さすがに足が付くわけにはいかないか……君達、早々に失敬させて頂くよ」

「待って!ユリちゃんはどこにいるの?」


 白衣の男が近づく。シュンスケがすかさずウチを庇うように前に出た。


「あなたは……カナさんですね。ユリさんはこの先の洞窟にいるはずです。申し訳ないのですが内側からは出られない設計になってまして、迎えに行ってくれませんか」


 わたしは、こくりと頷く。


「あと……あまり時間ないのです。急いで、ラストドラゴンの討伐してください」

「あたりまえだろ。元の世界に戻るんだ」

「時間がないって、どのくらいですか?」


「推定、1ヶ月といったところでしょうか。私どもにも、なんとも……」

「もし間に合わないと、どうなるの?」


 如月さんは首を振る。詳しくは知らないみたいだった。


「君達。如月君の話は忘れてくれ。1ヶ月……いや、2週間で良い。生き残ってくれれば、それでいい。後は自分が何とかしよう」

「でも今は、この子達に託すほか方法が……」

「それは現時点での結論だ。考えてみろ、このプロジェクト自体が強引なんだ」

「追われる身で何をかっこつけてるんですか。彼らの力を信じた方が可能性が高い。なかなか、押されてたみたいですけどね……」

「馬鹿を言うな。これから本気をだな……」


「わかった。二週間。それ以上は待てないわ」

「了解した。尽力しよう」


 そういうと、男二人は消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る