第13話 天罰
「125通り辺りまで検討して考えることを放棄しました。まぁ、ワタシたちで想定しうる最悪のケース全てを回避できると思います。たぶん」
それでも凄いと雨衣と花山院は思った。
「やっぱり、凄いね。エルは」
「ふん。魔法が使えないなら使えないで他にやり方はいくらでもあるのですよ。雨衣も英雄になりたいのならこれぐらいは朝飯前にするべきです。明日までに何でもいいので魔法陣100種類覚えるようにしておいてください。明日の朝、テストしますから」
「なん……だと……!?」
(やぶ蛇でしたわね、雨衣さん。わたくしも是非ご協力させていただきますわ)
さて。
「ボーイ&ガール。お嬢たち今の状況わかってるー? ショータイムの時間だぜー。アタイそっちのけでお喋りしている時間は終わりじゃー! はーい、ちゅうもーく!!」
「「「………」」」
灘は1人仲間外れにされるとキレる。
そして、始まるはこの国の癌でしかない魔法陣の解体ショー。
雨衣と花山院は不安しかなかった。
ガスマスク女子は「ほわちゃー」とか言って支給された箒を頭上でくるくる高速回転させた。すると、高速回転させた箒に火が付いた。ファイヤーダンスか何かだろうか……
「ねえ。アレって本当に大丈夫なの?」
雨衣には何が起きているのかわからないが、凄い魔法を使うに違いなかった。不安は拭えないがAクラスの実力を信じるしかなかった。
「まぁ、灘は調子に乗ると碌なことしか起きませんが、この中だと高度な解体術式は灘に任せるしかねーんですよ。ですが、安心してください。街の住人たちだけは何があっても灘の命に変えても守ってみせますから」
「それならいいんだけど……」
「いえ、それは絶対にフラグですわよ……っ!?」
灘が回していた炎の箒が魔法陣に突き刺さる。
これで解体術式魔法は完了である。
別に詠唱やら呪文やらを唱える必要もない。
箒を振り回して火を付けた時点で魔法的意味合いが備わっている。
そもそも呪文やら唱えている暇を与える程、星覇は甘くない。まぁ、好きで呪文唱えている生徒も中にはいるけど。
何はともあれ、ヘドロスライムを召喚する魔法陣を解除することに成功した。
お見事――、とエルの称賛の声と拍手。
魔法陣が消えていく。
もれなく、術式を解除した灘はフラグ回収して爆ぜた。それは神の天罰が如く一撃だ。
まぁ、呪われたとも云うがな。
「灘、オマエの死は無駄にはしません。あとはワタシ達に任せてくだせー」
「「………」」
これにて一件落着?
◆
魔法陣を解除しようとした灘は天罰によって爆ぜた。
光の粒子になって消え去った。
ゲームオーバー。
今、間抜けにも強制転送されてギルドルームに戻ってきて、ギルド管理室長の早乙女にドンマイと声を掛けられていた。
そして、エルとの会話を思い出す。
『灘、この魔法陣をEプランの解除法を使用した際に発動するのは恐らく天罰。それから連鎖式召喚大魔法の類だと推測されます』
『シューコー……コーホー……そりゃまたおったまげーなトラップですわなー』
『えぇ、ですので灘には敢えて天罰を食らってもらいます』
『ヒュ~、Aクラスのこのアタイを捨て駒にしてきやがりますかー』
『ここはオマエの犠牲をもってしてイルステリア・ファーストといきましょう。もちろん、回避することも可能ですが敢えてここは全て受けて貰います。これが最善の策ですね』
『シューコー……コーホー……アタイの扱いが容赦ないっすわー』
『まぁ、灘ですから。オマエを甘やかして碌なことにはなりません。それにオマエだからできるカウンターを次に起動する連鎖式召喚大魔法に打ち込んでやるんですよ。それで自滅してくれれば万々歳です』
『なるほど、なるほどー。やられたら倍返しなお嬢らしいやり方ですなー。そういうの嫌いじゃないZEー☆』
『えぇ、ですから後の処理のことはワタシたちに任せて、オマエは派手に散ってださい』
『シューコー……コーホー……ま?』
最初は冗談とかその場のノリだと思っていた。でも、違った。本当に実行するだなんて……
「ち、血も涙もねー……」
灘は1人ギルドルームのラウンジで涙を流すのであった。
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