5

アヤは参観が終わると、力尽きたように、机にへたり込んだ。

「はぁ~~~、疲れた。」

「どうしたのアヤ、大丈夫?」

サキが、少し心配しながら聞いた。

「もう、全然、大丈夫じゃない。」

アヤは机に頭を押し付けて言った。

「そういえば、さっき来てた、イケメンさんは、誰なの?

アヤの親戚の人?」

サキが、アヤを見ながら聞いた。

するとアヤは、ムクっと頭を上げると、

「お願い、その事は聞かないで、もう記憶から消して。」

訴えるような目で、サキを見ながら言った。


その日の夜、家族で夕食を食べていると、

「そういえば、今日、変な事聞かれたの。」

アヤの母親であるミサトが言った。

「変なこと?」

アヤの父親であるシゲキが、ミサトを見ながら聞いた。

「ええ。

ニューヨークに住んでる、イケメンの親戚の人は誰だって。

しかも、同じような問い合わせが、メッセージでいっぱい来てて。」

ミサトがそう言うと、

「うほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ。」

アヤは、水を喉に詰めて、むせ返った。

「おい、アヤ、大丈夫か。」

シゲキが心配そうに、アヤを見ながら言った。

「うっ、うん、大丈夫、大丈夫。

ちょっとビックリしただけだから。」

アヤは、胸を叩きながら言った。


「ニューヨークに住んでる親戚か。。。」

「そんな人、居たかしら?」

シゲキとミサトが、少し考えながら言った。

「あー、そういえば、本家の遠縁に、一人、ニューヨークに住んでる人が居たな。」

シゲキはそう言うと席を立ち、アルバムの中から1枚の写真を持って来た。


「この人だよ。

確か、ゴンタさんて言ってたと思うけどな。」

シゲキは、写真をミサトとアヤに見せながら言った。

その人は髪の毛が、半分爆発したようなボサボサ頭で、丸い顔をしており、少しボーっとした目をしていた。

「でも、どう見ても、イケメンじゃないわね。」

ミサトが、写真を見ながら言った。


「おっ、お母さん。

そんな失礼なこと、言っちゃダメだよ。

イケメンかどうかなんて、見る人によって変わるし。

それに、この人だって、ニューヨークで、イケメンに進化したかもしれないよ。」

アヤが少し冷や汗をかきながら、目を泳がせて言った。

「まあ、そうだな。

もう、随分と会って無いから、見た目もずいぶんと変わってるかもな。」

「それもそうね。

外国に住んでると、自然と、その国の人と同じような顔になる、って言うものね。」

「うっ、うん、そうそう。

きっと、そうだよ。

ニューヨークって、怖いね。

はっ、ははは、はははははっ。」

アヤの、引きつった笑いが、台所に響いていた。


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