告白

「俺の妹になにするんじゃ。ボケ」おじさんの声は空に届くくらい大きな声だった。男は、驚いて数秒の間、口を開けていた。それから数秒経った後に何か用事を思い出したかのようにおじさんにはたかれた手をかばうように逃げて行った。おじさんの顔を見る。おじさんの後ろに街灯があるからかおじさんの顔がよくわから、、あれ、涙が目からこぼれて見れない。止まれ、止まれ。止めようとすればするほど私の気持ちに逆らって涙が出てくる。

「大丈夫か、おい」おじさんの声は私をなでるみたいだった。おじさんの声を聴いたら嗚咽まで出てくる。おじさんの見守る中でしばらく泣いていた。


落ち着いてきた。呼吸も落ち着いてきた。さっきまだ流れていた涙が顔に跡を作る。横目でおじさんを見ると、おじさんは困っているみたいだった。そんなおじさんの顔を見たら、普段は人をからかおうなんて思わないけど、からかってみたくなった。

「俺の妹だって。普通、こんな時間に兄弟2人でいないでしょ。」

「だってほかに思いつかなくて。」おじさんは目線を外すように地面を見ていた。

「ふつう彼女っていうもんだよ。」おじさんの顔を覗き込むように言う。

「そっか」

「そうだよ」と私が噴き出したように笑うとおじさんもつられたように笑った。それから2人で笑いあった。幸せとはこういうものかもしれない。

「なぁ」おじさんは、さっきまで緩んでいた顔を引き締め直して言う。

「うん?」何を言われるのか、緊張している自分がいた。怒られるのだろうか、それとも。

「なんで、こんな時間に公園にいたんだよ」

「うーん」自分の中で浮かび上がる2つの理由。おじさんに会えるかもと思ったから、となんて言えるものか。自分が夢見がちな女子だと思われそうで恥ずかしい。

「私さ、塾をサボってきたんだよね。悪い子だよね。」おじさんも私を叱るんだろうな。他の大人たちと同じように。そこに私の感情、理由があるのに大人はいや社会は表面的な事実しか見ない、いや見ようとしない。そうしなきゃ社会というものはうまく回っていかないからだ。

「何か理由があるんだろ。」

「え?」意外だった。見ず知らずの人間が私のことを考えてくれることに。そして、そんな人間が存在することに。この人にならわたしのことをりかいしてくれるかもしれない。

「私さ」あとに続く言葉がなかなかうまくならんでくれない。

「うん」おじさんは私の目を見ながら、うなずくように聞いてくれた。でも、でも怖い。否定されるかもしれない。唾をのむ。でも、聞いてほしい。誰かに理解してほしい。

「声優になりたいの。だから声優の専門学校に行きたいの。」ずっと自分の中に詰まっていたものが飛び出した。







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私の初恋 林花 @rinka17

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