孤独

家の玄関の前に立つ。人が玄関の前に立つと自動でつくライトが私を照らす。照らして欲しくなくても照らしてくる。帰りたくない。胃がキリキリしてくる。私が帰ってきたらお母さんはどういう反応をするんだろう。きっと私なんか心配してないんだろう。ドアの開けた音が大きくならないように静かに開ける。

ガチャ。あー。このドアで音が鳴らないようにするのなんて最初から不可能だったんだ。

 リビングから出てきた母親と目が合う。目が合っただけで怒ってるのがわかった。

「あなた、どれくらいの時間を無駄にしたと思ってるの。受験期の1時間はものすごく大切なのよ。」がっかりした。ふつうは家出した娘を心配するんじゃないのか。でも、こうなるってわかっているのにがっかりしている自分にもがっかりした。期待している自分がバカみたいだった。子供のころからこうだった。私の気持ちなんて考えてくれないで結果ばかりを母は気にしていた。世間に自分の子供がどうみられるか、そして母親自身がどうみられるかを気にする親だった。

「加藤さんちのさっちゃんは模試で偏差値63をとったらしいわよ。あなたも無駄にした1時間を取り戻すように死ぬ気で頑張りなさい。」

 私は、黙って2階にある自分の部屋に向かった。


 

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