独善の箱庭が満ち満ちる事を想い描いて

第26話 望まれぬ者に居場所と存在意義を

「諸君、私は教会を作ろうと思う。」

「教会、ですか。承りました、主。」

「お嬢様のお望みのままに。ですが……お嬢様。急に教会、とはどういう事なのでしょう?」

「あぁ。街からこの森の中腹辺りにまで道を作り、人々を洗脳する。それで私に対し、非常に従順かつ盲信的な信者を大量に作る。……面白いと思わないか? 教会、しかもこれだけの森の中となれば孤児を捨てに来る親も居るだろう。あれだけ街が発展していれども口減らしで子供を捨てる事や家のない者達が乞食のように教会の周囲に住み着くかもしれない。……そっちが我々のメインの目的となる。そもそも、子供の内から洗脳しておけば後はかなり楽だからな。あのシルアに預けたあの王女には敬虔なる神の信徒だと伝えてやれば良い。」

「お嬢様の事は神様だと伝えても良いですか?」

「えぇ、そうですね。主は神が地上の生き物を模しているだけの神だと伝えてやれば良いかと。」

「それだといきなりが過ぎるだろう……。どうしてもそうしたいのであれば神人とでも言っておけ。」

「承りました、主。」

「わ、私も教会でお仕事をしたいです!」

「では、シルア。お前は修道女シスターだ。ルイスは引き続き屋敷を頼む。ルーナとルーザとユルフはどうしたい?」

「んー……。俺も教会で良いよ、ご主人様。面白そう。」

「……私はこの屋敷から出たくない。ここで……ルイスさんの手伝いをしながら……魔道具を。」

「仕事熱心なようで満足だ、ユルフ。」

「……貴方だけが、私を必要としてくれるから。……貴方の為なら、何でも良い。」

「わ、私は両方したいです! る、ルイスさんも1人で大変だろうし……シルアさんも……。」

「んー……そうですね。子供のルーナが居た方が、安心出来るかと。」

「ありがとう、ルーナ。しかし、私は人型の使い魔を使役出来るので気持ちだけ受け取るよ。……それよりも、ルーナ。主がお作りになる教会で少しでも信者を増やし、主の笑顔になる回数を増やしてほしい。私は、主の幸せそうな笑顔を見れれば何でも良いのだから。」

「はい、ルイスさん! 私、頑張ります!」

「では、ルーザ。ルーナ。2人で森の中腹に教会を建てに行こう。材料ならこの森に幾らでもある。」


 それが救いなのか、地獄なのかは知らんがな。


 面白い話、どうせ苦しんで死ぬはずだった者達が神という便利な言葉に隠れ、私という支配者に飼われて。私に感謝しながら息をし、自ら奉仕を尽くす。その何処が残酷だと言えるのだろうか。

 そんな相手に満遍なく施しをやり、衣食住を提供し、その代わりにただただ忠義と信仰を見せよと言っているだけだ。何も変な事ではない。


 何もしない癖に何かあった時に責めるだけの偽善者共よりはずっと良いかと思うがな。

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