第25話 今しか得られぬ巨大で稀少な獲物

 現在、私達は例のダンジョンの37層のボスを蹴散らした。ここに来るまでに幾つかのパーティを見つけたが、雑魚な上に美味そうじゃなかったので相手が気付く前に遠回りして回避した。

 面倒事は少ない方が良い。


「ふむ、では下の階に行こうか。」

「とうとうだね、ご主人様!」

「所で、ルーザ。パーティ構成は?」

「ん? ああ、パーティ構成ね。王女はユユア・リーゼ=フェルアって名前で付与魔術師エンチャンター。後は剣聖ソードマスター聖騎士パラディン弓使いアーチャーだね。王女は人だけど、剣聖ソードマスターは鬼だし、聖騎士パラディンは青竜、弓使いアーチャーはハイエルフ。腕はそこそこだね。」


 鬼に青竜にハイエルフと来たか。


「聞いてる限りだと王女様以外は要らないみたいだけど……どうするの?」

「養分にはする。だが奴らが陽の目を見る事は決してない。」

「成程。納得。所で、ご主人様。……そろそろ、王女に興味を持った理由と追い駆けてる理由……教えてもらって良いか? すっごく興味あるんだけど。」

「ルーザ、以下3名はそこまで名が売れてないんだな?」

「え? あ、ああ。あんまり。最近だからな……。」

「なら問題はない。王女一行を発見次第、強い敵をぶつける。そして、数も沢山ぶつけるんだ。何なら、私達の魔法でそいつ等を強化しても良い。そして、王女だけを助けて残りは殺してしまう。……そこで、王女がピンチになった所で助けに入り、安心して気を失ったのを屋敷まで連れ去る。……そして、洗脳して王国に漬け込むんだ。」

「つ、ついぞ国を?」

「あぁ。その方が色々と出来る事も増え、面白い事も増える。それこそ街のど真ん中にダンジョンでも作って餌場にすればそれはもう完璧だ。……何より特殊能力、この世界ではサヴァン持ちが欲しいんだ。」

「サヴァン……?」

「異能力、とても言うべきか。魔法を使わずに相手のステータスが分かったり、心を読めたりと本来出来ない事が出来てしまう力。それが欲しい。」

「成程! サヴァン持ちを効率良く手に入れる為にあの王女様を使うんだな!?」

「ああ。“一段変わった魔道具を作りたい” とか、“孤児院をやりたい” とか言って色んな種族の子供を集めるんだ。そうだな、“孤児の子だけを教育する学校を作りたい”、でも良いかもな。サヴァンはサヴァンだけの教室を作り、それ以外の孤児は普通に学を与え、世界へ羽ばたかせよう。どうだ? 面倒だが、信用と食糧の獲得が同時に出来てしまい素晴らしい計画だ。……ああ、そうだ。死刑囚の処理も良いかもな。シルアとルイスが喜ぶ。」

「それなら張り切って」

「きゃあああああああああああああ!!」

「おっ……?」

「思ったより手間が省けたかもね、ご主人様。」


 少しばかり急いで足を進めた先には確かにお姫様一行が。

 そんな彼らの先には丁度良く、彼らを狙うアルラウネ共が居る。それらに向かって少し “狂暴になる” 息を吹きかけてやれば案の定、脇目もふらずに王女一行へと突っ込んでいく。

 その戦いの前に想像以上に大きいワームと戦い、消耗していった一行はどんどん沈んでいき、とうとう剣聖が王女を庇って致死量の怪我を負う。

 そのタイミングでどんどん戦闘不能になった者達をこのダンジョンが養分にしたように見えるよう、彼らの戦いの最中でこっそりと足元に忍ばせておいた影へと引き摺り込んで。当人が此方へ気付く前に背後からその首を絞めて意識を落としてやればもう作業の段階となる。

 念の為、この小娘の杖を圧し折ってから影の中へ引き摺り込んで。王女自身も陰に絡めて引き摺り込んだら後は帰るだけだ。


 ……?


「この娘……サヴァンか。」

「サヴァンって……さっき言ってた?」

「ああ。……どうやら、知識や技術の習得時間を半減させる異能力だな。さぁ、眠っている間に全て戴いてしまおう。さて、ルーザ。帰るぞ。」

「は~い!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る