第27話 神からの第一の試練、なんてな
「うん、なかなか良い出来だ。」
内装も外装もあまり傲歌ではなく、お淑やかに。清楚に白と水色を貴重にしたそこそこ大きな教会。
懺悔室とかいう非常に面倒な物は作らず、その代わりに孤児院を用意した。
ここは基本的にルーナが管理する事にはなっているが、シルア固有の能力でシルアのお友達。つまりは白蛇達を自らと全く同じ姿にする事の出来る能力を使い、顔を見る事の出来ない特殊な修道服を作る事で人数を抑えた。
これにより、この孤児院には捨て子。預けられた子。戦争孤児なども収容出来るようになり、「里親が見つかった」という体で屋敷へ連れてこさせれば良い。仮に何人かの子供が追てくる可能性も考慮し、標的の子供以外には道に迷うようにも魔法を掛けてある。
神への奉仕役に選ばれたなんてのも良いかもしれない。どうせ、誰も疑わないのだから。
何なら孤児院全体に洗脳が掛かり易いように精神操作、記憶操作、意識操作に関する魔法も掛けてあるので一度入れば一巻の終わりとなる。少しずつ、長く居れば居る程に洗脳に掛かり易くなり、子供の頃からの洗脳はただでさえ効果的だというのに、もっと効果的な
問題は
「どうやって誘い込むか、か。」
「か、カルストゥーラお嬢様!」
「どうした、ルーナ。」
「カルストゥーラお嬢様って……本当に蛇九尾なんですか?」
「あぁ、そうだ。」
そういえば見せた事もなかったか。
少しでも油断を誘う為、普段は隠している黒い9つの尾。狐耳。そして蛇の舌を生やしてやる。……これはこれまでずっと、私にとっては強く大きなコンプレックスだった。
弟、カルゼグルージを見れば分かるように、原則的に竜人国ギルジェディーラでは白銀の髪と蒼い目が王家の象徴とされている。当然、白銀の鱗も。
それなのに私には黒い尾と耳、蛇の舌に闇夜でそのまま染め上げたような黒い髪。そして何より、酸化した戦場の血のようなワインレッドのこの瞳はずっと差別の象徴だった。
血は繋がっているはずなのに、それでも苦しい毎日を強いられた。
親も国民も使用人も、皆私ばかりに苦行を強いる。唯一味方をしてくれるのはいつだってあのヤンデレ気質の弟だけ。そんなあいつを、不思議にも私は一度も恨んだ事はなかった。疎ましくは、思っていたが。
それもこれもきっとあいつが色々と良くしてくれたからだろう。ずっと、いつも。
私が食事を貰えず、どうせ部屋を出ても苦しめられるからと部屋に引き籠っていれば料理を持ってきてくれて。それを知っていたのかどうかは分からないが、使用人がそれを駄目にしようものならそれを一滴残らずその使用人に食べさせた上で解雇したり。体を壊したり、体調を崩せば必ず看病もしてくれたし薬も、医者ですらも手配してくれた。
それを面白く思わなかった両親が手を挙げよう物ならあんなにも理性的で賢いあいつが感情的になって怒鳴ったり、魔法を行使してあいつらを黙らせる事もあった。
だから、私は本当の意味であいつを嫌う事が出来ない。
苦手では、あるんだがな……。特にあのヤンデレ気質は。
「髪、長いんだな。しかも綺麗。」
「特に手入れとかはしてないんだがな。強いて言うならシルアの髪の洗い方が良いのかもな。」
「シルアさんの洗い方、気持ち良いですからね! 私も、髪サラサラです!」
「あぁ、かもしれんな。時に……お前達。お前達が想像以上に張り切ったのもあって随分と立派過ぎる教会と孤児院が出来た訳だが、ここに信者を集めるにはどうすれば良いと思う?」
「あ、なら良い考えがあるぜ。」
「ほう?」
「俺達が実際に街へ行って、買い物とかでいつもより笑顔に過ごして見せるんだ。そしたらきっと、街の商店の奴らやシルア達と親しい人達が気になってくるんじゃないか?」
「……そうだな。街ではなるべく清楚で清らかな人間を演じろと言ってある。……ふむ。シルアの日頃の行いを試す時か。」
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