第6話 イネが元景を励ます

 元景は正妻を亡くしかなり落ち込んでいた。これでは京都から滋賀周辺を収める守護大名の地位にある朝倉元景の能力が問われる。

 「お殿様、元気を出して下さい。このままでは変な噂が立ちますよ」

 「うむ、それは分かっておるが」

 「町や村の民も心配しております。殿様が元気ないと民も元気がなくなります」

 「何か良い知恵はないか」 「私達貧しい農民の一番の楽しみは、豊作は勿論ですが、お祭りが一番の楽しみでした」


 「ほうお祭りか、しかしそれは民達が行う行事で大名が関わる問題ではないではないか」

 「勿論ですが、より一層盛り上げるにはお殿様の力が必要です」

 「拙者の力が必要と申すか。いったい何をさせたいのじゃ」

 「各町や村の出し物に賞品を出すのはいかがでしょうか。例えば金賞、銀賞、銅賞など優秀なものに与えるのはどうでしょう」

 「ほう、それは面白い。民も喜ぶであろうな」

 「それはもう、こぞって競い合えば民も喜ぶこと間違いないと思います。民も元気になるしお殿様の評判もあがるでしょう」

 「流石はイネじゃ。お糸を喜ばせた時から知恵者と思っていたが、しかし何処からそんな発想が浮かぶのじゃ」

 朝倉元景は早速実行に移した。元景の管轄地域に一斉にお触れを出した。お祭りで各地区代表の山車を出し合い競うというものだ。賞金が貰えるのは勿論だが賞を取れることに意義があった。我こそと競って出し物が出た。観衆も大いに楽しめた。この祭りは評判を呼びに二年目になると規模も大きくなり一層お祭り盛り上がりを増していったと同時、孝景の人気もウナギ登り。勿論影の功労者はイネである事は間違いない。


つづく

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