第4話『正義の味方始めました』
「悪の秘密結社はここかッ!!」
突然そんな事を言われてしまい、私は呆気にとられた。ここは私立東郷学園の視聴覚室。私達諜報部が活動の拠点として(勝手に)利用している場所だ。今は放課後。私達は特に何かするでもなく、ただ適当に駄弁っていただけ。
突然やって来たその人は、ロングヘアーをポニーテールにしていて、制服は袖まくり、手には革手袋、スカートの下からはスパッツがチラ見えしていて、何だかよく分からないけど活発そうな印象を与えている。てゆーか、特撮ヒーロー番組にでも出てきそうな感じだな。
「おいおい、悪の秘密結社だなんて、穏やかじゃないなぁ」
部長の岡は澄ました顔でそう言っているけど、一体この人は何なんだろう?
すると深山が、
「君は2年D組の生澤さんだよね?突然どうしたの?」
なんて問い掛ける。ふむ、この人は生澤さんっていうのか。んで、その生澤さんが言っている『悪の秘密結社』って何なの?ウチら諜報部の事を言ってるみたいだけど…?
「とぼけるなッ!お前達の悪事は、この私が止めてみせるッ!!」
生澤さんはそう言って、岡を指差した。何か、会話が全然噛み合っていないなぁ。でも、生澤さんは待ったなしで、岡に掴みかかろうとする。
「ちょっとちょっと、乱暴するのは良くないよ」
そう言って深山が間に割って入った。こういう時、前に出るタイプなんだな。深山は。
「邪魔をするなッ!!」
生澤さんは、深山の手を払いのけようとする。しかし、思いの外素早い動きで、深山は生澤さんの手を掴んだ。
「貴様ァッ!あくまで私の邪魔をするつもりかッ!!」
深山の顔目掛けてパンチを放つ生澤さん。だけど、深山は平気な顔をして避けている。「避けるなッ!」
生澤さんはムキになってパンチを繰り出すけど、その全てを深山は避けた。そういやぁ深山は、チャラく見えるけどテコンドーをやっているんだっけ。こういう事にも慣れているんだろうか。
「このッ、このッ!!」
ますます生澤さんはヒートアップしているけど、逆に深山は落ち着き払って、ヒョイヒョイと避けている。何だか生澤さんが気の毒に思えてきた。
「あの~、生澤さん?『悪の秘密結社』って何なんですか?」
堪りかねて私は質問したが、生澤さんは全く聞く耳持たない。
「えぇい、ちょこまかと動いて避けるんじゃないッ!!当たれッ、当たれッ!!」
こりゃダメだ。話にならん。どうしたものかと岡に視線を向けると、やはり対応に困っているようで、いつも澄ました顔をしている岡も、この時ばかりは困惑した顔をしていた。
「生澤さん、とりあえず落ち着こうか。話せば分かる」
岡はそう言ったが、やはり生澤さんは聞く耳持たない。さすがにもう限界なのか、深山が突然生澤さんにハイキックを出したのでビックリしたけど、その蹴りは寸止めになり、ようやく二人の動きは止まった。
「女の子に暴力は振るいたくないんだよね。ここは引いてもらえないかな?」
深山はそう言ってウィンクをした。なんつー男だ。
「えぇい、覚えていろッ!!」
生澤さんは、そう捨て台詞を残して視聴覚室を出て行った…。結局何だったんだろう…?
「あの~、今の人は…?」
そう尋ねると、深山が
「2年D組、生澤はるか。趣味は格ゲーとかをゲーセンで遊ぶ事、最近は幼馴染の井村屋錦吾郎とつるんで、『正義の味方部』なんてのを作ったらしい。本人は学園の秩序と平和を守るんだとか言っているそうだよ」
と答えた。『正義の味方部』?何じゃそりゃ?
「まぁ、ウチらと同じ、学園非公認の同好会だね」
岡がそう話す。なるほど、何となく話の筋が見えてきた。つまり生澤さんにとっては、ウチら諜報部は悪の秘密結社という位置付けなのか…。
「イヤイヤ、それってちょっとマズイんじゃないんですか?私達、悪者扱いされてるって事ですよね?」
そう言う私に、岡は
「うん…、でもまぁ、下手に刺激してもしょうがないし、今はそっとしておけば良いと思うよ」
なんて答える。本当に大丈夫なんか…?
次の日、放課後に視聴覚室で駄弁っていたら、また生澤さんがやって来た。
「お前達、今日こそは観念しろッ!正義の鉄拳を食らうがいい!!」
昨日と同じく、また生澤さんと深山の取っ組み合いが始まった。生澤さんは色んな打撃技を出すが、ことごとく深山に避けられている。
「えぇい、ちょこまかと動くなッ!!」
…これってデジャヴ?今私の目の前では、昨日と同じ光景が繰り広げられている。
「生澤さん、とりあえず落ち着こうか」
ヒョイヒョイ避けながらも、深山は生澤さんを説得しようとするが、やはり聞く耳持たないようだ。
「もう二人とも止めてッ!訳の分からない事言ってないでちゃんと話し合ってよ!」
状況に耐えられず大声を出してしまったけど、さすがにこのまま、ただ黙って見ているだけって訳にはいかんだろう。幸い私の気持ちが通じたのか、二人はピタッと動きを止めてくれた。
「そもそも、何で生澤さんは私達を悪者扱いするんですか?『悪の秘密結社』って何の話なんですか?」
とりあえず根本的な疑問をぶつけてみた。すると生澤さんは、
「何でって…、お前達がこの学園を、裏から支配しようとしているって情報が入ったからだ」
はぁ?何それ?訳が分からない。
「じゃぁ、その情報を提供した人って誰ですか?」
そう聞く私に、生澤さんは、
「情報提供者の身の安全を確保する為、それは言えない」
なんて毅然とした態度で答えた。すると岡が、
「ひょっとして、そこにいる彼がそうなんじゃないの?」
と言って、ドアの方を指差す。何か、こちらの様子を窺っている人が見えたんだけど、一瞬で隠れられてしまい、誰だか分からなかった。だが、深山は
「井~村~屋く~ん♪」
と声を掛ける。ひょっとして昨日話していた、生澤さんの幼馴染?その人は、何だかばつが悪そうに姿を現わし、
「や…、やぁ、諜報部の諸君。今日は良い天気だね~」
なんて言った。…つまり、この人がそもそもの元凶なんか?
「錦吾郎、ここは私に任せて、お前は隠れていろ!ここは危険だッ!」
生澤さんは、まだ何かやろうってのか…。
「とりあえず生澤さん、井村屋君もこっちに来てもらって話をしようか」
岡がそう提案する。まったく…、何なのよ、この人達は…。
「スマンッ!!私は激しく勘違いしていたようだ!!」
そう言って、生澤さんは深々と頭を下げた。ようやく誤解が解けたか…。
「まったく…、人騒がせな事やるなよな~」
深山がそう言って、井村屋さんを冷めた目で見ている。
「イヤ~、アハハ…。はるかと互角にやり合えるのは、深山君ぐらいしかいないだろうと思ってね…。本当にゴメン」
井村屋さんも、そう言って頭を下げている。詳しい話を聞くと、生澤さん達は『正義の味方部』を立ち上げたものの、肝心の戦う相手がいなかった…と。それで井村屋さんは、当面の対戦相手として諜報部を挙げたらしい。
「いくらなんでも適当過ぎます!戦う相手がいないんなら、この学園が平和って事で良いじゃないですか!」
生澤さんも井村屋さんも、何だか気まずそうにしている。でもまぁ、誤解が解けたならそれで良いか。特に実害も無かった訳だし。
「で?これから『正義の味方部』はどうするのかな?」
岡がそう尋ねると、生澤さんは
「それはそれ。私達の活動は継続する」
なんて言った。本当に良い根性してるわねぇ…。
「まぁ、学園の平和を守るっていうのは悪い事じゃないし、適当に頑張ってよ。人に迷惑掛けないようにね」
深山が皮肉交じりにそう言うと、
「あぁ、任せてくれッ!」
と、生澤さんは胸を張って応える。何かこの人、全然皮肉が通じてないんですけど…。
次の日、朝登校する時に、校門で元気に挨拶している生澤さんを見掛けた。朝っぱらから何をやっているんだろう?
「生澤さん、おはようございます」
そう軽く挨拶すると、生澤さんは
「やぁ、君かぁッ!おはようッ!!」
と、全力で挨拶してきた…。何だかこっちの方が恥ずかしくなってしまうじゃないの…。
「朝からこんな所で、何をやってるんですか?」
そう質問すると、
「正義の魂を芽吹かせるんだッ!」
なんて答えられた。イヤ、ちょっと意味が分からないんですけど…。
「健全な精神は健全な肉体に宿るッ!健全な肉体の第一歩は、朝の元気な挨拶からッ!だから私は、こうして声掛け運動を実施しているんだッ!!」
…どうリアクションを取るべきか分からない。まぁとにかく、生澤さんは真面目に、真剣にやっている事だけは伝わって来る。
「あぁ~、えっと…、頑張って下さい…」
「うむ、ありがとうッ!」
まぁ、別に悪い事をやっている訳じゃないし、ここはそっとしておこう。私はそそくさと教室に向かった…。
昼休み、教室でお昼ご飯を食べていたら、何やら奇妙な校内放送が流れ始めた。
「あ~、あ~、テステス。全校生徒諸君、食べ物の好き嫌いなんかしていないか?栄養バランスをよく考えて、モリモリ食べるんだぞッ!健全な精神は健全な肉体に宿るッ!体作りの第一歩は食事からッ!君の中に眠る正義の魂を奮い立たせろッ!!」
コレを聞いて、思わず吹き出しそうになってしまった。教室の中も、一体何事かとざわついている。この声と喋ってる内容は、生澤さん以外にあり得ない。一体何を考えてんの?あの人は…。
放課後、私は視聴覚室に向かっていたんだけど、廊下の角で出会い頭に誰かとぶつかった。急に飛び出してきて、一体何なのよ…?
「アイタタタ…。あれ?む~さんじゃないですか。どうしたんですか?そんなに慌てて」
そう聞くと、情報屋のむ~さんは何だかアタフタしながら
「あぁ、あ~、城ヶ崎さん、今ちょっと急いでいるの~。ゴメンね~」
そう言って、む~さんは走り去った。どうしたんだろう?あんなに慌てて。
と、思ったら、その原因と思われる人が走って来た。
「やぁ、君かぁッ!今ここに、闇の情報屋が逃げて来なかったかい?」
また生澤さんか…。今度のターゲットはむ~さんなのね…。
「何かあっちの方に走って行きましたけど…」
ここは敢えて、む~さんが逃げたのと違う方向を指差す事にする。
「そうかッ、ありがとうッ!!」
そう言って、生澤さんは脇目も振らずに突っ走って行った…。
「さすがに、このまま放置しておくのはマズイと思うんですけど」
私は視聴覚室で、岡と深山に問い掛ける。生澤さん自身は善い事をやってるつもりなんだろうけど、今の状況を黙って見過ごすのはいかがなものか。
「う~~ん、でもねぇ…。彼女の性格からして、ちょっとやそっとの事では改まりそうにないからねぇ…」
さすがの岡でも、打つ手無しって事なのか…。いつもの余裕がまったく見えない。すると深山が、
「一度痛い目に遭えば少しは大人しくなる…かなぁ?あんまり期待出来ないけど」
なんて言った。確かに、何か失敗とか挫折とかを経験すれば、『普通は』大人しくなるんだろうけど、生澤さんの場合、何度でも復活しそうな気がする…。
「楓、井村屋君はどうなんだ?彼を通して生澤さんを大人しく出来ないのかな?」
そう岡が言ったけど、
「井村屋も、生澤さんについては持て余している感じだね~。最近はちょっと暴走気味らしい」
こりゃダメだ。本当に、どうしたら良いんだろう?平和なはずの学園が、平和を守ろうとしている人によって、逆に平和を乱されている感じだ。訳が分からない…。
学校からの帰り道、商店街を歩いていたら、聞き覚えのある声がどこからか聞こえて来る。それが誰なのかは言うまでもないだろう。
「トゥッ!ヤァッ!ハァッ!!」
今度は一体、何をやっているんだろう?ゲーセンから聞こえて来るみたいだけど…。店の中を覗くと、生澤さんはパンチングゲームを夢中になって遊んでいた。うわ、ハイスコア出しちゃってるよ。
「ん?やぁッ、君かぁッ!」
しまった、気付かれた!
「このゲームは中々熱いぞッ!君もトレーニングがてら、やってみないかッ?」
そう言って、生澤さんは笑顔でグローブを差し出して来た。
「あぁ~~、イヤ、私はこういうの苦手なんで…」
さすがに付き合ってられんわ。丁重にお断りする。
「そうか。まぁ、人には得手不得手があるからな。では、私の勇姿をその目に…」
生澤さんは、そう言いかけたけど、突然グローブを放り出してダッシュした。一体何なんだろう?その後を目で追うと、何だかヤバそうな感じの人達に向かって行ってる…。あ、何か、ウチの学校の生徒が絡まれている?
「お前達ッ、そこで何をやっているッ!!」
生澤さんは、毅然とした態度でそう言い放った。さすが、無駄に度胸があるなぁ~。私には、あんな真似出来そうにない。
「何だ?お前は。俺達はコイツに用があるんだよ。あっちに行ってろ!」
何か怖い顔して凄まれているけど、生澤さんは全く怯まない。ちょっと、これってヤバいんじゃ…?相手は怖そうな人が3人いるし…。
「彼は私と同じ学園の生徒だ。手出しをするなら容赦はしないぞッ!」
そう言って、生澤さんは構えを取った。
「んだとコラッ!!」
ヤバい人が生澤さんに掴みかかったけど、その手を払いのけて生澤さんはパンチを放ち、ヤバい人の顔面にクリーンヒットした。うわ…、痛そう…。
「テメェ…、やんのかコラッ!」
生澤さんのパンチをモロに食らっていたけど、ヤバい人達は全然引く気は無いみたいだ。
「正義の鉄拳を食らうがいいッ!!」
「ざけんなオラッ!!」
あちゃ~、とうとう乱闘が始まってしまったか…。普通だったら、ここは止めに入るべきなんだろうけど、さすがにこの大立ち回りに割って入る程の度胸は私には無い。こういう時に深山がいれば良いんだけど、さすがに今から連絡しても間に合わないだろうしなぁ…。そんな風にまごついていたら、
「彼女、結構スゴイでしょ?」
突然声を掛けられたので振り向くと、そこには井村屋さんがいた。
「深山君は特別だけど、はるかの強さは、そこらの格闘家もどきよりずっと上を行っているからね」
井村屋さんは何故か、そう誇らしげに言っている。イヤイヤ、強けりゃ良いってもんじゃない。こういう時は、平和的解決を求めるべきなんじゃないの?確かに、ケンカの流れ的には生澤さんが優勢に見えるけど、だからってこのまま傍観する訳にもいかんでしょうに。
「井村屋さん、そんなのんきな事を言ってないで、早く止めないと!マズいでしょ?」
生澤さんの強さがハンパないって事は分ったけど、こんな所で他校の生徒とケンカしていたなんて事が先生に知られたら、それこそ停学とか退学なんて話になるんじゃないの?どう考えたってマズいでしょうに。
「はるかならこの位の揉め事は平気だよ。まぁ、安心して見ていてよ」
だ~か~ら~、そういう話じゃないってーの!もういい、私が止める!
「アンタ達、いい加減にしなさいッ!!」
とにかく無我夢中で、勢い任せで乱闘している中に突っ込んだ。勢い余って生澤さんまで一緒に突き飛ばしてしまったけど、細かい事は気にしない。
「何なのよアンタ達は?よってたかって1人に3人がかりでつっかかっちゃって。そもそもの原因も、どうせ下らない因縁つけちょっただけなんでしょ?みっともない真似せんよ!」
突然私が割って入ったので、全員唖然としている。さすがの生澤さんも、ちょっとビックリしているみたいだ。
「とにかく、こんな所で暴れたら周りに迷惑でしょ?暴れたいんならどっか他の、人が居らん場所に行き!」
一気にまくしたてたけど、私ヤバいことやっちゃったかな?ドッと冷や汗が流れたけど、生澤さんもヤバい人達も、急に大人しくなってくれた。
「何かシラけたわ。お前ら行くぞ!」
とりあえず、ヤバい展開にはならずに済んだか…。寿命が縮まる思いだ…。
「君は凄いなぁッ!感心したぞッ!」
生澤さんに肩を叩かれて、ふと我に返る。
「あ~、イヤ、そんな大した事じゃないですよ。黙って見ていられなかったもんで…」
そう受け応えたものの、生澤さんは鼻息荒く、
「イヤッ!そんな謙遜しなくてもいいぞッ!君には確かに『正義の魂』があるッ!どうだ、諜報部なんか辞めて、私と共に正義の為に活動しないかッ!」
何か生澤さんに勧誘されてしまった…。いくらなんでも、『正義の味方部』になんて入る気にはならないなぁ…。
「イヤ、私は一応、諜報部の部員ですんで…。とにかく、これで失礼します」
足早に、その場を立ち去る私。後ろで生澤さんが何か言っていたような気がするけど、適当に愛想笑いをしてそのまま帰るのだった。
次の日の放課後。私は視聴覚室で、岡と深山にゲーセンでの出来事を話していた。
「そうか~。そりゃ災難だったねぇ」
とか言いながらも、岡は笑っている。何かムカつくなぁ…。
「本当、あの時は焦りましたよ~。一時はどうなる事かと思いましたけど、まぁ、その場は治まったんで良かったかな~」
すると深山が、
「商店街のゲーセンだったら、俺に連絡してくれれば良かったのに。その時間なら、俺達喫茶店にいたよ」
なんて言った。商店街のゲーセンと喫茶店はすぐ目と鼻の先にある…。今更そんな事を言われてもなぁ…。
「やぁッ!諜報部の諸君ッ!!」
視聴覚室のドアが勢いよく開かれて、生澤さんが姿を現した。毎度の事だけど、何だか嫌な予感がする…。
「やぁ、生澤さん。今日はどうしたんだい?」
岡がそう聞くと、生澤さんは満面の笑顔でこう言った。
「正義の魂を持つ者をスカウトに来たッ!城ヶ崎さん、私と共に正義の為に活動しようじゃないかッ!」
またその話か…。
「イヤ~、昨日も話しましたけど、その件についてはお断りしますんで」
そう言ったけど、やはり生澤さんは聞く耳持たない。
「謙遜も遠慮も要らないッ!必要なのは、燃えたぎる熱い正義の魂だけだッ!!」
何かこの人、調子が狂うなぁ…。
「いえいえ、私にはそんな、正義の魂とか、そういうの無いですんで…」
「イヤイヤ、そんな事はないッ!昨日君が見せてくれた勇気と行動力、それがあれば十分だッ!」
どう言えば生澤さんは納得してくれるんだか…。すると深山が、
「城ヶ崎さんはウチの大事な部員だから。今更他の部に取られる訳にはいかないんだよねぇ」
と、助け船を出してくれた。そして岡も、
「悪いけど他を当たってくれないかな?城ヶ崎さんは諜報部の部員なんだからさ。後から出来た、訳の分らない同好会に持って行かれる訳にはいかないんだよ」
訳の分らない同好会ってのは諜報部も同じなんだけど、ここは敢えて突っ込まないでおこう。そしてやはり、生澤さんに普通の話は通じない。
「お前達、正義の活動を邪魔立てする気かッ!?」
生澤さんはそう言って、構えを取る。ちょっとちょっと、またここで乱闘するつもりなの!?
「お望みとあらば」
深山も余裕の笑みを浮かべながら構えを取った。結局こうなるんかい…。生澤さんは様々な打撃技を出すが、深山はそれを余裕で捌いている。
何の問題も無く、平和なはずの東郷学園。今日も生澤さんは、平和を守る為に、局所的に平和を乱している。真の平和が訪れるのはいつになるんだろうか…?
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