第193話元旦コント(オチは暴力)
眞子視点
「あれ?」
久しぶりの親友の姿が見えてテンションが上がった私は、珍しく手を振りながら大声で呼んだのに反応がなかった。
二人は肩を寄せ合って何かひそひそ話し合っているし。
「もしかしすると聞こえなかったのかな?」
「…俺にはわかる。あいつらは絶対にろくな事を考えていない」
「もう、新年早々友達を疑っちゃダメですよ」
目が座っているトモヒトが唸り声で湊ちゃん達を警戒していた。
あれかな?飼い主が数日家を空けて帰ってきたら、久し振りに会って威嚇する猫ちゃん。
あれ最初はシャーシャー鳴くけど近づいたり匂いを嗅いだりしたら、すぐにウニャンとするところが可愛いんです。
トモヒトも周平君に…。
ハッ、いけないいけない。
どうも昨日からの熱が治まっていないみたい。
今は友達と新年を祝う楽しい時間で、夜に戦利品で腐の方面は解消しよう。
もしかすると二人は私達に気づいていないのかも。
こちらを見ているけど、周囲は初詣で人が多いので私の声に反応して探しているのかも。
「湊ちゃーんっ」
「いやこの距離なら普通に気づいているから」
もう一度叫んで見る。
トモヒトはそう言うけど私なら気づいていない。
湊ちゃん達は先ほど変わらずこちらに視線を向けて、あ動き始めた。
二人は話しながら私達の方に向かってくる。
周平君の初めて見る和風なコートのポケットに、湊ちゃんは手を一緒に入れたままで。
今いるここは初詣ならここですと言われるくらい地元で有名な神社に行く道なので、残念だけど同級生や周囲の人には知られたくないトモヒトの意向で、湊ちゃん達のようなことは出来ない。
少し羨ましい。
「覚悟しとけよ。二日も会わなかったら変わるというけど、あの二人と数日会わなかったら何をしでかすかわからなくなるぞ」
「何を言っているんです?」
三人と出会って一年経っていないけどそれなりに慣れましたよ?
でもたまに突拍子ない事を言うのには慣れませんが、それが今です。
「眞子ちゃん」
「湊ちゃん明けましておめでとおぉぉっ!?」
挨拶できるくらいまで近づけたので、新年の挨拶をしようとしたら湊ちゃんが私に抱きついてきた。
いや抱きつくというよりタックル?
少し身体が浮いて浮遊感の怖さに挨拶が変な声になった。
そして湊ちゃんはトモヒトから数歩、私を抱えたまま距離を取る。
「眞子ちゃん大丈夫?痛くない?」
「はへ?」
私を地面に下ろしてくれた湊ちゃんは真面目な顔でこちらの身体に何かを確かめるように触れてくる。
「あれだよね今は幸せで脳内にホルモンがどばどば出てて感じないんだよ。でも感じていないだけでダメージはちゃんとあるから。私もそうだったから、一日経ってから泣きそうなくらいなったんだよ」
「はいぃ?」
ごめんなさいトモヒト。
私まだまだ慣れていませんでした。
だって久しぶりに会ってどうして痛みの心配されるのかわかりませんーっ!?
「見損なったぞ我が親友よ」
「新年早々ウゼー状態の親友の相手をしたくねえよ」
「お前がヤったことは明白なんだっ!」
「そうだよ友人君っ!私の眞子ちゃんにその無駄の体力でボロボロになるまで…っ」
「あーわかったけど、超うぜー」
トモヒトの方には周平君が唾を吐いた…ふりをしてから彼を人差し指で指差した。
トモヒトはもの凄く嫌そうな顔。
あれは本気で嫌がっている。
閑名宅で秋夜姉さんにからかわれた時と同じだからわかる。
「最初は優しく己の凶暴性に飲み込まれないようにと教えてあげようとしたのに」
「ああ、こいつそういう方面を話すの嫌がるから聞かなかったから眞子さんが…」
「え?え?」
湊ちゃんが私を抱きしめながら周平君と同時に目を閉じてやれやれと首を振る。
会話の内容について行けない私は疑問しか言葉に出ない。
「先達として俺が強引にでも教えるべきフゴッ!」
「やっぱり具視になった者はケダモノなんだねェッ!?」
「あのな」
まだ何か言おうとしていた二人の顔をトモヒトが掴む。
「最近姉貴がからかってくるから組手の量が大幅に増えたんだわ。おかげでメシは美味いし」
「それは眞子さんの作ったごはイタタタッ!」
「聞けや悪友共。そのせいか二人が予想しているよりも力がついているんだよ」
「待って!周平が言ったのに私の方も力が強くなってるっ!」
「彼氏の罪は彼女の罪」
「酷いっ!」
もう訳がわからない。
トモヒトがイラつき?ではなさそうで困った呆れて湊ちゃん達をアイアンクローして、それでも私を離さない湊ちゃん。
現場はカオスです。
「あ、あの私を置いて事態が進んでもうっ」
「どうしてこの娘は無自覚なのぅっ!?」
私の言葉に反応した湊ちゃんが再度〆られて大人しくなった。
「周平、説明しろ」
「せめて湊だけでも解放してくれるなら」
「上手く説明できたらな。できなかったら二人共一分徐々に握力を強めていく」
「周平がんばっ!」
「刑がわかってからはキチー。では眞子さん」
「顔を掴まれたままで真面目になろうとしても困ります」
キッと姿勢を変えたのはわかりますけど、トモヒトのアイアンクローで表情が読めません。
「そこは久しぶりに友人のキレるラインに接触したみたいだから仕方がないの」
「親友のキレそうな事を元旦からするって…。ああ、周平君達ですよね…」
「人から聞くと結構酷い事としているような気分になるな」
「眞子ちゃん眞子ちゃん。達って私もかな?」
「もちろんトモヒトもです」
「何にもしてねえのに彼女からアホ認定されるの心に刺さるのよ?」
でもトモヒトは栄養ドリンクの間に撃ッ!墳水酸そなたは耐えられるか?というショッキンググリーンな炭酸飲料を飲んで噴き出しましたよね。
チラチラこちらを見ていたのでスルーしましたけど。
「まあ、俺と湊は眞子さん達を見てこれはツッコむべきかボケるべきか悩んで、あからさまな釣りには乗らないぞとボケに走ったのですよ」
「その結果が新年早々の罰ゲームになったのは後悔していないけど、友人君の力が増していたのは予定になかったけど」
「相変わらず秋夜姉さんはいらん事をしてくれるよな」
「刑執行すんぞ」
「「…」」
ねーと言い合った二人はトモヒトの言葉に大人しくなる。
はて?私とトモヒトはツッコミ待ちのような隙は作っていなかったはず。
「友人よ。もう少し眞子さんに常識というものを教えてやった方がいいんじゃないの。さすがにお前もああいう状態で俺達に会ったらどんな反応されるかわかるだろう?」
「あー、気を抜き過ぎてたわ。予定外の事があり過ぎてマジできつかったし」
「???」
「眞子さん、ちょっと思い出してくれ。体育祭後の初登校の時の俺と湊を」
「…あまり思い出したくないですね」
やたら元気溌剌な湊ちゃんに、これ以上太陽に照らされたら灰になるのではないかと思うようなやつれた周平君。
本を書く腐の人ですけど知り合いのその…後の感じはちょっときつかった。
参考資料にはさせてもらったけど。
「では元日に友達を待っていたら、彼女の方は手を振ってやたら元気な満面笑顔で、彼氏の方は三日ぐらい徹夜でゲームした時みたいな顔で栄養ドリンクを吸いながらやって来たら、貴方はどう思いますか?」
「…はうっ」
「…湊ちゃん。そのまま支えていたら弱め執行で許す」
「なるべくならアイアンクローは外してもらえると、はい大人しく受け入れるよ…」
「周平は予定の1.2倍な」
「待て待て。たったそのくらいと言っていたのは少し前の事で、最近はゲームで洒落にならない倍率だとあ、あああぁぁぁっ!」
「ひうっくううぅぅっ」
まさか私とトモヒトがそういう風に見られていたなんて…。
言われて気付いた湊ちゃん達と同じ状況だって、でもそんなことはしていませんっ!
普通に大晦日まで充実した三日間を過ごしただけで、トモヒトは秋夜姉さんと純ちゃん案件で心を削られただけですっ!
そう心では叫んでいるけど身体は羞恥であわあわして湊ちゃんに支えられていた。
「い~ち、に~い」
「あがが、遅ぇっ!」
「痛たたたっ!ま、眞子ちゃんっ、友人君を止めてぇっ」
「はうぅぅ」
ごめんね湊ちゃん。
この恥ずかしさが消えるまで私は動けないよ。
<><><><><><>
眞子達の周囲に警戒していた分家ズ達。
『そんなことになっていないのは知っていたけど、今日はラッキーデイだっ!』
『時東君サイコーッよ!』
『ボンのあれ照れだろ照れっ』
『あ、六組二人が接近中』
『了解、こちらで進行方向をずらすぜ』
『くうぅぅっ!羞恥の坪川さんと一緒にボンを撮りたいっ!』
『それしたら長老達に〆られるからな。時東の坊ちゃんに期待しようぜ』
『初売りセールでもするか』
『あの人、親友を平気で売るよね』
『俺達限定てわかっているからしているんだろう』
『ふっ、私はボクサーパンツ一枚で親友のベッドで寝てるボンの写真のデータを貰ったわ』
『『『よこせ』』』
ーーーーーーーー
友人「なんで刑を受けるのがわかっているのにするかね」
周平「そりゃ、親友がボケてほしい状況作るからだ」
湊「ツッコむかどうか悩んだよ」
眞子「悩まないで」
はいすいません。
どうして友人がやつれて、眞子が元気なのか詳しいのは次回で(--;)
どんなところにも現れる純様。まあ、原因はこの人しかいませんよね~(;´д`)
そして残念!友人と眞子の清い交際は延長です(*´ω`*)
分家が周囲にいるのをわかっているので友人は行動を起こしています。
遠くから見えても四人がいつものように遊んでいるなとしか見えません。
分家ズは勝手に閑名家に為に動く有能な連中ですね(;・∀・)
友人、秋夜は生まれたときからその恩恵を当然として自然に受けています。邪魔なら邪魔とはっきり言います。
忠誠の狂気の度合いなら断トツトップですね。変態度も中々ヾ(@゜▽゜@)ノ
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