第186話あるお二人のクリスマスイブ日の夕方

やはり四人とその他(純様軍団)がおかしくしているんだ…(-∀-;)

ところで早間君て覚えてます?


 

 早間君視点

「「「っかれしたー」」」


 部室を出ていく先輩方に挨拶をして、ようやく一年の俺達は気を抜くことができる。


「うーさっみーんだよ。ドア開けたらさっさと帰れって感じ」

「でも締め切ったままだと匂い自家中毒起こすから換気しねーとやべーしな」


 気が抜けたら愚痴のオンパレードになるのは仕方がない。

 それでも半年以上の教育で染みついた奴隷根性で体は部室の片づけを始める。

 ここで手を抜くと、明日の練習がコンクリに正座から始まるので全員が真剣にやっていた。


「しっかし、今日ぐらい部活は休みにしてもいいんじゃね」

「そうだよな。外回り走っているとあの曲が流れてきて。俺こんな日に何走ってんだ?と集中できなくなるんだよな」

「それよりカップルを見ると殺意が増してきつかった」

「「「それな」」」


 今晩はパートナーがいる者にとっては最高の夜になり、独り身の者には嫉妬と虚無がぞ服する夜になる。


「さっき三組の奴が女子と腕組んで歩いていた…」

「「「そいつを殺す」」」


 そして陸上部高校一年生には何もやって来ないクリスマスイブなのである。

 殺意がマシマシになった部活仲間だが、駅に向かったから市内に行くんだろうね。そのままお泊りするのなかな…。と発見者がすでに予想した流れに五体投地に敗北した。

 俺もなっているから一年は全員孤独な夜を過ごすことになっているのだろう。


「達川先輩今日来なかったな」

「ああ、天秤にかけて彼女を取ったらしい。明日の監督から厳しいシゴキ(ごうもん)があるらしいぞ」

「その前にさっき帰った先輩達、バット持ってたよな」

「今から楽しいハンティングタイムらしい」

「「「ナム~」」」


 全員で立川先輩の冥福を祈るけど、心中はナニかある前にハンティングされろと思っていた。

 その後は黙々と掃除と片付けをしていく。

 年末までに綺麗にしていなかったら、年越し超長距離走が発生するらしい。

 先輩達がからかっているとは思うのだが、その目の奥の澱んだ部分と、発生させたら陸上女子も巻き添えになるので、俺達一年の青春は部活と友情だけになってしまう。


「うぃーす。それじゃ後で」


 雑に返事を返して歩き出す。

 掃除が終わり、部室を出て今晩への怨み言を吐き合って校門で一人違う方向の俺は別れた。

 夜になったら部員の一人の家に集まって男だらけのパーティーを始めることになっていた。

 中学の時と変わらない恒例行事になっているのが心を寒くする。

 特に今年は治りきっていない傷に寒さと心の悔し涙が染みて地味に痛かった。


「おや?そこでアンニュイな雰囲気を出して、一皮剥けた俺って成長したよな~。と悦に浸っているのは早間君ではないですか」

「ぐっ。その声は喜多園さんだね」


 後ろから、感情が全く入っていない声を掛けてきたのは同じクラスの副委員長の喜多園さんだ。

 振り返ると前髪ぱっつんの和美人の彼女が同じ制服姿でこちらに歩いてきた。


「もしかして、こんな日に声を掛けてくるなんてもしかして気があるの?とか考えていませんよね。私も華道部の部活動があっただけで、帰りにクラスメイトが歩いていたからただ声を掛けただけですよ。傷心のくせにちょっと優しくされただけで揺らぐような男は、こちらから願い下げですが」

「そんなにクラスメイトをいじめて楽しい?」


 俺の必死の反撃にはニヤァとした笑みだけで返される。


「ええ、負け犬の腐った臭いは大好物ですね」


 笑みだけではなかった。


「だいたい、半年以上前の失恋をクリスマスイブまで抱えて格好つけたりしても。理由を知ったら女子はうわぁと引くだけですよ。ドンがつかない分本気です」

「がふっ!」


 身体が喜多園さんの言葉の槍に貫かれて強制的に膝をつく。


 俺、早間は初恋をし告白することもなく敗れた。

 穂高湊さん、すらりとした高い身長に小さいのにキリッとした美貌の彼女に恋をした。

 女の子を好きになったことは何度もある。

 だが、初恋は穂高さんだと、本当に恋を知ったのは彼女に出会ったときだった。

 熱が心に籠っていき、火が灯され、荒れ狂う炎と化した。


「そして、拗らせて危うく女子生徒から敵対されかけることになったと」

「俺の心を読まないでくれる?」

「甘酸っぱいのを思い出して幸せそうなのから、どんどんと自分のやらかしに苦渋になっていく顔を見れば、知っているの者ならわかるものです」


 ムンッと無表情で無い胸を張る喜多園さん。

 彼女は俺の初恋が破れたことを知っていた。

 あの体育祭から少し落ち込んでいた自分は、クラスの円滑を目指す副委員長に落ち込んでいる内容を話した。

 クラス委員長の穂高さんの右腕に話してしまったのだ。


「人の胸をガン見しないでもらえますか」

「…見ていないよ」


 見たのは一瞬だけだ。

 力が抜けた体を無理矢理立ち上げ歩き始める。


「それじゃ」


 この場から早く逃げないと、この初恋の人の右腕は人の心を抉ってくるのだ。


「……」

「……」

「どうしてついてくるだい」

「なにを勘違いしているんですか。普通に変える方向が同じなだけですよ」


 神様はどうして聖なる夜の日に苦難を与えるのだろうか。

 喜多園さんはどうしてか俺の横に並んだ。


「陸上部の一年男子は集まってパーティーですか。なんともまあ、傷の舐め合いで世界でも下から一番目ぐらいに情けない光景でしょうね」

「何で知っているの?独りよりもいいじゃないかっ!」

「人を妬む男ほど情けないものはないと神は言っています。その男達が聖なる夜に集まるなんて最悪でしょう。つまり女子にはモテねえ奴等だな」

「過去の俺、どうして苦悩を話したんだ…」


 おかげでクラスの中で監視対象になってちょくちょく絡まれるんだよ。


「もう穂高さんに横恋慕はしないよ?だから解放してくれないかな」

「今でもチラチラと穂高さんを見ている人がですか?あ、ちょくちょく早間君に絡みますが恋どころか情も一切ありませんので、もしかして俺の事が?とか微塵も期待しないでくださいね」


 最初の頃はもしかして?とか考えました。

 今も少しはと考えてしまうのは青春の真ん中にいるからしょうがないと思う。


「その穂高さんも時東君とクリスマスイブで楽しんでいるでしょう」

「ぐうぅぅっ」


 いくら自分から薪をくべなくして消した恋心とはいえ、灰の中には燻るものは残っている。

 つまり未練だ。


「あの二人なら、性なる夜にイチャイチャするでしょうね」

「ガハッ!」

「時東君は料理が上手らしいので、二人で一緒にクリスマス料理を作ったり」

「ゴフッ」

「その料理をあ~んとしあうなんてことも。そしてそのままいい雰囲気になってお互いの身体が近づいて…。まあお隣同士でも親御さんがおられるでしょうからそんな状況になるのは難しいでしょう」

「アーッアーッ!」


 聞こえない聞こえないぞっ!

 脳が認識しなければ聞こえていないのも同然だっ!


「少し追い詰め過ぎましたか…。仕方ありませんね」


 アーッアーッあ?

 喜多園さんは嘆息して登下校の途中にあるコンビニに一人で入っていった。

 えっといなくなって嬉しいけど、急にいなくなられると、こちらもどうしていいのか困って動けない。

 しばらく耳を押さえた体勢でポツンと立っていると、喜多園さんがコンビニから出てきた。


「はい」


 喜多園さんが俺の方に腕を伸ばす。

 その手には缶コーヒーが握らていた。


「えっとこれは?」

「イブの日に男子だけのパーティーに参加するのに、気分を最低にされたと言いふらされたら私の沽券にかかわりますので、賄賂兼クリスマスプレゼントです」

「別に貰わなくても言わないけどね」


 更にズイッと主張された缶コーヒーを受け取った。


「うわっ!滅茶苦茶冷たっ」

「しっかりと私の気持ちを込めています」

「それ俺に全然興味ない宣言だよねっ!」

「受け取った時点で賄賂を受け取ったことになりますから」

「そして強制詐欺っ!?」


 フッフッフッと笑う喜多園さんの表情は殆ど変化はしていない。


「はぁ、本当に言わないし、穂高さんのことは引き摺ってはいるけど幸せなクリスマスを過ごして欲しいと思っているよ」

「ふむ…ふむ」


 顔をジロジロ見られるけど、後ろめたいことはない。

 穂高さんのことはキッパリと諦めている。恋は残ってもそういうものである。

 他人にも自分にもよくわからない気持ちというものはあるのだ。


「では穂高さんのエロエロなクリスマスイブと早間君のメタメタな男子会をメリークリスマスの言葉で乾杯しましょうか」

「いつまで喜多園さんの審査は続くんだろう…。地味に心に刺さること言われるし。え、この寒さの中で冷え切った缶コーヒーを飲めと!?」

「私のはホットの紅茶です」


 まあまあと喜多園さんの缶を顔の前に持ち上げられたので、反射的に缶コーヒーをぶつけた。


「メリークリスマス」

「メリークリスマス、よいお年を、明けましておめでとうございます」

「年末の挨拶全部っ!?」

「だって新学期まで会うことないでしょう?」


 絶対に穂高さんの前では猫かぶっているよね喜多園さん。



ーーーーーーーー

湊「もちエロエロです」

周平「地味に年末は忙しいのに絞り取られた」

早間君「…」

ポン

喜多園「頑張れ青春」

早間君「うわあぁぁんっ!」


普通にエロなイブを書くと思ったか!

いや、集中力を数倍使うエロはショタと覇王様を考えて書くときには無理かな(;´д`)


筆者はまともなのも書けますよ(^-^)

…少しおかしくなりましたけど(;・ω・)

今のところまともな人は改心早間君ぐらい?


流石に喜多園さんも知らない時東穂高の親達ママンズは穂高家でイチャイチャ?周平パパは大物狙いで連泊中、湊パパはいつも通りお仕事(号泣中)です(^^;

つまり時東家では湊フィーバータイムですね\(^o^)/


喜多園さんはいい性格しているなー(^^;

またこの二人でコントさせるか…。

あ、絶対に喜多園さんと早間君はくっつきません。うまくいっても普通の友達にしかならないです(^^;


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