第177話閑話 中学最後のクリスマスイブ
湊と周平の真面目な頃のお話です。
湊視点
今の私は気合が入っている。
浮かれているともいえるの。
だってずっとずっと愛していた周平と交際して初めてのクリスマスイブだからっ!
初めて出会った時からの初恋で一目惚れした。
どこが?とか言う人はいるけど、好きな人は全てが好きなんじゃないのかな。
私が歪めた愛を向けたせいで周平は死にかけた。
病院に周平が入院したとき、会いに行こうとしても友人君が止めてきて行けない。おかしくなり、長かった髪も犠牲にしたけど、ぼろクズになった友人君は行かせてはくれなかった。
ようやく会えたのは周平が目覚めてから、窓越しに眺めるだけだった。
ガリガリに痩せこけ、体中に包帯が巻かれて動ける状態ではないのに、それでも腕を伸ばして何かをしようとする周平。
あとでパパから聞いたのは身体が動かないなら勉強をしないと、と言っていたらしい。
少しでもまともに動かせる箇所があれば、そこを鍛えようと動かそうとする。
それを意識があっても、意識が無くても自分の何かを鍛えようとするらしかった。
理由は私に並び立つため。
周平ママが虚ろな周平から聞き出した。
会えない時におかしくなりそうだったのが笑えるくらいに、狂いそうになる。
中学生の二年ぐらいから周平は成績も運動も急激に伸びた。
成長期だからと本人は言っていたけど、私は気づかなくちゃいけなかった。
普通の人はあんな異常な変わり方をしないのに。
でも私は狂えなかった。
だって周平への執着で狂っているから、それ以外の部分はどんなにおかしく見えていても狂えていない。
でも周平はもっと私に狂っていた。
それが怖くて、壊れていく周平に耐えれなくて、私は逃げてしまう。
部屋にこもって昼夜がわからなくなってきたころ、ママと周平ママと秋夜姉さんがドアを破壊して部屋に入って来た。
混乱する私は周平と違う病院に連れて行かれた。
なにか病気になっていたみたい。
発作的に周平に会いに行こうとして友人君に止められ、部屋に閉じこもり、秋夜姉さんに無理矢理病院に連れて行かれる日々。
「私達には権利はないわ。あなた達で決めなさい」
ある日、周平ママが私を連れ出す。
ママが支えてくれてよろよろと車から降りた場所は、周平の病院。
誘導されて歩く先はちょっとした広さがある病院の庭だった。
「湊ちゃん、あなたがどんな選択をしても親の私達は受け入れるからね」
この時のママの言葉は、今ならわかる。
私が選択した周平から離れる方に進んでいれば、おそらくどこか知らない土地に引っ越すことになっていただろう。
でも周平は私を離してくれなかった。
地面を這いずってでも周平は求めてくれた。
なら私はどこにも行けない。
周平の檻の中に私は飛び込んだ。
「うんっ、可愛いよね?」
姿見で全身を見る。
奮発して買ったクリスマスイブ用の決戦服は上品にコーディネートしたものだ。
ママにお願いして普段は絶対に行けないお高いお店に連れて行ってもらって、一目で気に入った服である。
周平と二人ですごすイブ。
今までも二人ではあったけど、カップルとしては初めてだ。
下着もママ達や秋夜姉さんに相談して派手ではないけど可愛らしいのを穿いている。
気合を入れて部屋を出た。
リビングには寄り添って映画を見ているママ達。
二人共、親指を立てて応援してくれる。これから勝負に向かう私には言葉はいらないのだ。
パパ達?周平パパは出張でパパはもう三日帰って来ていません。
自宅を出ると冬の寒さが私に当たって来るけど、心が燃えているので寒くはない。
それにすぐ隣だし。
中学生の私達はさすがに夜のデートには行けないし宿泊もできない。
でも私達の家は隣にあるから両親を説得できれば二人っきりになれるのだっ!
そのぶん情報は筒抜けだけど。
「すーはーすーはー」
時東家の玄関前で深呼吸をして冷たい空気を身体に取り込んで少しでも熱を抑えた。
これからそういうことをするつもりなのだ。今からパニックになるようなことにしないといけない。
「周平ー来たよー?」
いつもより重たく感じるドアを開けた。
そしてビックリする。すぐ近くにある階段と奥まで続く廊下がいつもの光景に見えなかった。
だってリビングから廊下に上半身を出して倒れている周平がいたから。
「おう・・・いらっしゃい・・・」
「周平ーーっ!」
どうして私を見て微笑んでパタリと手を落とすのっ!?
「悪い・・・」
「いいからゆっくりして」
ベッドに周平を寝かせると謝ってきた。
少し呆れているから自分の口調が雑になっているを止められない。
どうしてこうなったか。
それは料理が趣味の周平がお馬鹿だから。
私とすごす為に朝から料理を作っていたらしい。
でも無理をできない周平の身体、寒い朝から動いたせいで夕方に私がやって来る少し前に熱を出して倒れてしまったらしい。
「宅配でもよかったんだよ。それを無理して」
「わりぃ・・・」
熱のせいと、自分が無理したこともわかっているのか素直な周平だ。
さすがにこんな状態でいい雰囲気にはなれない。
本人の判断では少し負担が掛かっただけなので一晩寝てれば大丈夫とのこと。
退院したあとも何度か同じことはあったので本当だろう。
「はぁ、少し待ってて」
私が部屋を出ようとすると、怒られて落ち込み、でも縋りつきたい目をする周平。
「すぐ戻るからね」
凄く可愛いけど、自分だけでは買えない服はさすがにハンガーに吊るしておかないと。
隣の時東家の私の部屋に入る。
普通はありえないらしいけど、小学生の頃からあったからそう言われる方が困る私達の普通だ。
素早くメイクを落とす。
そのまま一晩いくかなと思って薄めにしていたけど、全部取ったほうがもう楽だ。
服も脱いでハンガーにかける。
少し惜しいが来年は着るだろうか。
一度だけ溜息を吐いて気持ちを切り替える。
常備している中で一番可愛いパジャマを着て周平の部屋に戻った。
「周平大丈夫?」
「ん~」
薬を飲ましたから目がボーとしている。
エアコンと加湿器が作動しているのか確かめてから、ベッドの中に潜り込む。
別に病気ではないので傍にいてはダメということは無い。
「ずっと一緒にいるからね周平」
私よりも熱があるその身体を抱きしめる。
すると周平も私を抱きしめ返してくれた。
もうほとんど意識はないようだけど私を求めてくれるようで嬉しい。
そう経たないうちに私も眠くなる。
緊張が解けたからだろう。
「少し寝て・・・起きたらおかゆでも作ろう。汗ぐらいは拭いて・・・」
うんもう無理、おやすみなさい。
私達の交際して初めてのクリスマスイブは抱きしめあいながら、健全に眠りについた。
ーーーーーーーーー
湊「今年の性夜は楽しもうね♪」
周平「まて、漢字が違うだろう」
友人「・・・」
眞子「どうして沈黙なんですか?」
中学生最後のクリスマスイブを書いてみました。
たぶん周平が元気でもそういうことにはなっていません。
この頃の周平はまだ鉄の意思でしたので(^^;
添い寝はときどきしているので許しますが・・・(;・ω・)
死ぬ・・・(;´д`)
ショタと覇王様とから一気に書くと、頭がパンクしそうです(;・ω・)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます