第162話夏冬限定で業が来る人


 湊視点

 人には持って生まれた背負う業がある。

 私は当然のように周平一筋で、周平は私一筋というように生涯変わらないものだ。

 他には謎生命体の教師や最近出会った中ではソルト&シュガーのような見守り隊のような様々な業がある。


 なぜそんなことを考えたかというと、その業に塗れた人が発生したから。

 メイド服で周平と楽しんだ翌日にその問題は起きた。


「おいどうにかしろよ」

「うるせえ、どうにか出来るならとっくにしてるわ」


 男二人が目の前であたふたしている。

 どうしてこういう時には男というものはあてにならなのだろうか。

 まったく周平は学校全体を混沌に落とすことは平気で、友人君は閑名家次期当主で分家を使うことに慣れていてるのに、たった一人の女の子のことで何もできずにオロオロしているなんてなんと情けない。


 お昼休みは長いからゆっくりはできるけど、お腹は栄養を欲しているので私は遠慮なく食べる。

 右肩にのしかかる重みのバランスを取りながら、私は左手で箸を持ってトリゴボウを食べる。武道を習っている時に両利きにしたので片方が塞がっていても平気なのだ。

 うん、冷えても鳥の油がしつこくなくて美味しい。

 酢が入っているのかな?少しの酸味が食欲を増してくれる。


「どうせお前が原因なんだから吐け。迫ったのか?それとも閑名家問題で処理能力をパンクさせたのか」

「親友をどういうふうに見てたかわかる発言しやがって・・・。それにもう一つも俺のせいになるだろうがっ」


 一度口の中をリセットしようかなと考えたら、二人で騒いでいるのに周平は水筒からお茶をカップに注いで渡してくれた。うんさっぱりするね。


「だいたい彼女なんだから把握ぐらいしとけよボソボソ」

「お前らみたいにほぼ百パーセントわかりあえるほうがおかしいんだってボソボソ」


 周囲に生徒がいるから小さな声で話しているけど、手で聞こえるように声を私の方に向かわせるのは無駄に上手いよね二人とも、それはどこで覚えたスキルかな。


「はいはい、助けが欲しいコントはいいから」

「「・・・そんなことしてないよ?」」


 パンパンと手を鳴らして言うとチラチラと私を見ていた目を逸らす周平と友人君。

 本当にこの二人が揃うとおふざけが過ぎる。

 最近は友人君の周平への執着心が薄れたなと思ってたけど、長年の悪友関係は治らないみたい。


 二人が困っている理由は私の隣にいる眞子ちゃんだ。


「はふぅ~」


 眞子ちゃんは私の肩にもたれかかりながら悩まし気なため息をずっと吐いている。

 巨乳眼鏡おさげ委員が王子様美人の私に寄りかかっているこの状況は絵になるよね~。さっきからそっち方面大好きな女子達が喜色満面で見ていた。

 一応写真は取らない盗聴しないを条件にモデルとして見ていいと数名と一学期の頃に約束しているけど、興奮している男子を容赦なく罵倒して泣かせて退散させるところまでしてくれるとは思わなかった。

 うん文芸部の新部長さん、あなたは二年生ですよね。湊様呼びはさすがにむずがゆいものがあるので止めてもらえないかな。


「いやもうマジでどうにかして湊ちゃん」


 友人君が本気で私にお願いしてくる。

 まあころころ人格を変えられるぐらい人の行動パターンを熟知している彼でも異性の、しかも自分の恋人は初めてすぎてどうしようもないみたい。


「文化祭の後は機嫌が良かったのに、今日いきなり落ち込んだのがわからないと?」

「「イエスマム」」


 頷くポンコツ男子。

 少し目を逸らした友人君。すでに後夜祭で何をしたのかは眞子ちゃんから聞いているので周平以外はどうでもよかった友達が動揺しているのは少しおかしかった。


 私が言ったように今の眞子ちゃんは食事も取らずに上の空状態だ。

 本当に文化祭の後に幸せオーラをばら撒いて汐戸さんと左当さんが告白成功したわーっ!と私に連絡してくるくらいバレている人物と同一とは思えないくらいしおれている。


「文化祭の後はメイドと執事と具視とヒャッハーの重圧から解放されて機嫌が良くなっているなと六組連中には思われていたんだよ」


 周平が眞子ちゃんのこの約一週間の六組でのことを教えてくれる。


「それが今日いきなり幽霊のようにフラフラしながら登校してきて大丈夫ですしか言わないくてどうしようもなかった」


 週の初めは私は生徒会の用事とかで一人で早めに登校するから昼まで眞子ちゃんの状態を知ることは無かった。

 連絡も友人君と付き合い始めてから少なくしているし、まあ最初の頃は恋愛を楽しんで欲しい親友からの遠慮だね。


「六組はそれで軽く混乱してな。この馬鹿が隠しているせいで動かねえし」


 ジト目で見る周平にさすがにバツが悪そうにしている友人君。


「まあ眞子ちゃんの今の状態は友人君のせいもあるかな」


 友人君は驚かないで欲しい。

 恋に幸せな眞子ちゃんが急に落ち込むなんて、彼女の生態とこの時期を当てはめればすぐにわかるだろうに。というかそれ以外なら友人君が原因の可能性があるので周平のアニマル説教を三時間ぐらいさせるところだ。


 友人君はクラスメイトに付き合っていることが知られると何をされるかわからないと私達には言っているけど、眞子ちゃんに配慮しているのが長年の友達である周平と私にはバレバレ。

 人前ではおちゃらけ奇人でいることを止めるつもりはない友人君は眞子ちゃんが悪く言われるのが嫌なのだ。

 隠しているのは私達は眞子ちゃんには言うつもりはない。二人で納得か解決すればいいことだ。


 そのせいで眞子ちゃんは今回彼氏である友人君に相談していない弊害が出ているけど。今日の夜にでも相談はするんじゃなかったのかな?

 ま、このくらいも対処できない友人君にはちょっとした罰を与えてあげよう。君の恋人は私の親友でもあるからね。


「周平、友人君と腕を組んで」

「ん、こうか?」

「おい」


 こういう時の周平は私の言うことをすぐに聞いてくれる。

 友人君と腕を組む周平に、ピクリと反応する眞子ちゃん。

 周囲の一部の女子がザワリと気配を大きくした。反対に男子の殆どが逃げ出しているのが見える。


「顔を首に近づけて」


 逃げようとする親友の腕を両腕でがっちり掴みながらその首に近づけるのは私の彼氏です。

 うんうん、眞子ちゃんの目が釘付けになっているよ。

 その他の女子も釘付けだけど。

 もの凄く嫌そうにしている顔の友人君の顔が興奮するのかな?私は断然周平ですが。


「そこで愛の言葉を囁く・・・のはさすがに私が嫌かな」

「それは俺も嫌だ」


 パッと周平は友人君の腕を離す。


「したらマジでぶん殴る」


 少し椅子の位置を周平から離す友人君は鳥肌が立ったのか腕を擦る。


「え~」

「「「え~」」」


 そして離れた友人君達にがっかりする女子の声の中には眞子ちゃんもあった。


「少しは資料になったかな?」

「う~ん、T×Sも良いんだけどやっぱり基本のS×Tのほうが」

「眞子ちゃんもう少し声を下げようね」

「・・・ハッ!」


 興奮した眞子ちゃんは己の欲望全開で大きめの声で説明しようとしたので止める。

 そこのお嬢さん方どちらが受けか攻めかで揉めない揉めない。二人の著作権は私と眞子ちゃんが持っているので妄想だけにしといてね。


「はい、眞子ちゃん復活です」

「はう・・・」


 私にジャーンとお披露目されて恥ずかしがる眞子ちゃん。

 うん親友で同性だけど可愛いね。成人するまで独り身だったら私が貰う予定だったのに取られちゃったのが残念。


「あ~まて、眞子は冬のあれか」

「・・・はい」


 眉根を寄せる友人君に目を横にずらす眞子ちゃん。

 声を抑えているから聞こえていないだろうけど偽装が解けてるよ。


「まあちょっと幸せにポワポワしてたら自分の趣味の期限が結構ヤバいことに気づいたんだよね」

「はい・・・ご迷惑をお掛けしました」


 思考の渦に埋もれていた眞子ちゃんは現世に戻ってくると自分がどんな状態だったか思い出したらしい。


 今の眞子ちゃんが悩むことと言ったら恋人の友人君か趣味、腐に関することしかない。

 そして夏と冬に世界で一番熱量があってマナーが守られる場所で販売する本を作る期限がかなり切羽詰まっていることを今日の朝に気付いたのだろう。それからずっとそのことを考えていたのだ。

 うん、このくらいは推理してもらいたいものだよ友人君。


 周平は眞子さんの趣味?腐のことか?と悩んでいるのはまだ冬の大販売会に結び付いていないからだ。本になるまでの事は私も詳しく知らないのであとで一緒に調べようね。


「で、間に合うのかな?」


 詳しくは言葉に出せないので端的に聞いてみる。


「間に合うと言えば間に合うというか・・・二冊出すつもりで一冊は具視で下書きまで書いているから仕上げまで一気に書けるからいいんだけど」

「だけど?」


 自分の彼女の悩み事がわかって少し気が抜いている友人君が聞いてしまう。

 眞子ちゃんは両手の人差し指をツンツンと合わせて。


「その・・・トモヒトと周平君のを描こうと夏の旅行の途中まで考えてて、そのあといろいろとあったのでそのまま忘れていたというか・・・」

「「うわぁ」」


 小さな声で話す声は三人だけに聞こえた。

 テヘペロする眞子ちゃんさえも効果がないようでドン引きする周平と友人君。

 友人君は教えてもらっていないのかな、すでに夏に周平とくんずほぐれつした本が出ていることに。

 周平はネットで購入して閑名家にそのまま配達しようとしたから知っているはずなんだけど続編は嫌だったのかな。


「さすがに恋人をそういうの出演だすのは気が引けるので、最近のアニメでも描こうと今日はずっとそのネームを考えて」

「眞子ちゃん」


 私はボソボソと話す眞子ちゃんを遮る。

 その中心に大きいモノがあるのに細い肩をがっしりと掴んだ。


「妥協は駄目だよ」

「は?へ?」

「描きたくないのこの二人が乱れるところを」

「「おい」」

「か、描きたいですっ。でもっ」

「眞子ちゃん、一つ教えてあげよう。私は全方位周平に関わるものには嫉妬するけどね」


 ゴクリと喉を鳴らして私の言葉を待つ眞子ちゃん。


「それはそれ、周平のそういうのは見たいのです」


 周囲に聞こえても大丈夫、眞子ちゃんはわかってくれるはずだ。自分の彼氏が襲われる漫画もまた一興だと。

 夏の本は購入させもらった。大変嫉妬して興奮しました大満足でしたよ。


「・・・っ!わかったよ湊ちゃん全力でS×Tを描くよ!」

「T×Sも少し入れて欲しいかな、攻められる周平も見たいから」

「恋人が変なんですがどこに相談したらいいんですか・・・」

「見つかったら俺も一緒に連れて行ってくれよ・・・」


 うん眞子ちゃんは完全復活だね。

 周囲の女子も腐が補給されて嬉しそうだ。残っていた男子は身内を売りやがったと言っているけど彼氏の人権は彼女のものだよ。


 友人君はもう少し自分の恋人を知ろうね。

 私よりも眞子ちゃんの事を理解しないと今回みたいに何もできなくなるから学校で隠蔽することも難しいよ。

 いいお勉強になったということで強制出演してもらおうか。前回は親友が出演を許可したけど今回は自分の彼女だからいいよね。


 うん周平はとんだとばっちりだね。

 でも友人君に迫って女子にそういう風に見られるのは平気なのに、友人君と絡み合うのを本にされるのは嫌だなんて、我が恋人ながら複雑な心を持っていると思うよ。



ーーーーーー

湊「万事解決っ!」

周平&友人「「万事じゃねえよっ!!」」

眞子「あのもう一度、今度はトモヒトが覆い被さる感じで」

周平&友人「「・・・」」


ある意味ラブですよ(ノ´∀`*)

彼氏と友達をしっかり描いてくれるのはラブでしょう!あとそれを見たい彼女もラブがないと許可を出せませんよ(°▽°)


いや~ノク○ーンの影響がいまだにでて何もネタが浮かんでこないことこないこと( ̄▽ ̄;)

日常回を書こうとしてこいつらの日常とは?と本気で悩みました。

ラブもコメもざまぁも入らない話が書けなくなっている筆者です(/´△`\)


眞子、友人との交際は少数しか知らないのに腐の趣味は大勢に知られてしまっている・・・(;・ω・)


無駄設定

周平のアニマル説教。

言うこと聞かないやんちゃなペットも頭部を固定して真顔でこんこんと説教するだけでイタズラしなくなるほぼ脅し。

閑名家の人達は周平に視線を合わされて説教されるのが大の苦手、秋夜もやり過ぎたときには受けて真っ白になったことがある。

まあ閑名家の人達はアニマルとあんまり変わらないので効果抜群なだけ。

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