第156話バカップルは通常運転


 湊視点

「なにそれ、かなり楽じゃないか?」


 一組がリアル脱出ゲームをしていたのを教えると周平は驚いた。


「その代わりに解けるか解けないかのギリギリを見極めて作らないといけないから結構大変なんだよ」

「あー六組じゃ無理だな。難易度が高すぎるか、簡単でも絶対に解けなくして最後に残念でしたとかやりそうだ」

「それは絶対に暴動が起きるから許可も出せないね」


 私達は担任、生徒会に試してもらい。絶対に解けるように調整施した。


「なら一組は最低限の人数で回せたんじゃないか」

「まあね。午前中に五人で出来るようにしたよ」

「すっげー、六組なんか午後はほぼ全員参加になっていたぞ」

「そこは周平の読みの甘さだね」


 周平達六組は自分達で作ったものを全力で楽しむという感じだけど、一組は文化祭全てを楽しむようにしたのだ。

 私と周平が中心にいて正反対の楽しみ方を考えたのはちょっと面白い。


「ん~次はどこに行こうか?」


 六組の教室を出てから私達はいくつかの教室を巡った。

 メイドと執事にはさすがに見飽きたのかそこまで視線は感じないけど、腕を組んでいるのでそこそこ目立ってはいる。

 これでも一年生の中では上位を誇る知名度を持つ私なので、ただ断トツと言えなくなったのは恋人の周平のせい。

 本人は私の彼氏ぐらいしか知名度はないのだけど、具視を投入されたことで知名度上位は混迷を極めている。

 ウチの学校、入学式処女爆弾発言女子(現在は異なる)、変な髪型軍団(今回復活)、不良の見た目なのにラブリーエプロン(笑ってはいけない)、登校時早朝白目死体(身内)など変な生徒が多い。

 その上位の殆どに関係している周平は凡人ではないと思う。


 まあ二人でメイドと執事でいるとそれなりには注目された。クラスメイトにも会って写真を撮られたりもしたけど、是非広めて欲しい。

 周平は私のもので、私は周平のものと全校生徒に知ってもらわないと面倒なワンチャン告白ぐらいは無くしたいのだ。


「あと二つお化け屋敷があるが」

「もう行かないよ。閑名屋敷を夜探索した方が怖いもん」

「それはわかる。全員夜になると気配を消してるから、子供の頃はトイレに行くときとかマジ怖かったな」


 先ほどお化け屋敷に入ったんだけど、私だけじゃなく周平も気配が大体わかるので脅かす系のお化けは丸わかりで全然楽しめなかった。


「来年は閑名家の蔵からいわくつきの物を借りてリアルお化け屋敷をしようかな」

「それは本当にやめてね。阿鼻叫喚ではすまないから」


 槍ジジイが折檻されるときによく入れられる蔵、骨董品が沢山あるのだけれど夜は絶対に入りたくない場所だ。全員が警報装置の閑名の人だけど、蔵に盗みに来た泥棒は放置している。

 何故かというと盗むことが出来ないから。大概が次の日に蔵の中で気絶していて、目覚めてもまともな精神状態ではなくなっている。


「お前らも悪いことをしたら蔵に閉じ込めるからな」


 と絶叫している泥棒を見せらながら秋夜姉さんに脅されたのは小学四年生の時、その数日後に屋根から池に飛び込んだ周平と友人君が一晩閉じ込められた。

 次の日、二人がカッコいい鎧に遊んでもらったとか美人で巨乳の姉ちゃんに二度と池に飛び込むなと怒られたとはしゃいでいるの見たとき、私は絶対に蔵には入るまいと誓った。本物のお化けは怖いのです。

 秋夜姉さんが二匹とも精神的に追い詰めてくるんだがなと呟いたのは聞き逃していないのだ。


「周平は中二のときにやらかしたでしょ」

「あれはな~」


 周平のやらかしの中でも被害者が多かった一つが中学生の時の文化祭でしたお化け屋敷。

 驚かすのではなく恐怖心を徐々に上げていく心理学から突き詰めたもので、号泣した女性が続出、ガラの悪い男子は・・・お漏らしをして不良の地位を大きく落とした。

 気配を消すのではなく多くすることで私の様に気配がわかる人のほうが精神的に追い詰められるお化け屋敷ではなくて恐怖の館だった。

 問題あり過ぎで途中で中止になったけど。


「とにかくお化け屋敷は禁止だから。来年は絶対に許可しないよ」

「・・・おもしろドッキリわくわくお化け屋敷は?」


 どうしてそこまでいってお化け屋敷から離れないのかな?


「カフェ系はもう行きたくない」

「うんあれは私もきつかった」


 そのあと少し休憩しようとカフェをしている教室に入ろうとしたのだけど、客が二、三人しかいなくて同じ色のエプロンをしている生徒の方が多いという光景にいたたまれなくて逃げだした。


「時間的に人が少なくなるのはしょうがないけど、まあ周平達と同じ出し物にしたのは運が悪かったね」

「俺怒られないの?」

「どうしてかな?お客が来ないのは彼らの頑張りの結果が出ただけだよ」


 妨害や不正な事をしてたら周平でも容赦はしない、運営側からすればそういうところは平等に見ないとね。

 協調性とか言うけど同じようなものばかりだと微妙なので、まあマナーの範囲内で限界ギリギリを攻めてくる周平達六組に勝てというは私でも無理かな。


「メダカ凄いな」

「うん、飼いたくなるね」


 生物部の出し物を見に行ったらメダカの生態、現在品種改良されて出来た種類、そして商売にするまでの方法までが展示されていた。お願いすれば説明もしてくれて、それがなかなか面白かった。

 期待していなかった分があったから、次期部長さんのメダカのお話しはわかりやすくて楽しめた。

 あと最後にお似合いのカップルですね、と言ってくれたのは嬉しかった。

 ただ眼鏡執事は最高ですよねと私にだけ囁いてきたのは勘弁してほしい。いやまあ、今度してもらおうかなとは考えていたけど。


「よし体育館のほうも見て回るか」

「この時間は何やってたかな?」


 メダカについて事細かに書かれたパンフレットを持って、ちゃんと腕を組んで歩き始めた。


「で、何でここにいるんだ?」

「しょうがなかったんです」


 体育館に行くはずだったのに、何故か調理部の出店の裏で椅子に私は座っていた。

 長机を挟んで正面にいるのはいつもよりフリフリ多めのピンクのエプロンを着けた不良、もとい男前上村先輩。


「体育館行こうとはしたんですよ。ただその時舞台でやっていたのがNo1カップルコンテストで」

「ああ、あれか」

「運営している生徒に途中参加でいいから出てくれとしつこく勧誘されて、閉会式まで拘束されるというので逃げてきました」


 体育館に行く途中でやけにテンションが高いTシャツ姿の生徒に呼び止められた。

 そしてコンテストに参加しろと強引に迫ってきたので出店の方に逃げてきたのだ。それでも追っかけてきたので調理部の裏に隠してもらうことにした。


「来年は中止にしてやろうかなと考えています」

「まあ成功の為に少し強引になったぐらいだから話ぐらいは聞いて判断してやれよ」


 ちょうど休憩に入った上村先輩に愚痴を聞いてもらったおかげで少しだけスッとした。

 尊敬する人の言葉なので覚えてはおこう、審査は厳しめにするけど。


「そのおかげうちは助かっているがよかったのか?」

「まあしょうがないです」


 上村先輩が指さす先を見て苦笑するしかない。


「はい二人前できました」


 そこには眼鏡執事にエプロンを着けた周平が焼きそばを作っていた。

 わざわざ格好に合わせて姿勢正しく、口調も変えている。


「客の入りも悪くなっていたところだったから助かった」

「まあ私達も一応調理部ですから」


 私はあまり通っていないけど。

 周平は上村先輩の代わりに焼きそばを作るのに入った。


「あれ自分も調理部だからって言ってましたけど先輩への恩返しが多分に入っていますから」


 私の言葉に目を開く上村先輩。

 私と周平、友人君は年が近い年上という人が無い。

 質の悪い上級生風を吹かす連中が多かったので小中学校で親しくなった人はいなかった。

 周平と友人君は嬉々として排除してたけど、二人で落とし穴を掘って落として爆笑していたのはたぶん若かったから。

 今はもっと容赦が無くなっているかな。


 高校生になって上村先輩が誘ってくれなければ私達は部活動はしていないだろう。

 自由にさせてもらったの気が楽になった。

 周平は料理で相談できる同性の相手が出来て嬉しかったのだと思う。

 そして私は食べれる料理の種類が増えて嬉しかった。


 来年には卒業する上村先輩のために周平が手伝う最後の機会をこれからずっと一緒にいる私の我儘を通すのは出来ない。

 それに鉄板で調理する眼鏡執事の周平が格好いいし。


「なあ少しウルッときたのに目の前でだらしない顔をされると困るんだが」

「おっとすいません。周平があまりにも格好いいので」

「穂高はもう少し隠した方がいいぞ」


 それは彼女が作ったフリフリエプロンを着けている上村先輩には言われたくありません。


「部長―っ!眼鏡執事に引き寄せられた腐女子がどんどん増えていますっ」

「そこのメイドをこっちに寄こしてくださいっ」

「お前も恩を感じているなら手伝ってやってくれ」


 ふむ、いつの間にか人の彼氏に有象無象が寄ってきたようだ。

 調理部の女子があたふたしている。

 上村先輩にもお願いされたし私も動こうかな。


 私は席を立って焼きそばを作っている周平に近寄り。


「おい」

「これは私のモノなので見るだけにしてくださいね。最前列で見たいなら焼きそばを買うこと」


 周平の腕を強引に抱き寄せて宣言してやった。


「「「きゃぁーーーっ!!」」」

「「「さらに混ぜ返すなぁーーーっ!!」」」


 ふっ、マウントを取っての歓声はいつ聞いてもいいものだね。



ーーーーーーー

上村先輩「休憩時間がなくなった」

執事彼氏「マジすいません」

メイド彼女「はーい、おさわりはダメですよー」


二人でいると通常運転のバカップルです(*´∀`)

デレデレを通り越すと熟年夫婦になっています。

あと一、二話で文化祭は終わりですかね。

そのあとは・・・消費かな?(´・ω・`)


無駄設定

閑名家の蔵

別名泥棒ホイホイ。

高価な物がゴロゴロあってよく泥棒が入る。

曰く付きの品も大量にあり、だいたいの泥棒は次の日の朝に気絶した状態で見つかる。ごく少数の悪人はそのまま行方不明に。

周平と友人があった二人は閑名家のご先祖様。初代夫婦ではない。そちらはすでに転せゴフンゴフンッ。

鎧武者と巨乳美女が蔵の代表で他にも大勢の幽霊、妖がいる。

槍ジジイは無視して爆睡、秋夜は嬉々として挑んで貴重な品を壊したので二度と会えなくなった。

周平と友人にはたまに会いに来てほしいと思っている蔵の人?達。たぶん湊が来ても喜ばれる。

眞子が来たら狂喜乱舞でポルターガイストが日中でも起こる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る