第155話塩と砂糖でお色直し


 

 湊視点

 ちょっとイラッとしたから周平を悶絶させた。

 六組教室の混沌をどう収めようか考えると。

 元凶は周平、その大元は純ちゃん、だけど場の征服者が誰かというと秋夜姉さんだ。姉を制すればどうにかなると考えて言葉でこの場から動かそうとしたら。


「あん?姉に勝てると思うなよ」


 言葉でなく無限の腕力に掴まった。


「ちょぉっ、私学校では優等生で通っているのっ。首を掴んでダラ~ンは止めてぇっ」

「周平と友人はアイアンクロ―、お前は猫のように掴むのが昔からの対応だろうが」

「え?穂高さんはあの奇人No1と2と同じ部類なの?」

「中学までは三人で暴れていたからな~」

「一人だけ大人になったんだど思ってたけど」

「あの姉御に何の策もなしに突っ込むということはあんまり変わってないな」


 クッ小学生の頃から見る連中がいらないことを言っている。


「ほら女の子をそんな風に持っちゃダメでしょ」

「レオさんっ」


 常識人が一人いたっ。その恋愛関係は超非常識だけどこの教室内ではまともだ。


「だがなぁ、こいつを離したら蹴りか裏拳をしてくるからなぁ」

「学校でそんなことしないよぉ」


 それは小学生の頃だからっ、姉にとってはずっと私達は子供のままなのか。

 このままだと私も混沌に飲まれて・・・眞子ちゃんっ!今こっちを見たよねっ。助けてヘルプミーッ。


 え、目でモールス?

 ワタシハ、ジュンチャンノアイテデイソガシイカラムリ。アトソッチニマキコマレタクナイと、親友に見捨てられたぁー!

 も、元喧嘩仲間は!?これ幸いとばかりに誘導係から逃げているっ。え、痛みで悶絶している周平の介護?うんごめんね。


「はあとにかく離してあげなさいよ。あんたはちょっと殴られたり蹴られたりされるぐらい平気でしょう」

「馬鹿、湊は一応ウチの免許皆伝だぞ。そこそこ痛いんだからな」


 頑張ってレオさん。私良い湊だから学校で猫吊りされると困っちゃうの。あと秋夜姉さん、車に撥ねられても平気な人にダメージを与えられる技は素手では無理だから。せめて寸鉄ぐらいないと。


「あ~、よしそこのメイド達こっち来い」

「「はいっお姉さまっ」」

「六組順応が早すぎるっ」


 少し、いや数秒だけ悩んだ秋夜姉さんは六組のメイド二人を呼び寄せた。

 お姉さまって、うん逆らっちゃいけない雰囲気はあるよね。


「はあ穏便に済ませなさいよ。それで私達が座る席はどこ?」

「はっ、こちらでございます」


 レオさーんっ!

 あっさりと私の救出を諦めるレオさん、こちらも手下になっている執事に誘導されてさっさと席に行ってしまった。


「お前らメイド服に予備はあるな?」

「「はいっありますお姉さまっ」」

「その中にはこいつの背の高さに合うヤツがあるはずだ。胸も・・・まあ同じぐらいだろう」

「う、う、う、胸の事は~」


 それだけは姉といえども許せぬっ。

 これでも最近は大きくなったのだ、好きな人に揉まれると大きくなるというのは本当だったよ。


「よしどっかにこいつを連れて行って着替えさせろ」

「アイアイサーッ」

「ああああぁぁぁ」


 秋夜姉さんは一時的に痺れて動けにくくする技を使って私を弱体化させた。

 反抗する力も無く二人のメイドに連れていかれる。


「やだなにこれ肌がきめ細やか過ぎるっ」

「メイクなんて私達からすれば最低限もしてないよっ」

「ううっ、もうやめて~」


 近くの女子トイレに連れ込まれた私はおもちゃにされた。

 痺れは取れたけどメイクを全て落とされたので、このままトイレから出ることも出来ないのでメイド二人にされるがままになっている。


「まあまあ盛らなければ人前に出れない私達が完璧に仕上げてみせるから」

「大丈夫だよ~今回のメイド対応のメイクは私達二人がショタ師匠から教えてもらったから」


 トイレに連れ込まれたときに汐戸しおとさんと左当さとうさんと名前を教えてもらった。


 近くの教室から机まで借りてきてメイク道具にカバーを掛けてある服まで置いてある。

 正直メイクを最初に落とされた時点で逃げ場はなくなっていた。

 自分が綺麗な部類とは自覚しているけどすっぴんで歩くのはさすがに恥ずかしい。


「ううっ、せめて普通でお願い」

「・・・やーねー元が良すぎてどんな風にしても普通より上になるのに」

「シオちゃん嫉妬はダメだよ~。天上人が下の苦労をわかならないように私達も上の苦労はわからないだから~」

「そのくらいわかってるわよ。あ、ごめんね穂高さん私思ったことがすぐに口に出るの、あんまり悪いとは思ってないけど」

「私は~考えて毒づくかな~」

「う~ん、六組は個性が強いね」


 おっとり顔なのにはっきりズバズバ言う汐戸さんに、きつめの顔なのにゆったり毒づく左当さん。


「六組は校内奇人ランキングNo123が揃っているから~」

「私達なんてあの中では下の下よ」


 親友としてNo3は眞子ちゃんは外して欲しいと思う。1と2は自業自得なので知らない。あとその1と2は自分は奇人と思っていない変人ですよ、なので下の下と言っているのは信用できないから。


「よしっ出来たわ。時間がないからいろいろとしたいことは出来なかったけど」

「髪のセットも大体終わりかな~。後は着たあとに直すくらい~?」


 されるがままの私。

 メイド服を渡されて個室に入れられる。自分で着たあとに調節してくれるらしい。

 正直、着るのが気乗りしていない。

 身長が高い私は可愛い系の服があまり似合わないので着たくないのだ。中学に入って周平を超えてからのコンプレックスである。


「赤髪のお姉さまに言われたから穂高さんをメイドしようとしているけどさ」


 外から汐戸さんが声を掛けてくる。


「私達には渡りに船だったかな~」

「渡りに船?」

「そう、ぶっちゃけ今回の六組の出し物の準備の殆どが穂高さんの彼氏の時東がしているの。まあ穂高さんなら知っているわよね」

「本番の今日も~、ずっと朝から暴食揚げと私達への指示出し、問題が起きたときのお客への対応とかね~。クラスメイトの中で一人だけ休んでないの~」

「朝も一番に来て準備してたしね」

「だから~全員で暴食が揚げ終わったらその後は片付け無しのフリーしてあげようと思ってたの~」

「穂高さんも自分のクラスのまとめ役で忙しいだろうけど、終了時間に近くなってきたら自由な時間ぐらい作れると思ってね」


 うん、結構周囲はちゃんと見てくれているみたいだよ周平。


「ま、彼女の穂高さんが来てくれてメイドになれば眞子の胸にだけ反応した時東も驚くでしょう」


 ・・・へぇ~ふぅ~ん、まあ昔は秋夜姉さんの胸を見てたしね。うん後で搾り取ろう。

 寒気が~、と言っている左当さんごめんななさい。ちょっと漏れ出しちゃった。


 そのあと着たメイド服の細部を調節してもらう。


「うん完璧・・・現状できるのではだけど」

「一言多いよ~」

「・・・」


 メイド二人の間でトイレに設置されている姿見を私は見ていた。

 長身の私にピッタリなメイド服、ロングスカートでも丈が合わずに微妙になるかなと思っていたけどぴったりだった。


「数着長身のがあったけど~、他のは胸がすっごーいことになっているのばかりだったの。一着だけ並みのがあったんだよね~」

「グフッ」

「いらん事をいうなサト」


 地味にボディーに響く言葉だよ。

 メイド服はまあ置いといて、汐戸さんのメイクが凄かった。

 少しきつめだと思っていた自分の目元が柔らくなっている。極端に変化しているわけではないけど自分じゃないみたい。

 髪も短いからあまり弄れないのにサイドを編み込んであった。白のカチューシャで正面からは見えにくいだろうけど嬉しい気分がする。


「どう?持たざる者のメイク術はっ」

「シオちゃんツンデレさんだからって卑下しないの~。私の髪のセットもどうかな~」

「・・・うん、ありがとうございますかな」


 イエェーイとハイタッチをする汐戸さんと左当さん。


「じゃ、連絡先交換しておこうか~」

「別に仲良くなるってわけじゃないけど、時東が暴走した時用よ」

「ツンデレシオちゃんは置いといて~。嫌じゃないなら~ブロックされたらそれぐらいかの感じぐらいで~」


 クスッと笑ってしまう。

 少しだけ六組が羨ましいと思った。一組は一組でやりがいがあるから楽しいけどね。

 私からもお願いして交換する。


「ね、ねえ、変じゃないかな?」

「大丈夫だからっ、私が仕上げたメイドの中で一番よ、同率で巨乳眼鏡おさげメイドがいるけど」

「あの属性過多に勝てるのが凄いと思うよ~」

「ほらみんなジロジロ見ているしっ」

「それはあんたが可愛いからでしょうがっ」

「いつもは王子様って感じで見られても平気そうなのにね~」


 六組の教室に戻ろうと廊下に出たら、視界に入る人の殆どが私を見てクワッと見開いていたので怖気づいた。

 こう憧れる目で見られるのは平気だけどジロジロ見られるのは心が怯えてしまう。

 そしてメイド二人に押されるメイドという変な状態でズリズリと教室にむかった。


「ど、どうかな?」


 周平には全てを見られているし彼シャツも裸エプロンもエロ下着も見せたけど、こういかにも可愛いという恰好は見せたことは小学生以来なかった。

 恥ずかしかったけど勇気を出してスカートの横を摘まんで見せる。


「可わ・・・あっつーっ!!!」


 メイド服の私をみた周平は動きを止め、再起動して言葉を発しようとしたら、油が跳ねたのか悶絶しはじめた。

 うん、わかっているよ私は可愛いと言おうとしたんだよね。


「はいはい治療してあげるから時東はこっちね」

「穂高さんは十分だけお手伝いでもしててね~」


 そのあと他のメイドに何か聞かされた汐戸さんと左当さんは周平を連れて暗幕が張ってある場所に入っていった。

 そして私は他のメイドにケーキとドリンクが載ったお盆を渡される。


「お姉様方がお呼びです」


 ニッコリ笑って手で指し示られた先にいたのは私をメイドにしたした人と、見捨てた人だった。


「おう似合っているじゃねえか」

「可愛いわね~」

「おかげさまでっ」


 お盆に載っているのをすこし乱暴にテーブルに置いてやる。こぼしはしないけど恨みは添えてだ。

 そんなことぐらいではたじろぎもしない秋夜姉さんとレオさんだけど意思は主張しないといけない。


「しかしピッタリだな。体形と背の高さが近いとみていたが」

「これソフィのよね?あの子のを完璧に着れるなんて凄いわ」

「ん?そふぃ?」


 しみじみしている二人が問題発言をしているような。


「お前らが着ているメイド服な、全部メンバーのやつだ」


 ピッとメイド服を指差す姉。


「使用済みじゃなくて未使用だから安心して」


 うんレオさん、安心だけどメイド服が誰が何のために作ったのかがわかったのが安心できないかな。

 つまり、彼氏さんの御趣味で作られたものだと。まあ昨日ショタさんが持ってきた時点で何となくは予想していたけど、本人達から聞くとキツイね。


「俺達の分も持ってきているとショタから聞いたが着てみるか?」

「嫌よ。私はボスの前でしか着ないわ」


 ガシャンと何かか床に落ちる音が聞こえた。

 見ると友人君がお盆を落としていていて顔を青褪めしかめ面で頭を押さえている。そりゃあ自分の姉のメイドコスプレなんて見たくないよね。

 あと眞子ちゃんは慌てないで純ちゃんのクッションをしているように、メイドの何人かがギラリと目を光らせたよ。秘密は彼女の方から漏れるかもね友人君。


「なにメンバーって?」

「未使用?」

「使用済みとは・・・」

「「「この変態執事っ」」」

「閑名を締めあげればわかるか?」

「お姉さま達のメイド服見たかったわ~」


 聞こえていた六組が騒めきだす。


「執事服と具視は純が行くのが決定してからの突貫作業で作ったらしい」

「返してもらっても困るからメイド服と具視も合わせてあげるって言われているの、だから私達のことは詮索無用ね」

「「「わかりしましたお嬢様」」」

「ショタの教育は行き届くよな」

「本人はボスに命令されないと少しも動かないけどね」

「うん、二人共それ以上そちらの話はしないようにしようか」


 さすがに純ちゃん、秋夜姉さんとレオさん、メイド執事具視で情報多すぎだから、これだけでも当分は校内の噂話に事欠かなくなるので。

 生徒会が事態を鎮火させることになるのは確定だ。


「穂高さ~ん」


 左当さんが暗幕から出てきて私を呼んだ。


「彼だけ制服だったからね、私が皆にお願いしたの。楽しんで来てね」

「俺達がここにいるから遊んで来い。おいお前らは真面目に出来るな」

「「「喜んでお嬢様っ」」」


 レオさんがニッコリ笑って手を振り、秋夜姉さんが完全に執事とメイドに具視を支配した。


 左当さんの方に歩きだす。


「いやこれはいらないだろうっ」

「閑名と対比にしようと考えていたんだからそれはいるの。おらっ、さっさと出ろっ」


 周平の声と汐戸さんの声が聞こえて暗幕から一人だけたたらを踏みながら出てきた。


「はい、六組の功労者を預けるね~穂高さん」

「うわっとと」


 たたらを踏んだ彼を左当さんが背中を押して私の元にむかわせてくれる。


「何で俺がこんな目・・・」


 周平の目が正面の私を捉えて愚痴が途中で止まった。


 六組男子と同じ執事服を着ている。だけど髪は後ろに軽く流していて、その目には細めの眼鏡をかけていた。少しメイクもされている。


「閑名のワイルド系に対して知的系にしてみたわ」

「キッチリすると真面目過ぎるから髪は少し雑目だよ~」


 グッジョブです。嫉妬も出ないくらい最高です。


「あ~何か皆が企んで暇に」

「おい、執事はそんな口調じゃないぞ」

「この馬鹿が・・・あれか四人の件での嫌がらせか?あとで絶対に何かしてやる・・・」


 友人君の横やりに苦虫を潰したような表情になる周平。だけどすぐに落ち着いた顔に戻す。


「お嬢様、まだ不慣れな私ですが遊びに行くエスコートをさせていただきませんでしょうか」


 そう言ってスッと手を差し出す周平。

 うん、今の私はメイドだけど彼から誘われるのなら少しだけお嬢様になろうか。


「はい喜んで」


 差し出された手を取る。


「ヒューヒュー」


 可愛らしいけど抑揚のない声が囃し立てて。


「いってらっしゃーいっ」

「帰って来なくていいからな」

「若くていいのぅ」

「いいなぁ」

「はぅっ!?いったい何が?穂高さんがメイドになってるぅっ」

「はいはい梅ちゃんには俺の分大罪をあげるから」


 全員に祝福されながら私達は教室を出て行く。

 執事とメイドの不思議な組み合わせで腕を組んでだけど、まあ文化祭、お祭りなので許されるだろう。


「あ~これで奇人ランキング以外の何かの順位が上がるだろうな」

「うん、バカップルでは断トツ一位だろうね」

「それは自覚済みだからあんまり応えない」

「私もかな」


 教室は騒がしかったけど二人で廊下に出たら皆が驚いていた。さっきは恥ずかしかったけど周平だ傍にいてくれるなら全然平気だ。


「あ、さっきはごめんな。そのメイド服すごく似合っている。化粧も柔らかいフワッとした感じだし、セットも横を編んでいるんだな。うん、さらに惚れた」

「はうあっ!?」


 どうして廊下に出たタイミングでサラッと言うかな!?

 ああっもうっ!顔が赤くなるじゃないかっ!


ーーーーーーー

汐戸「汐戸よ」

佐当「佐当です~」

汐戸&佐当「繋げて言ったらいたずらするわ(~)」


はい、のせられて新キャラです( ´∀`)

そろそろ新キャラをとのご要望にモブがネームド持ちになりました。

するとなかなか良い性格に、湊達の狭い世界が広がっていくもしれないきっかけかも(*´ω`*)


あとラブは書けてますよね!ラブコメのコメも書けているのだろうか・・・不安だ(;´д`)

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