第26話湊さんの休日(早朝編)

湊視点


 意識が浮上すると同時に目を開けた。

 眠気は少しもない。

 

 夢に周平が出てきたからかもしれない。

 フンドシ姿で砦の物見やぐらの上で何か叫んでいた。

 滅多にない周平の覇気のある声とありえないフンドシ姿に興奮する。少し日焼けしていたのが格好良かった。


 おかげで目覚めが良かった。

 起き上がり、時計を見るといつもの時間だ。目覚ましも鳴っていないのに起きれるのは自慢だ。

 ただし、今日は日曜日である。融通が利かない自分の自慢だ。


 朝の日課であるランニングの為に二階の自分の部屋から一階に降りる。

 リビングの方から音が聞こえてきた。

 気になったので入ってみると、ママと周平ママがソファーで寝ていた。テレビには最近流行りの海外ドラマが流れている。


 昨晩、二人がドラマを見ていたのは寝る前に確認していたがそのまま朝までコースになったようだ。

 二人とも四十代なのに女子高生並みに行動力ありすぎる。


 エアコンは付いていたが寒そうにしていたので、毛布を持ってくる。二人は寝たまま毛布にくるまってミノムシになってしまった。

 大丈夫そうなのを確認した後は、ランニングの準備をした。


 家を出る。

 朝特有の澄んだ空気を吸い込んだ。冷たく緑の匂いを感じる空気が美味しい。

 早朝でないとできない特権だ。


 ワイヤレスイヤホンを耳に付け、音楽プレーヤーをランダムに曲を流す。

 一応、私は学年の女子に人気があるので最新の曲や情報は取り入れるようにしている。人気者も陰の努力をしているのだ。


 30分ほど走る。

 途中、思い出の公園のランニングコースを走った。自分の他にもよく見る走る人がちらほらいる。それだけで警戒を少し緩めた。

 私も女性なので一人で公園内を走るのは遠慮する。不審者がいるかもしれないからだ。だから知っているランニング仲間達がいるだけで楽に走れるのだ。挨拶ぐらいしかしないが良い相互関係を取れていると思っている。


「ふう、今日はこのぐらいしとこうかな」


 汗が噴き出してきたところでランニングを止める。帰りはジョギングのペースで走った。帰るころにはいろんな人が活動し始めていた。

 庭で水を撒いている女性、自転車に乗っているお爺さんと挨拶を交わす。

 挨拶一つで人の好感度が上がるから不思議なものだ。


 そうこうしないうちに自宅に着いた。だがそのまま通り過ぎて隣の時東家に行く。

 鍵は持っている。

 

 私と周平は両家の鍵を持っている。

 以前から持っていたのだが、中学三年生の時に 周平と交際すると両家両親に伝えたら、成人式まで清い交際をするならそのまま持っていていい。出来ないのなら没収と言われた。

 理由は周平は言われたら大人になるまで守るけど、私は絶対に周平を襲うからと断言される。

 当たっていたのでしょうがなく条件を飲んだ。

 私の中では本番行為さえしなければ清い交際となっている。


 時東家に入ると玄関に周平パパの靴がなかった。

 釣り好きなので、朝早くから出かけたのだろう。今日の晩御飯はお魚料理かな。


 汗を流す前に二階に上がる。

 時東家には私の部屋もある。主に着替えを置いている部屋だ。

 着替えを取りに行くのだが、もう一つ目的がある。

 

 周平の寝顔を見るのだ。

 周平の部屋に入ろうとドアを開けようとすると鍵がかかっている。


「この前、開けたのに真面目だな周平は」


 十円玉を取り出し簡単に開けた。室内のドアは緊急時用に開けることが出来る。良い子はしてはいけないよ。私と周平の仲だからオッケーなのです。


 ゆっくりドアを開ける。

 室内を見ると周平はベッドで眠っていた。

 足音を立てないで周平に近づく。

 この前は周平がフンドシは嫌とうなされていたから気になって下を脱がそうとして起こしたけど、普段の周平は目覚ましが鳴るまでほとんど起きることは無い。


 周平の顔の傍に座る。


 殆どの人達というより私以外、両家両親も周平の顔は普通だという。

 それが私にはわからない。

 

 このままずっと周平の顔を見続けても飽きないだろう。

 それがおかしいと言った人も何人かいた。迷惑なので私達の周囲に来ないようした。


 しばらく眺めていると、周平の鼻が何かを嗅ぐ仕草をした。


「おっと汗の匂いに気付いたのかな。寝てても私に気付くんだね」


 気分が良くなったので大人しく退散しよう。


「起きたら今日は一緒に遊ぼうね周平」


 私は音を立てないように静かにドアを閉めた。

 


ーーーーーーー

筆者「やはりストーッ!」

湊「見てたのかな?駄目だよ」

その後の筆者を見た者はいない・・・。


湊は自覚しております。そしてそれを知っても愛してくれる周平が大好きなのです。

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