第19話私は彼の事がわかっていなかった
悩み苦しみ成長するのも青春だと筆者は考えています。
この話、前話と合わせて短編で出せたな・・・。
湊視点
私は彼の事がわかっていなかった。
「もう二度と周平に関わらないようにするね。本当にごめんなさい」
そう言って深く頭を下げる。枯れていたと思っていた涙がまた出てきた。
そして周平の顔を見ずに、ベンチとは反対方向に走り出した。
周平ママには感謝している。
息子をここまで追い込んだ女にもう一度会う機会をくれた。
二人で話し合いなさいと言われたが、私がいる限り周平は無茶を続ける。その先は周平の死だ。
わかる、わかってしまう。
周平の地獄のような日々を聞いた後では。
周平は私には一切を隠していたが、他の人には一部分ずつに分けて教えていた。そして私には教えないでほしいと。
知っている人の情報を集めたら、中学生の送る日々ではなかった。
周平が何のためにしていたか、私の為だ。
私は常に周平の愛に餓えている。
いつからかはわからない。気づいたときにはそうなっていたのだ。
周平がいなければ私は壊れていく。
その恐怖を紛らわせるために、そして周平という存在に釣り合うために努力し始めた。才能があったのだろう。頭が良くなる、運動が良くなる、いろいろな技術が増えていくごとに周平に釣り合っていく気がした。
それが周平を追い詰めるとは思わずに。
「待て、待ってくれ!」
足を止めることは出来ない。でも・・・
「待てって言っているだろうが湊おぉ!」
何かが倒れる音がした。
慌てて周平の方に振り向く。
「何がごめんなさいだ」
地面に四つん這いで
「何がいちゃいけないんだ」
治っていない体は痛みを与えているはずなのに
「二度と俺に関わらないだと」
周平は這いずって
「俺の為なんてどうでもいいんだよ。俺が湊の傍にいたいんだ。それを止めるのだけは止めてくれ!」
私に向かっていた。
ゆっくりゆっくりと亀の歩みよりも遅く。
痛みのせいか涙はボロボロに出て、鼻水も出ている。
「悪い、これ以上は無理。そっちから来てくれ」
「うん、うんっ!」
私は駆け寄る。
周平が這った距離はちょうど半分、私も半分だ。
腰を落として上半身をまっすぐにした周平に抱きつく。
「ごめん、ごめんなさい!」
「泣くぐらいなら、関わらないとか言うなよ」
「だって、そうでもしないと周平が無理して死んじゃう」
「でもな、まだまだ足りないんだよ。お前と釣り合う男になるには」
「無理する周平なんか死んじゃえ!私は平凡な周平がいいのっ!」
「無茶苦茶なこと言ってるぞ。そうか平凡な俺がいいのか」
「私に釣り合うなんてどうでもいい。私を受け入れてくれる周平がいい」
「そうか」
周平は優しく背中をポンポンと叩いてくれた。
しばらくして周平ママとなぜか友人君がやって来て、ニヤニヤ笑いながら周平を病室へ運んでいった。
その後は周平と退院までにいろいろと話した。
周平は私に釣り合う男になりたかったこと、私は周平という存在に釣り合う女性になりたかったこと。
話し合えば簡単に解決できたのに遠回りしてしまった。
周平は無茶な努力は止めてくれた。私の方は習慣なものだから止めれないことを周平に伝えると、無理して止めなくてもいいと言われた。
他にもいろんなことを話した。
ずっと一緒だったのに話していないことは多かった。
一度、壊れかけて噛み合わなくなった私達の歯車は歪でガタガタだけど、もう一度周り始めた。
今日は周平が退院する日だ。
外はすでに夏になっている。
いろいろあってざんばらになっていた髪はショートにした。
周平に似合っていると言われたのでしばらくはこのままにしておく。
「準備できた?」
「母さんが殆ど持って帰ってくれたから、あとは手荷物分」
病室に入ると周平は荷物をほとんどまとめ終わっていた。
「うし、これで終わり」
私は窓際で待っていた。
「それじゃ行こうか」
「あーちょっと待ってくれ湊」
廊下に出ようとすると、周平に呼び止められる。
「なに?」
周平はあー、うー、と変な声を出したあと、真面目な顔になった。
「湊が好きだ。付き合ってくれ」
まだまだ私は彼の事がわかっていなかったようだ。
返事?もちろん一つしかない。
「私も周平が好きです。付き合ってください」
筆者「ああ!満足です!」
雨乞いフィーバータイム2のときは暑さにやられてたのよ・・・(;´Д`)
ーーーーーーー
周平の湊への愛は物凄く重いです。
その事を唯一理解しているのは友人です。だから壊れるまで努力した周平を止めませんでした。死にかけたのは予想外。
周平が入院しているときに精神を欠いていた湊をあわせるのはヤバいと感じて、穂高両親に許可を取って、病院に行こうとする湊を友人はほぼ毎日、止めていました。前話でケガをしていたのはそのせいです。
チートの湊を止めるのはかなり苦労したようです。
湊がショートになったのはこの時に髪を自分で切ったから。
まだまだ続くよ!今回のは過去編だもの(≧∇≦)
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