第16話カレーを食べながらの雑談


 湊が着替えている間に、昼食を作り終えようか。


 小さめの鍋に水を張って沸かし始める。

コンソメを入れておく。


 圧力鍋の中は程よく煮詰まっている。

 浮いた油をお玉で取り除き、ヘラで玉ねぎを潰していく、形が残っているのは微妙な感じになる。

 次に買ってきた中辛のルウを入れる。

 とろみが付いたところで味見をした。


「うーむ、微妙だ」


 何かが足りない。コクかな。

いつも有名どころのカレールウをその時安いのを買うので、この時点では味が定まらないのだ。

 カレー粉、ウスターソース、、ケチャップ、醤油を目分量で入れる。ここら辺は勘でしかない。色が微妙に明るくなったな、コーヒーも入れるか。


 もう一度、味見をするとそれなりの味になった。たまに修正不可能にまでなるときがあるが、食べれないことはないのでその時は冷凍保存してこっそり一人で食べる。


 ちょうど小鍋が沸騰したので卵を溶いて細く落としていく。うん、ふんわりに出来上がた卵入りコンソメスープができた。


 更に炊きあがったご飯を盛る。言い忘れていたが炊飯するときにサラダ油を少し入れている、それだけで米が立ち、艶もでるし、べたつかない。

 カレーを掛けるのは最後だ。


 冷蔵庫からサラダを取り出して盛り付ける。ドレッシングはシソ、ゴマ、和風ドレだ。コンソメスープは乾燥パセリを散らす。

 

「ん~いい匂い。飲み物出そうか?」


 テーブルに並べていると私服に着替えた湊が来た。


「たのむ。俺はウーロン茶で。あと福神漬けとらっきょうも」

「了解」


 湊が来たのでカレーを掛ける。そう上に溶けるチーズを掛けて完成だ。


「ほれチーズトマトカレーにサラダとコンソメスープ付きだ」


 先にテーブルに着いてた湊の前に置く。


「ああ、これこれ。友達と食べに行くと少なくて困るんだよね」


 湊のカレーは大盛りにした俺のカレーと変わらない。

湊は男の俺と普段から同じくらい食べる。なのにスタイルはいい。

 本人はちゃんと運動して筋肉をつければ食べても太らないと言っているが、湊の食生活を少し担っている俺から見れば、質量保存の法則を無視していると思っている。


「「いただきます」」


 俺が着席すると、二人で食材に感謝する。

 その後は福神漬けやらっきょうを取って食べ始める。


「今日のカレーは少し濃ゆいね」

「んー煮詰め過ぎたかな?ルウを少なくしたほうがよかったか」

「いやいや、お米がいっぱい食べれるからこのままでいいよ」


 最初は料理の批評から入る。

 大雑把な男料理でも味を評価してもらわないと、相手の好みがわからないからな。


「で、学校の方はどうだった」


 俺の方から聞いてみる。朝からあれだけのことがあったのだ、湊のクラスは騒がしかっただろう。


「まあいろいろあったよ。一つは鳩山が担任から外された」


 まあ当然だろうな、あれは問題を起こすタイプだ。湊の担任のままなら確実にぶつかり合っていただろう。


「生徒指導主任も外されたみたいだよ。問題行動も生徒に厳しく指導したためでうやむやにしてたみたい。生徒会長が嬉しそうに話してくれた」

「生徒会長からって、どんだけ生徒に恨まれてんだよ」

「苦情がかなりきてたらしいんだけど、教頭がかばって有耶無耶にされたって言ってた。どこにでも派閥争いってあるんだね」


 サラダを突く湊。


 湊が生徒会長に聞いた話だと教師は校長派と教頭派にわかれるらしい。校長派は生徒の自主性を重んじる主義で、教頭派は成績優先主義だそうだ。


 鳩山は最初はそれなりに優秀だったらしく、生徒の成績をかなり上げたようだ。その功績に目をつけて、教頭が自分の派閥に入れて生徒指導主任に就け、自分の手下にしようとした。

 だが、自分の行動は正しいと思い込んでいるような男がまともに操れるわけがなかった。暴走した鳩山は教頭に尻ぬぐいさせてやりたい放題の指導を始めたらしい。

 校長も教頭が隠蔽していたので決定的証拠がでずに手をこまねいたようだ。


「これは私の推測でしかないけど」


 湊はスプーン顔の前に立てる。

 お行儀が悪いぞ。


「鳩山が私のクラスの担任になったのは、校長先生の罠だったんじゃないかなと思ってる」

「罠?」

「うん、私のクラスは成績優秀な生徒が集まってるんだけど、絶対に鳩山の奴なら調子に乗ってクラスを好きなようにするために支配しようとするでしょ」

「あの性格ならするだろうな」

「でもね昔なら知らず、今はネットと情報の社会でしょ。優秀な生徒が大人しく支配されるわけないじゃない。ただの一担任に」


 ああ、それはそうだ。今はスマホという簡単に動画を撮影出来てネットにさらすことが出来る。さらさなくても証拠として確実に残る。あとは生徒会か校長にでも持っていけば終わりだ。


「いままで証拠を残そうとした奴はいなかったのか?」

「今までは指導室で一対一でスマホとかを没収したうえで指導?してたらしいよ」


 本当に最悪な奴だな。


「今まで担任をしたことがなかったみたい。あんな性格じゃ生徒を任せられないよね」

「それで湊のクラス担任になって調子に乗った発言でもして敵認定されたんだな」

「ソンナコトナイデスヨ」


 目が泳ぐ湊。

 湊がいなかったらもう少し担任をしていたかもしれないな。


「あと逆恨みで授業がまともに出来るかわからないから一年の教科担当も外されて、二年の方の先生と交代された」

「うわぁ。自業自得だけど二年生に被害がいくんじゃないか」


 湊がニヤーと笑う。


「散々暴君してたある男が権力を失うどころか問題ありで監視付きになったのが、今まで不満を抱えまくっていた民衆の前に裸で出されたらどうなると思う?」

「考えたくもないな・・・」


 地獄だ。鳩山はいつ辞めるのかでかけ事が出来るんじゃないか。


「この話はこれまで。あとは私が生徒会に勧誘されたぐらいかな。少しは遊びたいから保留にしてもらったけど」

「お前のクラスは最初から波乱万丈だな。俺のクラスなんて馬鹿が馬鹿やって梅ちゃん先生が可愛いマスコットぐらいしかないぞ」

「うんうん、十分に周平のクラスもおかしいよ。全然説明になってないし。教室に入ったところから話して」


 そうかな?しょうがない一から話すか。


「周平は自分のこと平凡平凡と言ってるけど、正気度は狂ってるよね・・・」


 頭を抱える湊。うーん、湊と友人に付き合ってたら普通の人の普通がわからなくなったことは秘密にしておこう。


「それで気絶から復帰した梅ちゃん先生に友人と一緒に正座で説教されてな。プリプリと怒る梅ちゃん先生は可愛かったなぁ」

「意識飛ばさないで周平。周平の中で梅ちゃん先生がマスコット枠なのはわかったから」


 そうか?


「で、罰として副委員長に任命された」

「次は話が飛んでるよ」

「罰はまあ建前だったと思う。たぶん生徒会に確実に入る湊への対応のために任命されたのかな」

「あちゃー私のせいかごめんね」

「いいよいいよ。どうせ帰宅部だったんだから」


 湊が帰る時間まで図書室ですごそうと思っていたのだ。人様の役に立つならそっちのほうがいい。


「周平が副委員長なら委員長は友人君?」

「あいつが委員長になったら一月後には俺のクラスは魔界になるぞ」


 なんて恐ろしいこと言うんだ。


「委員長は何故か満場一致で、おさげ眼鏡子の坪川眞子さんになった」


 ピシリと空気が流れるのが停止した。


「ふーん、委員長は女の子なんだね」


 あ、やばい。嫉妬の日照り神様が降臨する。このままだと坪川さんが太陽に焼かれてしまう。


「まて湊、お前の考えているようなことは絶対にない」

「ふーん」

「なぜなら坪川さんは腐の側の人だ」

「ふー、え?腐の側の人」


 日照り神様の降臨が止まる。


「ああ。俺と友人が正座で苦しんでいる姿をみて嬉々としてノートに何かを書き込んでいた。俺は素材対象であり。恋愛対象ではない」


 やはり朝の湊の言葉に反応したのは間違いなかったようだ。書くのはいいけど、絶対に見せないで。友人を殺さないといけなくなっちゃう。


「・・・完全には納得してないけどわかった」


 ふてくされているが坪川さんは嫉妬対象からは外れたようだ。


「その坪川さんは胸大きい?」

「はい?」

「大きいか聞いてるの」


 しまった!もう一つ地雷が残っていた。

 湊は確かに美人だ。スレンダー美人なのである。

 だから胸が少し慎ましい。


「いやまあ、なかなかのものお持ちでした」


 嘘はつけない。後で絶対にバレるからだ。


「ふーん、なかなかねー」


 ああ、今日はこれからゆっくり出来るかと思っていたのに、湊を慰めるのは疲れるのよ。


ーーーーーーー



「私の胸は平均より上です!」

「うんうんあるよねー」

「周平も平均より上です」

「何がっ!?」

最近あとがきがお下品。



鳩山はこれで暫くは退場ー♪

おかしいところがあるでしょうが嫌な奴を書くのがこんなにはかどらないとは思わなかった(;´д`)

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