2.

 夏休み目前の夜。蓮は、兄の部屋にいた。母が定期的に掃除している他は、誰も出入りしないから、何だか部屋が死んでいるように思えた。兄の死を受け入れたわけではないが、自分が一番、兄の死のダメージが少ないだろうと思っていた。だから、遺品の整理なんかも、率先してやった。憔悴しきった母を見ていられなかった。

 兄の思い出に浸りに来たのではない。

 水無月との関わりについて、何かヒントがあるかもしれないと、一縷の望みをかけてやってきたのだ。もちろん、水無月の関わった事件の内容は知ることはできないだろうが、一緒に映った写真とか、そんなものでも残っていればと思ったのだ。メッセンジャーの履歴なんかは全部消されているし、蓮もそこを見る気はなかった。

 スマホに残っていた写真をパソコンに映し出し、一つ一つ確認していくことにした。何百枚どころか、何千枚とある写真も、証拠品となるようなものは残っていないはずだ。だが、何かあれば、と蓮はわずかばかりの希望にかけてみることにしたのだった。

「いや、まあ、あるわけないんだけどさ……」

 五百枚ほど確認したところで、蓮は諦め、部屋の床に横になった。部屋の床はひんやりと気持ちいい。

 あるわけない。わかっている。だが、兄に聞きたかったのだ。

 水無月って、何があったんだ?

 何であんな投げやりなのか。

 対岸にいるみたいなあの遠さは、何なんだ。

 何であいつは、自分の容姿が嫌いなんだ。

 そういうことを全部、兄にぶつけてしまいたかった。だが、死人は何も語らない。

 死人は、還らない。そんなことは、わかっているんだ。でも、あれは、蓮の理解を越えていた。

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