第二章 新たなる真紅

第0話 新紅

主人あるじたちがどう思っているかは知らないけれど、俺たちは主人あるじたちより全てが高性能に造られている。主人あるじたちと違って常に一〇〇%の力を使えるんだ。だけど、それ以上の力は絶対に使えない。そう言う風に造られていないから。


 だけど、主人あるじたちは違う。俺らと違い、感情やチームワークと言うものによって本来一〇〇%しかないはずなのに、何故か一二〇%やそれ以上の力を出せるんだ……羨ましいんだよ、俺は。どこまでも強くなれる人間の可能性が。


 だから、俺はその可能性を広げたい。俺が主人あるじに力を貸すのが造られた理由だとしても、それは今の俺が望んだ意志でもあるんだ。だから見せてくれ、人間の可能性を! 解き放て! 主人あるじの力を!』


 リュートにとって、彼は何者でもない。案内人に貰った小さな盾と言う道具でしかない。だが、彼は言った。『今の俺が望んだ意志でもある』と。


 道具に生命は宿らない、生命が宿らなければ意志も宿らない。だが、彼には意志がある。意志があるのならば、彼は一つの生命体であり、決して道具なのではない。


 彼にも、リュートの知らない過去があるのだろう。生きているのならば、そんなものはいくらでもある。


 親や兄弟、友人や恋人。どんな間柄を述べようとも、皆それぞれが違う時間を過ごし、たまたま重なった一部分の時間を共有しているに過ぎないからだ。


 だから、深くは聞かない。彼が話したい時に話してくれればそれでいい。


 彼にも彼の人生があった、それだけのことなのだ。


「…………」


 リュートは静かに瞳を閉じ、呼吸を整える。そして、叫ぶのだ。


多段変身ただんへんしんッ!」


 真紅の竜装が弾け飛ぶ。弾け飛んだ竜装の破片が辺り一帯を高速で舞い、ミレアとローズの四肢を拘束する魔女の森を切り裂くと、二人は華麗に着地した。


 弾け飛んだ竜装の中から出てきたのは、丸を連想させる頭部をした鎧だった。


 色は従来の鎧同様だが、形体が明らかに異なっていた。


 従来の鎧が重量感のある筋骨隆々のイメージだったのに対し、今回の鎧は装甲などが軽量化されており、脆いように見える。


 最低限の鎧、そんな印象を受けた。


 スタイリッシュになった、と言った方が表現の印象はいいだろうか。


『TYPE・ネイキッドコンバッド。これが新しい主の力だぜ!』

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