既原春介4
太陽が真上に昇りきった頃、僕と椿さんは再び千代田ビルに来ていた。太陽を飲み込むが如く佇んでいる摩天楼は、昨日に比べて不気味さは無いものの依然として圧迫的な存在感を放っている。
「では手はず通りに頼むよ」
そう言うと椿さんは一人でビルに入って行ってしまった。
椿さんの立てた計画は意外にも単純なものだった。
雪音はこのビルの地下駐車場に囚われているだろうというのが椿さんの推測だ。地下駐車場への入り口はエレベーターしかなく、一人で乗り込めば邪魔が入る。そこで椿さんは自分が囮になるからと雪音を助ける役目を僕に振り当てた。
あのビルの保有者である救保蓮二とは少なからず因縁があるからあいつは必ず私の方に来る、と椿さんは確信をもってそう言っていた。
僕は椿さんが入ってから五分後にあのビルに入ることになっている。今は午前七時五十五分。入る頃には丁度八時だ。
気を抜けば直ぐにでも動いてしまう脚を必死に抑えながら、一秒ずつ進んでいく時計の針を睨んだ。
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