第48話 JK、部活する

 アリアは3ヶ月の訓練で学校に戻れるまで回復した。しかし友達は1学年上になり同学年に友達はいなかった。


「お母さん、私、帰宅部?」


「うんん。剣道をしてたのよ!」


「剣道?」


「一生懸命やってたわ」


「お父さんは?」


「野球」


「お母さんは?」


「バレーボール」


「ふ~ん。剣道か~」


 次の日、剣道部に入部届を出した。


「なんだこれは?」


 顧問の弓先生が答えた。


「いや、部活動に入る時には提出しないといけないと聞いたので…」


「おまえはずっと剣道部だ。あまり無理をするな。おい、みんな、アリアが戻って来たぞ!」


「ワ~イワ~イ」


「アリア、御免ね。そっとしとけて言われてたから」


「うんん。私こそみんなのこと覚えてないの。御免ね。」


「アリアはゼロからのスタートね!」


「うん。宜しくお願いします」


 アリアの文武両道の高校生活が始まった。



「すべてをまったく思い出せない。剣道の動きが体に染みついているのかを確認してみたい」


 そんな思いがあった。


 しかし、答えはノーであった。まったくの素人であった。それでもよかった。もういい加減自分探しに飽き飽きしてたから……


 新しい自分、新しい人生を生きて行こう。


 座り方から摺り足を学び、竹刀を構えて振り下ろす基本中の基本から練習した。時は8月で汗が噴き出した。


 休憩中、水道で顔を洗っていた。


「アリア、調子はどうだ」


「あ、森田先輩。お疲れ様です。調子いいです」


「森田でいいぞ。もともと同学年だし」


「いや、そんなわけには……」


「それにもとつきあっていたんだし……」


「え?!え?!」


「ゼロからのスタートでいくぞ」


「あ、はい」


 驚いた。


 私、好きな人いたんだ。


 思い出せないなんて悲しすぎる。


 思い出せないなんて申し訳なさすぎる。


 やはりすべてゼロとはいかない。


 アリアはゼロの上に思いを重ねるように毎日を過ごした。こうあるべき的考えを捨てた。なるようになれって思いでメンを打ち込んだ。


 うちの高校は剣道の強豪校であった。各中学校のエース級が集結していた。女子も同様であった。名を玉竜高校と言った。


 県大会、全国大会で名前を売って特待生として大学に進学するものが多かった。大学卒業後は警察官、教師になった。


 アリアはどんな思いで自分が剣道をしていたのか自問していた。やはりこれやっちゃう!

「教師?ないない」


「警察官?ないない」


「剣道道場で教える……なんかいい」


 練習日 月・水・金


 練習時間 17:00~18:30


 大人部門 19:00~21:00

 

 そして小さい子を引き連れて大会に行くんだ。大会は毎週のようにあるから毎週、運動会があるみたいなもんだ。かわいいだろうな。



「初めての夢みつけた!」



 




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