第32話 池で釣りをする

 池まではの道中で……ルータス


「アリア、きつくないか?」


「大丈夫。でも以外と遠かったね!」


「本当、初めてきた」


「私も。ウチらの国も結構広いんだね!」


「うん」


 この時、ルータスはある思いを秘めていた。すべてが壊れる何かを。


「ルータス、お弁当、重くない?」


「重い」


「え?!」


「自分に正直に生きることにしたんだ」


「え?!じゃ、お弁当…」


「うそだよ」


「え?!」


「大丈夫だよ。さてどこに陣どるか?」


「ルータス、あそこ、木陰の下?」


「本当だね。アリアが寝るのにピッタリだ」


「あのね。さかなを取りに来たの。今晩のおかず」


「わ~がんばらないとおかずなしだ~」


「私、ウナギ狙ってます」


「え~、それ以上のものはないよ。鯉がくれば上出来だ」


「マックス、早く釣る準備して」


「待ってよ、僕も2回目なんだよ」


「急げ」


「待て」


「急げ」


「よーし、出来たぞ!」


「あれ?ルータス?なんかついてるわ?」


「あ?!カニだ。カニさんが釣れた!」


「やった、ナイス、ルータス」


「よーし、じゃんじゃん釣ろう!」


「そうしましょう!」




 暫くしてルータスは竿を置き、池の傍の空き地の広さを歩数で計り始めた。


「栽培には充分な広さだ」


「ルータス、何をしているの?」


「いや、荒れた土地だなと思ってね!」


「今日は休日よ。仕事のことは忘れて!」


「そうだね。釣りに集中するよ!」


「そうよ。今のままだとカニさんだけよ!」


「アハハ、おにぎりだけでも充分だけどね」


 ルータスはそれから先も釣りに集中することはなかった。次の収穫までにはいつまでに開墾すればいいかなどを考え込んでいた。


「ルータス?浮き沈んでる?」


「あ~、引いてる!」


「頑張って」


「引きが強い、鯉かもしれない、一尺はありそうだ!」


「鯉こく、鯉こく、鯉こく」


「強い、重い」


「あらい、あらい、あらい」


「よーし、どうだ!」


「おいーす、鯉だ、一尺はあるぞ!」


「やった、ルータス。立派なおかずだ」


「うれしいよ、おかずが出来た!」


 これから釣果はなく、ふたりで鯉とカニさんを分け合って夕食にした。


 この日を境に、ルータスは今までよりも早く仕事にいくようになった。帰りは今まで通りアリアが迎えに来た。


 釣りはルータスの趣味にはならなかった。ただ週に2~3度、夜、友人宅へ行くようになった。アリアにはポーカーをやってると伝えていた。


 でも実際はバカラ賭博をやっており莫大なお金が動いていた。ルータスはお金を必要としておりそのために悪事を企てていた。


 ルータスの趣味は残念ながら気分転換出来るものではなく、アリアさえも害を及ぼす危険な依存症であった。


 

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