第14話 鶴川談義

 

 鶴川は喧騒のなかで静かに話し始めた。


 吸収木の存在は国内外、周知の事実である。


 当然、奴国人も知っている。


 吸収木は全部で108本、存在すると言われ


ている。その108本は無作為に位置している


わけではない。バランスを互いに取り合って


いる。もし1本がなくなれば、なくなった木


が担当していたエリアを他の木がカバーし全


体のバランスを保つと言われている。


 しかし元のバランスを形成するには何十年


とかかるため、108本の存在は多過ぎる数で


ではない。


 吸収木の平均樹齢は300年。中には1000年


超えるものもある。社を持つ森に存在するこ


とが多い。また、吸収木ではなくても群集す


る森ではそれに匹敵する力を持つものもある


と聞く。


 これだけ話しただけでも吸収木の不可思議


さと希少価値を理解していただけると思う。


 ここからが本題で先に奴国は輸入国である


と話した。


 奴国は吸収木を使って輸出国になることを


企んでいる。企んでいるとはちょっと言葉が


悪いな。求めている人にお分けするわけだか


らな。問題は対価なんだよ。


 吸収木、準吸収木の種子を売買する計画な


んだが大戦前の産油国に匹敵するかそれ以上


を目論んでいる。


 種子が金以上の価値を持つことになる。奴


国も需要予測がつかないから値をつけられな


いでいる。


 過去、石炭、石油、天然ガス等比べてもど


れよりも生死に直結しているから仕方ない。


 それに内密に同盟国との貿易は始まってい


る。


我が社も加担したいが国営の企業が独占販売


している。


 奴国は非核国であるため防衛の為、核国家


である東の国の1地区として存在する。それ


は東の国の最大貿易国になるための戦略でも


あるのだ。



 産油国から油田を盗むことはできない。


 同様に吸収木を盗むこともできないんだ。



───────────────────


 鶴川はここまで話し2杯目のアイスコーヒーを一気に飲み干した。



マックス「なるほどね。ビジネスだったのか!聖戦のつもりでいたよ」


鶴川「金だよ、核も戦争も吸収木も」


マックス「吸収木を採取するつもりでいたが大変なことをするところだった。バランスが崩れ種子が少なくなるところだった」


鶴川「吸収木は厳重に警護されている。採取なんて、とてもとても……」


マックス「鶴川さん、為になる話しでした。ありがとうございました。これ金貨です」


鶴川「確かに頂戴いたしました。これからどうするのですか?」


マックス「仲間と相談します。母国にも連絡しないといけないし……」


鶴川「吸収木はまだ解っていない部分がたくさんありますし、神木として信仰の対象にもなっています。せっかくこんな東の果てまでこられたのですから見て行ってください」


マックス「え?!見れるのですか?」


鶴川「もちろん。あそこに見える山、春日山というのですが頂上に春日大社があります。その脇に立ってますよ。警備は厳しくなっていると思いますが……」


マックス「そうなんですね!行きます。ありがとうございました!」


 一行はマックを出た。アリアとモグはビッグマックでお腹いっぱいになり、その後爆睡してまだ眠そうであった。鶴川はその足でにやにやしながら金貨を持って質屋へと向かった。


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