第4話
それから僕らは二日間、そのドラゴンの面倒を見た。本当だったらもう大丈夫ってことで、さっさとギルドに戻って換金と行きたいところだけど、そもそもドラゴンの素材は高く売れる。だからあの三人のような馬鹿が現れる可能性が高いと言うことで、そういうことになったのだ。もちろん、ギルドにはすでに報告済みである。
二日経って、街に戻って僕はあることに気がついた。
「そういえばドラゴンの首にかかった懸賞だったと思うけど、首なくてもいいのかよ」
僕はユージンに訊く。
ユージンは飄々とした口調で答えた。
「別にあいつが邪魔だったから懸賞がかかっただけだろ?だいたいの人間はドラゴンなんてもんは言葉の通じない恐ろしいモンスターだって思ってるからな。穏便にどいてもらおうっていう頭がないだけだよ。まあ、ドラゴンの部位が高く売れるからそれがほしいってのもあるだろうが、今回の依頼主はそういうわけでもないっぽいしな。まあ、問題はねえだろ。それに--」
「それに?」
「いいもん貰ったんだよ」
ユージンがポッケから丸い水晶のようなものを取り出した。くるりと掌で回す。
「なんだよ、それ」
「あ?お前それも知らねえのかよ。龍玉だよ龍玉。売ったら一生食うに困らねえ額の大金が手に入るぜ!」
い、いつのまにそんなものを……。
「まあ、売らねえけどな」と笑うユージン。
そう言っている間にも僕らはギルドへ辿り着いた。
換金所のセクシーな格好をしたお姉さんがユージンに笑いかけた。
「おつかれさん。首は持ってきたのかい?」
「いや、最初の約束どおりちゃんと退けてきたぜ?」
「はあ、そうかい。まあ別に最初からあんたに期待してないよ」
お姉さんはめんどくさそうに小袋をどんとユージンの目の前に投げた。どう見たって3,000,000バームには足りない大きさ。
「報酬だよ。首がなかったら10,000バームが限界だね」
「ちっ、しけてんなあ」
「全く、伝説の千年龍殺しが聞いて呆れるよ」
「うるせえな。昔の話だろうがよ」
二人のやりとりを聞いている僕。
今、なにかとんでもない話を聞いたような気がする。いやいやいや、これは流石に僕の聞き間違いだろう。幻聴かもしれない。
この馬鹿がまさかあの千年龍殺し?
いや、まさか有り得ない。
呆然と見る僕の肩をユージンが抱いた。
「なんだ、間抜けヅラ。俺の伝説聞いてビビっちまった?」
「う、うるせえな、そんなんじゃねえよ」
僕は慌てる。
ユージンは「そうだよな、そうだよな」と納得するようにうなづいて僕に言った。
「まあ、これから散々俺の腕前を見せられると思うからよ。まあ、楽しみにしとけよな」
おい、ちょっと待て。なんだ、そのお前と僕とでパーティを組むみたいな口調は。
「おい!僕は……!」
反論しかけた僕の言葉をユージンが遮る。
「まあ小金も入ったことだし、早く飲みに行こうぜ!」
僕は気づいた。
これはきっと僕がなんと言っても無駄な奴だ。なんで僕がこの馬鹿とパーティを組まなければならないのか。しかし現実は厳しいもの。千年龍殺し、もっとかっこいい奴だと思ってたのに。
僕はガックリとうなだれてユージンの後をトボトボついて行くしかなかった。
千年龍の龍殺し 神澤直子 @kena0928
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