○_015 敵性生物との闘い 03

 

 目の前で気絶している違法技術を含有した人間、この惑星ほし在来人種ネイティブヒューマン


 もし彼らが入植者の縁者、もしくは生産された人間だとしても、独自文明なんか獲得していた日には、目も当てられない。


 現状を見るに、生ぬるい惑星開発協定なんかではなく「新文明・文化の発見後の行動および接触に関する原則(新文明原則)」が適用される可能性が高い。


 まさか「地球人類に由来しない未知知性体との遭遇に関する基本原則(未知遭遇原則)」が適用される事案だとは思いたくはないが、可能性を零とするのは浅はかだ。


 どちらも適用された例など聞いたこともないが、いずれも国家AIどもの起案による。奴らの機嫌を損ねたら今後の人生がどうなることか予想もつかない。



<じゃあー、どうすんですかー>



 えらくぞんざいな態度をとるPAIピーエーアイにイラつきを覚えるが、確かに迫る脅威への対処は必要だ。

 


「接近中のあれはなんだ? 惑星揚陸用のドローンか?」


<情弱はこれだから。コハルが地球オタクなことに感謝してほしいですね。あれはかつて地球で飼育されていたウマ、に酷似しています>


「ウマ?」



 監視システムからの実感に加え、PAIによりサポートされた俺の肉眼にもその姿が鮮明に見えてきた。


 およそ1キロメートル先、船外作業用の人型ドローンにも似た恰好の人間と、それを載せている4足歩行のモノ。多脚戦闘車両などとは違い、器用に脚をばたつかせて移動しているようだ。その姿はビーフキャトルに似ていなくもない。


 ビーフキャトルは食用タンパク源として宇宙船内で育てられる数少ない人類外生物のひとつだ。味は絶品らしいが生憎あいにく口にするどころか実物を見たこともない。そもそも一個体として成立している生物を食べるという行為に抵抗がある。



<ウマは地球に生息していた四足歩行の哺乳類で、古くは人類の移動手段および労働力、まれに食用として利用されていた――>


「ビーフキャトル、みたいなもんか?」


<生物種の区分は置いとくとして、地球文明における用途は似てるかもですね。ところで敵機動部隊、接触まで130秒の位置に来ちゃってますけど?>


「ちなみにコハルに対処を任せたら?」


<はい宿主様、ご安心を>



 と言ったコハルの声は、先ほどまでの抑揚の大きいおちゃらけた声から打って変わり、落ち着きのあるものになっている。



<半径5キロメートル圏内にある敵性存在を即時殲滅いたします>



 コイツ、口調が変わりやがった。



「俺が言ってるのは10機のドローンのことだけれども?」



<結局、事を構えるのであれば、こちらの情報を持ち帰られる危険性は可能な限り排除すべきです。幸運にも電磁波通信に準ずる技術は見受けられません。

 地平線可視範囲内、すなわち数キロ圏内で情報を知りうる存在を潜在敵性も含め殲滅するのが最も効率がよいかと……ハルカゼより提案を受信。コハル承認。万全を期すため観測された生命体の生存域、半径20キロメートル圏内の殲滅に上方修正。

 ハルカゼ各種兵装オンライン、兵装部を500メートル上空に収束完了、臨戦態勢にて待機中……ウェポンズレディ。各種兵装、完全制御フルコントロール

 指向性エネルギー兵器、各種物理弾頭および反応弾頭については試射によりこの大気圏内での威力評価済み、いずれの兵器も現環境下で遺憾なく効力発揮できます。ご下命あればいつでも即時実行いたします。

 宿主様ご命令を>




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