○_007 居住可能惑星《ハピタブル》 04
「っしゃあ! ざまぁ、国家AIども! 仲裁官なんざ終わりだ終わり! 労働からの完全開放! 俺様、人生勝ち組! ハピタブル発見で俺の人生アガリだぜ! あとはのんびり末代まで豪遊生活だ。俺の子孫どもがうらやましいなぁ、おい!」
<ですね、ですね。コハルものんびり体感覚を分析しながら余生を過ごしたいです。ああ、でも刺激ある余生を送ってくださいよ、ビリー>
「おうおう、刺激ある人生は俺様の専売特許だ任せとけ。じゃあ、まずはアニーにプロポーズだな。前回しくじったままだし」
<まったくコハルというものがありながら。まだやるんですか? 二桁いっちゃいましたよ? そもそも婚姻契約だなんて古臭い>
「当たり前だ、アニーは俺の専属嫁!」
<はあ。アニーが不憫でなりません>
「で、ハルカゼの状況は?」
<ハルカゼの艦体は正常です。まだ座標にコンマゼロ以下の精度が出せませんので、ビリーにはつないでません。ちょうどこの惑星の裏側あたりを航行中です、もうちょっとお待ちを。繋がったら、もう少し詳しく調査してみましょう>
コハルに肯定の意を返す。
しかしこうして、防護服もなく宇宙船内とほぼ同じ格好で惑星上に立っている思うと、なんだか不思議な気分だ。
「うーむ。これが現実だと思うと、何だか急に無味無臭に感じるな。VRやホロと変わりない。もっとなんかこう、大感動するかと思ったが」
<いやいやこれで感動しないとか、ビリーはどんだけ不感症ですか。あ! フィルターかけっぱなしでした!>
「フィルター? ああ」
そういえば確かに、五感に対してフィルターがかけられている。あまりに当たり前のことですっかり忘れていた。
<フィルター、オフります? あたりマエダでオフりますよね! 今の五感大変なことになってますよ! 超感動ものですよ! 処理が追い付いてません! この際、スキンコートも解除しちゃいましょーよ! 超絶きもちーですよ! レッツ!
「お前、テンションおかしいぞ。俺との感覚共有やりたいだけじゃないだろな?」
<コハルは生の神経信号を先に味わってぇ、フィルターかけてるわけですからぁ。この感動をビリーにおすそ分けしたいってだけですよー? ただ、身体への負担は大きいかもですね。生まれてこのかたフィルター切ったことないでしょう?>
「いや、うん……そうだな」
わずかな失意と、それに引きずられて出てきた追憶を打ち切るように、ため息をついて覚悟を決める。
「よし、フィルター切ってくれ。スキンコート、解除」
好奇心には勝てなかった。
この時の俺は知る由もなかった。まさか最悪の結果になろうとは。
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