○_005 居住可能惑星《ハピタブル》 02


「どうした? 優秀なPAIピーエーアイのふりなんかして。なんか悪い知識でも食ったか?」


<はあ?! 私はいつでも優秀です!>


「はいはい。で?」


<コホン。現状についての結論はとりあえず置いといて>


「いやそれ置くなよ」


<ビリーの記憶にある地球関連映像との類似性は>


「許可なく記憶を漁るのマナー違反だぞ」


<もー! 話が進まないィ! すべては宿主保全のためなんです!>


「宿主保全は免罪符にならねえからな?」


<きぃーッ! ビリーがウザい! で! 話続けますが! 地球伝記アースグラフィーと現在進行形で体感中の風景は68.2パーセントの類似性が認められます。惑星改造テラフォーミングの教材を想起するには十分な値ですね。しかしこの五感からの押し寄せる様な複雑かつ複合的な神経信号は……>


「で? これはどこの収監用のホログラムだ?」


<情報が不足しているため回答を保留します>


「なに、猫かぶってんだ。さっさと推論しろよ」


<……いやー、正直わからないことが多すぎで保留したいんですけどー。どこかで収監用AIがニヤニヤしながらモニタしてるかもじゃないですか。『うわ、あいつ星団クラスター級のくせに間違ってやんの』とか噂されたくないですもん>


「それなら『星団クラスター級のくせに碌にサポートできないでやんの、民意アンケートの集計カウントにでも回せば?』って言われんぞ。どうせ監視システム経由で世間様にばれんだし、今更だ」


<アンケート係ですって!? 全力で拒否ですよ拒否! 無味無為無意味の無間地獄! ビリーにそのつらさがわかりますか!>


「そんなの知らんし、どうでもいい」


<ちょっと! それがコハルの宿主の言い草ですか! ハラスメントで訴えますよ!>



 うるさくコハルが抗議し続けるがいつものように耳でもほじって聞き流す。



「しっかし、どこのどいつだ俺様に手を出したのは。仲裁官権限で永久労働監獄にぶちこむぞ」


<宿主様への警告です。今の発言は職権乱用の罪に抵触する恐れが――>


「だぁー、もうやめろよ、その優等生ヅラ」


<ま、そうですね。モニターされて最終的に笑われるのビリーですし。高性能AIコハルを積んでるくせに全然使えない奴って! ぷくく!>


「へいへい。んで? 兵装の状況は?」


<もー、せっかちですねー。さて、コハルの観測時間で192秒前、兵装オンライン状態にあった春季艦隊スプリングスの全艦、および冬季艦隊ウィンターズの補給艦コユキとのリンクが完全途絶。接続試行を繰り返し行っていますが、いまだ応答ありません>


「まじクソやべーじゃねぇか。ハルカゼは?」


<ふっふっふっ、私のハルカゼちゃんは23秒前にオンラインになりました。さすが私! 艦体の位置情報は未取得ですが、状態チェックと同時に周辺の観測を急がせています>


「私のハルカゼ? ハルカゼが無口だからって勝手なこと言ってんじゃねえよ。春季艦隊リッシュンとこのふねだろうが」


<こないだリッシュンにも許可取ったんですぅー、艦隊から正規に外してもらったんですぅー、だから私のハルカゼちゃんなんです!>


「俺の指揮下にゃ変わりねえからな。はぁ、ハルカゼ使えるならどうにかなるか。位置情報がとれ次第、超次元空間の相対座標を俺に重ねろ」



 宇宙戦艦ハルカゼ。


 戦略AI戦艦リッシュンを旗艦とする無人艦隊である春季艦隊スプリングスの先鋒として建造された強襲機動戦艦アサルトシップの一隻。


 小型艦には不相応な超弦遷移機関SSТEによる高機動力に加えコハルによって過剰装備オーバーイクイプドされた重火力兵装群により、局地戦での先制・制圧能力で右に出るものはない。


 俺はハルカゼを常に超次元空間へと配備し、常時兵装として常に傍に置いている。ハルカゼがいればおおよその事態には対処可能だ。


 問題は俺たちが、どこにいるかってことなんだが。



――――――――――――――――――

脚注っぽいの

超弦遷移機関:Superstrings Transition Engine, SSТE


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