○_003 在来人種《ネイティブヒューマン》と外来種《エイリアン》
先制攻撃を仕掛けた斥候5人は、すでに地面に伏している。そのひとつ、倒れた弓の斥候のもとに、草を踏み分け近づく者がいる。
奇妙な恰好をした不審の男だ。男は斥候を見るなり眉をひそめた。
「これ、どうみても人間だよな。入植済みの星なのかよ。あーっ、末代までの豪遊計画が! ちくしょうめ、ぬか喜びさせやがって。なあコハル、ここには誰もいなんじゃなかったか?」
不審の男は悔しそうな表情で、明らかに一人なのだが、誰かに声をかけている。 それに対して、男にだけに聞こえるよう返答があった。
<おかしーですね。確かに自然現象以外での信号波の発生は超次元空間含めて確認できていないのですが。入植後、完全撤退、もしくは文明を放棄したのでしょーか>
この場に、いくら聴覚に優れた者がいたとしてもその声は聞こえない。なぜなら、その声は、男の内にのみ聞こえる声なのだから。
「文明放棄の線は残るか。こんな見たこともない飛翔兵器を使ってるくらいだ」
そう言いながら不審の男は手にある二本の矢を見つめている。
<あれ? このニンゲン? 他の個体も……そうみたいですね>
「どうした」
<遺伝情報に不確定領域とか可変領域がありますよ?>
「は?」
<でも、うーん。なんか違うかなー>
「なんだ歯切れ悪いな」
<何と言いますか、確証はありませんがこれ、
「おいおい、まじかよ。それ、後天的に身体能力やら器質やらを改良する奴だよな? なんで違法技術がこんなところにあるんだよ! くっそ、面倒事の臭いしかしねぇ! よし! 俺は何も見なかった!」
<いやいや無理でしょ、あなたは、あのビリーですよ? “
「知らん、知らん!」
<あーあ、言っちゃった。こんな現状で知らんぷりとか、証拠隠蔽ほう助の適用対象じゃないですかー>
「……ちくしょうめ」
<ではでは! 気分転換でもいかがです? コハルから魅力的な現実逃避のご提案でございます! 敵、機動戦力10機が接近中!
「だまれ! 脳筋戦闘狂! 殲滅なんてもってのほかだ! 俺は仲裁官だ!」
<みんな仲良くWin-Winで! でしたっけ
「うっせ! 俺も当たり前に恥ずかしいんだよ!」
疲れた表情を浮かべる不審の男は深いため息をついていた。
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