4月2日
今、私の目の前には兄さんが寝ている。適当に言いくるめて、睡眠薬を飲ませたのだが、私はそのことに対して全く罪悪感を感じていない。全て兄さんの為だからだ。本当は、もっと別のことをするために低能達を使って用意していた。それをこんなに早く使う羽目になるとは、私も考えていなかった。
これも全て、あの女のせいだ。私の兄さんを汚すだけには飽き足らず、兄さんを私から奪おうとした。兄さんは私のもの、それはどんなことがあろうと変わらない、絶対の理だというに。だが、それよりも兄さんをあいつの手の届かない場所に送る方が先だ。
兄さんを抱き上げて、外に出る。一瞬、兄さんの匂いと温もりが一気に襲ってきて、その場で堪能してしまいそうになったが、我慢した。私は、化物とは違い慎みを持っているからだ。外に待機させていた低能に兄さんを渡す。この低能達は、私の都合のいい手足だ。
この出来損ないは、人間に化けて生活に溶け込む化物。自分一人では存在できず、人間の皮を被ることしか能のない、文句なしの低能だ。この前監視させていたやつは例外的に知能があったが、小娘一人も仕留められない無能だった。やはり、本質的にこいつらは役に立たないのだ。
「兄さんをあそこに運んでください。分かっているとは思いますが、丁重に扱ってくださいね?」
頷く低能と兄さんに細工をする。これがある限り普通の人は、台車に人が載せられていても違和感を感じない。私は、兄さんに軽く口づけをして兄さんを見送った。残ったのは、長い布に包まれたものと、鞄いっぱいに詰まった鉄くずだけだ。荷物持ちくらいには、あの低脳も役に立つ。
「なに、している?」
「あぁ,,,ちょうどいい所に来ましたね」
振り返るとあの女、一上壱菜が包丁をもって立っていた。今から仕留めようと思っていたので、手間が省けた。にこりと笑うと、無表情のまま凶器を突き出してきた。全く、化物には礼儀というものがないのだろうか。
「慶斗を、どこに隠すつもり?」
「隠すだなんて、人聞きが悪い。私はただ、兄さんを害虫から保護してあげるだけです」
「あなたは、どこかおかしい。慶斗を、散々傷つけておきながら、その手を離そうとしない。一体、何を考えているの?」
「おかしいのはそちらでしょう? 人間の振りした化物に言われる筋合いはありません」
「な、んで,,,そのこと,,,」
今まで、ただひたすらに無機質だった表情が、僅かにゆがむ。兄さんの体を、化物に近くするなんて許容できるわけない。今から、それをこいつに分からせてやる。そう考えていると、マンションの一室から若い男が出てきた。彼女は一瞬、そちらを見ると、素早く包丁を隠した。
「そんなことしなくっても大丈夫ですよ。きっと、気にも止めませんから」
「なに言って」
私の横を通り過ぎようとした男の目の前で、ナイフを向ける。普通なら、男は突然の凶行に慌てふためくだろう。しかし、男は端から何も見えていないように私のことを無視した。
「ほら、平気だったでしょう?」
「,,,,,,」
私は、普通の人間だ。だが、人間が到達できないほどの経験と知識により、ある技術を会得した。一つは、その人の魂の色を見る技術。そしてもう一つが、知識の加工だ。魂の色を見るのが経験による賜物であるなら、これは知識の集合によるものなのだろう。
私が知っているもの、理解しているものであるのなら再現することができる。物質であろうと、人の認知機能であろうと、私が知っているものならなんでもだ。この女には、私の認知阻害が効かない。だからこそ、これの異常性に気付けたのだが。
「私は、普段から認知を歪めています。所詮、人は見たいように見るものです。少し、そこを加工してあげればいい。なのに、あなたにはそれが効かなかった」
私は、いつも女性で白い髪を持って生まれる。そうすると、病気だとか呪いだとか言って、囃し立てるのが昔は多かった。そういった面倒ごとを避けるため、普段から私の髪色を的確に認識できないようにしているのだ。なのに、こいつは私の髪をきちんと答えられた。この女には、特殊な感知能力でもあるのだろう。
「誤魔化しが効かないのは厄介です。だから、あなたにはここで死んでもらいます。兄さんに手を出したこと、反省しながらあの世に行ってください」
「,,,私を、殺せると、本気で思ってるの?」
「当たり前です。あの低能たちを何匹か殺したからって、調子に乗らないでください」
低能が置いていったものを手に取る。そこには、武骨な鞘に収まった刀剣があった。流石に職人が作る本物とは言えずとも、それは確かに日本刀だった。それを取り出すと同時に、化物が疾駆する。すかさず、一撃、二撃と刀を振るう。初撃は外したが、二撃目は命中した。首を切り落とすつもりだったのだが、腕で防がれてしまった。
「っ!」
「素晴らしい反射神経です。ですが、それだけですね」
距離を保ちながら、決して隙を見せないようにする。確かに、彼女は優秀だ。先ほど切りつけた腕も、既に治りかけている。しかし、圧倒的に場数と技術が足りない。それでは、低能達は何とかなっても私の相手にはならない。今まで、私が何度死のやり取りをしてきたと思っているのか。すぐさま切り返して、手傷を増やしていく。
「はぁっ,,,あなた、本当に何者?」
「ただの受験生です。あなたみたいな天才と違って、私には努力することしかできませんから」
「私が聞いていた、人物像と、あまり結びつかない。それも、わざと言ってるの?」
「兄さんにはそう見えたでしょうね。自分がどれほど努力しても追いつけない存在,,,本当の私はそんな凄いものではないのに、それに絶望しちゃう兄さんは実に愛らしいです」
「そんなことで、慶斗のことを、傷つけて、楽しんでたって?」
「楽しむと言ったら語弊があります。私は、兄さんの魂がくすんでいくのを見ていただけですよ。白色の魂が、私の手で汚れていくのを,,,」
「それを、楽しむって言うんでしょ!」
体中をずたずたにされても、彼女は全く倒れない。この化物を殺すのは少し、手間がかかりそうだ。防御もせず、突っ込んできた彼女の胸に刀を突きさす。バキッという音がして、刀が折れた。切れ味は最高だが、脆いのはこれの唯一の欠点だ。
「ぐふっ,,,ご自慢の、刀が折れたみたいだけど?」
折れて刺さったままの刀身が、彼女の体から勝手に抜きでる。心臓の当たりを刺したはずなのに、口から血が飛び出るくらいで済むとは、しぶとさは折り紙付きのようだ。
「そうですね。ですが、それくらい対策済みですよ」
後ろに下がって、鞄から鉄を取り出す。鉄といっても、普通の鉄ではないのだがこ、これはこの際どうでもいい。これを好機と見た彼女は、口から血を垂らしながら近づいてくる。
「はいっ,,,修理できました」
「なっ!」
新品同様に元に戻った刀で、彼女の腹部をすれ違いざまに切り裂く。内臓が飛び出てもおかしくないのに、まだ生きている。本当にしぶいとい。
「がはっ,,,普通じゃ,,,ないとは、思ってたけど,,,」
「これ、私の特技なんですよ。材料と知識があれば、それを加工できる。だからほら、私の記憶の中の日本刀をこんな風に、再現できるんです」
加工というのは人間が進化の過程で得た、人間を霊長類の頂点たらしめる技術だ。人は、長い年月で様々なものを加工していった。木を住宅に、鉱物を道具に、多くの材料を加工して歴史を紡いでいく。私は、そんな長い歴史で培ってきた知識をずっと見続けてきた。そうしているうちに、物事の本質というものを私は知った。物にするには、それこそ気の遠くなるような時間がかかったが、私はついに自分だけの技術を手に入れたのだ。
「これで理解できましたか? あなたは、私を殺すことなんてできない。今後、二度と兄さんに近づかないというなら、見逃してあげてもいいですよ」
「冗談,,,でしょ。慶斗のこと、諦めるくらいなら、死んだ方がまし」
まるで、自分だけが兄さんの理解者だと言わんばかりの顔に、血液が沸騰する。私だけが兄さんを知りつくしている。だというのに、まるで彼女は自分だけが彼を理解しているかのようだ。本当に頭にくる。
「っ! お前が兄さんを語るな! 私だけの兄さん,,,それを貶めるのも、輝かせるのも私だけの特権だ! 数日程度で兄さんの何が分かる!」
「たくさん、教えてくれたよ? 慶斗が、自分から全部。彼の劣等感も、後悔も、全部全部知ってる」
それを聞いて、私の中の何かが切れた。私だって、兄さんの本音を聞いてたことはない。兄さんが私をどう思っていたかは検討が付く。だが、大事なのはそれを話していないということだ。私がしてもらってないことを、こいつは兄さんにしてもらった,,,そんなこと、あっていいのか?
「もう、しゃべらなくていいですよ。その減らず口も、憎らしい顔も全て切り刻んであげます」
「それは、こっちのセリフ,,,!」
この女を、生かしておくわけにはいかない。死んでも殺す。死ななくても殺す。この世に生を受けたことを後悔するまで、徹底的に殺す。そのためには、ちょこまかと動くその機動力を潰そう。二人の殺し合いは、どんどんヒートアップしていく。
甲高い音が、平日のお昼に響き渡る。だが、誰もその惨劇を認識することはできない。誰も彼女らを止めることができない中、刀を持つ少女が無傷なのに対し、もう一人はどんどん血に濡れていく。服は血に染まり、息は絶え絶えだ。時間にして数十分、ついにその凶刃が致命傷を作り出す。
「っああああ!!!!!」
「やっと、隙を見せましたか。流石のあなたも、眼を潰されたらすぐには直せないようですね」
本当は両目を潰すつもりだったが、左目だけしかやれなかった。だが、明らかに動きが鈍くなっている。元々感覚で動くような愚か者なのだ。視界を奪ってしまえば、もう彼女に打つ手はない。
「っく,,,眼をやられるのは、これで二回目」
「あら、意外と動けますね。視界を潰せばそれで終わりだと思ってました」
「もう,,,私は、逃げない」
右目も、血で濡れてほとんど見えていないはずなのに、こちらを見据える化物。どうせ、潰した眼もこのまま放置してたら、元通りに治るだろう。そんなことを許す訳はないのだが。
「そうですか。では、さようなら」
「がぁっ,,,!」
手に持った包丁を腕ごと切り落とす。落ちたそれを、すかさず鉄くずに変える。加工の応用だ。これで、化物の武器と視界を奪った。最後は、動けなくしてしまおう。胸に刀を突きさして、壁に打ち付ける。
「ぐっ,,あっ,,,」
「これで、終わりです。あなたのように、才能溢れる人は羨ましいです。私が、ここまで至るのにどれほど血反吐を吐いたと,,,まぁ、今はそんなことどうでも良いです」
「これくらいで,,,私が死ぬとでも?」
「思いません。あなたは、私が知っている誰よりもしぶといです。でも、たとえ死ななくても殺します。少なくとも、私の気が収まるまでは付き合ってもらいます」
ずりずりと、鉄が詰まった鞄を持ってくる。そこから一つ取って、ドライバーのような細い棒状の鉄杭を作る。もちろん、先端は尖っていて、刺さったらとても痛いだろう。それが見えていない彼女も、危険を感じたのか少し息が荒くなる。
「まずは、兄さんを触った手です」
「っあ,,,!」
左手と右手に作ったものを突き刺す。視覚を潰されていて、さぞかし痛いだろう。声を出さないように努めているようだが、隠しきれていない。私の中の嗜虐心が震えるが、今は痛めつけたいわけじゃない。今はこの化物を殺すことが先決だ。
次に、兄さんを見た両目を。次は、兄さんの声を聞いた鼓膜。次は、兄さんを抱きしめた足と胸と腹。どんどん突き刺していく。そのたびに、彼女の口からかみ殺した短い悲鳴が漏れて私の耳を楽しませる。人の大切な人をべたべたと触ったのだ、それだけで万死に値する。
「こんなものですかね,,,少しは反省、してくれましたか?」
「ぅ,,,この、程度?」
全身をくまなく刺し突かれてもなお、こいつから悲壮感や諦めといった雰囲気は微塵もなかった。本当に気に食わない。私の兄さんを汚しておきながら、この態度。まるで、兄さんのため戦っているとでも言いたげな態度が、とても不愉快だ。
「そうですか。そんなに、鉄杭のおかわりが欲しいのですね? でしたら、まだまだ沢山ありますのでぜひ、召し上がってください」
「望む,,,ところ,,,!」
兄さんに触れた部位だけでは足りない。内臓も、神経系も全て突き刺す。足のつま先から、頭のてっぺんまで満遍なく貫いていく。出来上がったオブジェは、数えきれないほど鉄を撃ち込まれ、何故息ができるのか不思議なくらいだ。
「はぁ,,,頭をすりつぶせば死にますかね、これ。気持ち悪いくらい刺さってるのに、まだ生きているなんて、生命力だけは凄いです」
「,,,,,,」
途中から痛みで意識を手放したのか、唯一の楽しみだった汚い音楽はもう鳴らない。血でべたべたになった体は、汚らわしさと気持ち悪さで今すぐ洗い流したいが、我慢だ。そうして、どうやってこれを始末しようか考えていると、スマホの通知音が鳴った。
確認すると、「居そう、官僚」と書かれていた。目的の場所まで兄さんを運んだら、定型文を送れと命令していたのだが、変換すらできないとは。いくら、私の加工で都合のいい手足にできるとはいえ、この能力の低さはどうにか改善しなければならない。
「こんなに時間がかかるとは思いませんでした。こいつらを信用するのは不安ですが、ここまで弱らせたのです。力仕事は、出来損ないの低能達に任せましょうか」
うつろな目をした、年齢も性別もバラバラな一団が現れる。本当は、この化物の死体を遺棄する際の運搬係だったのだが、適当にのこぎりやハンマーを渡せばいかに低能とはいえ、命令を完遂できるだろう。私は、カメラアプリを起動して今しがた作り上げた彼女の写真を何枚か撮る。後で、兄さんに見せてあげよう。
「兄さんが私を待ってます。あなたは、どこか山奥にでも埋められてください。一生、地上に出てこなくていいですからね」
「,,,,,,」
「最後に何か言って欲しかったのですが,,,まぁいいです。では、永遠にさようなら」
低能達に、体をバラバラにしてどこか人目につかない場所に埋めてこいと命令する。彼らは、渡したのこぎりを使って、ぐちゃぐちゃと不快な音を立て始めた。その場で撮影したかったが、兄さんに見せるには刺激が強すぎる、やめておこう。ああ、そうだ。兄さんに会いに行く前に、お風呂に入ろう。こんな血みどろの姿じゃ、兄さんを怖がらせてしまう。
そのまま私は、服を真っ赤に染めたまま街に繰り出した。兄さんの光にあてられた害虫を駆除できた達成感で、着替えもせずにいたのだ。だからといって、私に見向きする人は一人もいな,,,
いや、一人いた。大柄な胡散臭い男性が、口をあんぐりとしながら、こちらを見ている。占いと書かれた看板を立てかけるその男は、どちらかというと詐欺師のようだった。私はその男にゆっくりと近づいて、忠告した。
「今見たことは、心の中にとどめておいてください。私の姿は今、監視カメラに写っても、不自然だと思われないようになってます。警察に行っても、頭がおかしいと思われるだけですので」
「は、はは,,,幽霊とか怪異より先に、血みどろの女の子って,,,冗談キツいよ」
「言っておきますけど、私は人間ですよ? あんな化物達と一緒にしないでください」
「え! そういう存在って、ほんとにいんの!」
「おしゃべりは、ここまでです」
一刻も早く兄さんに会いたい私は、男の喉元にナイフを突きつけた。あの女が好みそうな刃物を使うのは、少し嫌だが今は持ち合わせがこれしかない。後で違うのに変えようと心に誓った。
「へ,,,あ、はい」
「ご理解いただけてなによりです。では、これで」
引きつった顔をしながら、冷や汗を垂らす男の元から去る。体を洗うついでに、兄さんが喜びそうなものを買っていこう。私は、これから始まる兄さんとの生活を妄想しながら、帰路についた。
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じゃりじゃり、ばきばき、ぐちゅぐちゅと音をたてながら、それは黙々と作業する。人間をバラバラにするのは、三人がかりでも時間がかかる。とはいえ、物言わぬ彼らは文句ひとつ言わずに少女を解体していた。異変は、もう少しで右手が切断できそうというところまで来た時だった。
今まで、一切動きを止めていた少女が、右手を解体していた男の顔を掴んだ。男は、引きはがそうともがくが、抵抗空しくそのまま頭を潰された。先ほどまでの少女の身体能力は、決して人の頭蓋骨を粉砕できるのもではなかったというのに。
残った若い女と老人の男は、感情などない。なのに、彼女を襲うことができないどころか、少しづつ後ずさりしている。胸に刺さった刀を、ゆっくり引き抜いて立ち上がった少女は、一本ずつ刺さったままの杭を抜いていった。抜くたびに血がドバドバと溢れ出し、激痛が走る。しかし、そんなことお構いなしにぶちぶちと抜く少女は、どこか笑っていた。
「くふっ,,,アハハ! あぁ,,,この感じ、大嫌いだったのに,,,今は有難くてたまらない!」
目に刺さっていたものを引き抜き、赤い涙のように頬に血が伝う。再生するのに数十分かかるはずの眼は、なぜかすぐに治っていた。その眼は赤く染まり、血を汗のように流しながら少女は笑う。
残って二人の化物は、逃げたくても逃げられない。二人には、その場から立ち去るという思考がそもそもないのだ。恐怖だけは感じつつも、一人は落ちていたハンマーを持って、もう一人はそのままのこぎりを持って少女に突進した。
「殺したい,,,殺したくてたまらない! 上沢慶花も、あなたたちも、慶斗すらも! 全部全部殺してしまいたい!」
ハンマーを振るう老人の一撃を回避すると、無数に散らばった鉄杭を喉元と心臓、頭に一本ずつ打ち込んだ。さきほどまでの少女とは、明らかに動きが違っていた。その動きのまま、もう一人ののこぎりを手で受け止めると、自らで肉を断ち切り始めた。ごりごりといって肉が削れて骨まで到達する。それでもおかまいなしに、少女は自傷を続けた。
「あなたも、そう思うでしょ? だってだって! こんなにも楽しいくて痛いなら! この衝動に身を任せるしかないでしょ!」
残った手で頭を掴んで、そのまま叩きつける。それでもう、女が立ち上がることはなかった。痛みがなくなった少女は、自らの手で手を切り刻む。殺人衝動を抑えるため、自分を傷つけるということが癖になっているのだ。
「あれ,,,もう終わり? こんなんじゃ、足りない,,,」
ぶつぶつと、既に動かなくなった彼らを踏みつぶしながら「足りない」と、つぶやき続ける少女。その姿は、まさに狂気的だった。
「あ、そうか,,,あの女を殺せばいいのかぁ! そうだよねそうだよね! きっとそうすれば、慶斗も褒めてくれるよね!」
にこにこと、辺りを血と臓物で染め上げた少女は、自分の部屋に帰っていった。その眼を狂気に染めながら、かつて嫌悪していた自らの殺人衝動に身をゆだねる。少女にはもう、立った二人だけしか見えていなかった。
「こんな格好で、慶斗に会ったら恥ずかしい! ちゃんと着替えて、新しい包丁を買ったらすぐに探しに行かなきゃ! 待っててね、慶斗」
普段の様子とは乖離した少女は、上機嫌に部屋に戻っていった。マンションの敷地内には、ただ血の海が広がり、死体が転がるだけだった。
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