第20話 侑梨はメールで悩む
side 芹澤侑梨
その日の夜。侑梨は自室にて直矢から交換してもらった美唯のアカウントと睨めっこをしていた。
彼によると美唯は自分からメールが来るのを楽しみにしているらしく、追加されたのに気づいても待ってると言っていたらしい。
「はぁ…美唯さんとは何度かお話しましたけど、メールとなると悩みますね」
これが愛する直矢ならいくらでも書けるのだが…侑梨は重いため息をつきながら、いくつか文章をメモ欄に書くことにした。
『美唯さんお久しぶりです。今回はデートのご招待をありがとうございます。当日は楽しみにしてます』
『お久しぶりです。今回はお誘いいただきありがとうございます。美唯さんとのお出掛けとても楽しみです』
『美唯さんこんにちは。今回はデートのお誘いありがとうございます。私も美唯さんとはもっと仲良くなりたいと思っていたので、とても楽しみにしています』
書き終えた侑梨は一つずつ改めて確認していく。
「一番上のは他人行儀すぎるよね…美唯さんとは数回会っているし、堅苦しいメッセージは困りますよね」
そう思い、一つ目のメモを削除した。
続いて二つ目のメッセージに目を向ける。
「これも…ダメですね」
侑梨は首を振りながら二つ目のメモを削除した。
そして残った最後のメモに目を向ける。
「うん。これが一番ですね」
侑梨は頷き、すぐに美唯とのトーク画面を開いた。そして先程下書きした三つ目のメッセージと同じように打ち込み、紙飛行機マークを押して送信した。
その瞬間メッセージに既読マークが付き、美唯から返信が来た。
『侑梨ちゃん、メッセージありがとう!私も侑梨ちゃんとのデート楽しみだよ!もっと仲良くなろうね!』
侑梨は自分のメッセージで嫌な思いをせず、尚且つ美唯も自分とさらに仲良くしたいと思ってくれていたのでとても嬉しかった。
侑梨は微笑したあと返信しようとすると、美唯からもう一つメッセージが送られてきた。
『ということで、今から電話するね!安心して。5分程度だから』
電話という文字を見て侑梨はとても驚いた。
侑梨が美唯と電話するのは待ち合わせ場所で見つからなかった時と思っていたので、これには予想外だった。
侑梨があたふたしている間に、美唯から電話が掛かってきた。彼女は急いで【応答】ボタンを押した。
「も…もしもし。侑梨です」
『侑梨ちゃん!美唯だよ!突然の電話をしてごめんね。電話で予定を決めたくて』
「いえ、大丈夫ですよ。ですが、予定はメールで決めるのかと思っていたので」
『あー。普通はそうだよね。でも私は電話をしてちゃんと決めたいんだよね。ごめんね』
「大丈夫ですよ。美唯さんのことがもっと知れそうな気がするので!」
『なにそれ(笑) でも…ありがとう!』
侑梨がアイドル時代の時も電話で予定を聞くことが多かった。なので電話に出る時には驚いていたが、予定決めに関しては慌てなかった。
「それで予定はいつにしますか?」
『早い方がいいから、今週の土曜日はどうかな?』
それを聞き侑梨は鞄から手帳を取り出し、予定を確認した。そして予定がないことを確認できたので、侑梨は口を開いた。
「はい、大丈夫ですよ」
『やったー!それじゃあ、土曜日の11時ごろに駅前の改札口で待ち合わせね!』
「分かりました。私も楽しみにしております」
『それじゃあ、急に電話してごめんね。それじゃあ、侑梨ちゃんおやすみ』
「はい。お休みなさい」
侑梨は一言いい電話を切ると、美唯から先程決めた予定と、「楽しみだね」と書かれた笑顔の女の子のスタンプが送られてきた。彼女はそれに対して、サムズアップしている犬のスタンプを送った。
そして手帳を開いて予定を書き、カバンに仕舞ってベッドに横になった。
「美唯さんとのお出掛けは楽しみですが、直矢くんとのデートも早くしたいです…」
侑梨はボソッと呟き、ゆっくりと目を閉じた。
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