第19話 友達の彼女は元アイドルとデートしたい
あれから数日が経った。新生レグルスのライブの件は、侑梨のおかげで行けるようになった。
彼女の話によると、社長とマネージャーに俺のことを熱心に説明したらしく、2人とも渋々首を縦に振ったらしい。
「朝からぼーっとしてどうしたんだ?」
「きっと侑梨ちゃんのことを思っていたんだよ」
俺が机で頬杖をついていると、和樹と大浪さんがやって来た。
「2人ともおはよう。ちょっと、考え事をしてた」
「直矢が考え事だ…と?!」
「侑梨ちゃんのことを考えていなかったの?」
2人は俺を何だと思っているんだよ…まぁ、大浪さんの言ってることは間違ってないけど。
「侑梨のことだけど、もっと広く言えばレグルス関連だな」
「芹澤さんが元いたグループだよな。レグルス関連ってことは何かやばいことでも起きたのか?」
「きっと、侑梨ちゃんを奪い返しに来たんだよ」
奪い返しに…って。レグルスって言葉だけで、そこまで想像できる大浪さんは凄いな。
「やばいことでもないし、奪い返しにも来ていない。簡単に言えば…」
ここでふと思った。新生レグルスのライブはまだ告知前だ。世の中のファンは誰一人と知らない。そう、関係者以外。
「直矢どうした?早く続きを言ってくれよ」
「私も気になるよ!!」
和樹は俺の肩を揺らして、大浪さんは目を輝かせて続きを待っていた。
とりあえず、レグルスの2人が家に来たことだけ伝えることにした。
「先日、家にレグルスの上条寧々さんと蒼井紗香さんが遊びに来たんだよ」
「「………」」
「それで紅茶を飲みながら、侑梨が俺のことを紹介したりして1日過ごしてたんだよ」
俺が簡潔に話をすると、大浪さんは和樹と顔を合わせて口を開いた。
「和樹。私の聞き間違えではなければ、家にアイドルが2人来たって言ってたよね」
「あぁ、俺もそう聞いた。直矢の家にレグルスメンバーが全員揃ったことになるな」
そして2人同時に俺の方を向いた。
「直矢くん。そんな自慢話で何に悩んでいるのかな?私には惚気の一つにしか聞こえないのだけど」
「俺もさ、直矢が惚気話をしているようにしか見えなかったわ」
「ここまでの話を聞けば2人ともそう思うのは仕方がない。だけど蒼井さんには睨まれるし、上条さんには質問をされるなど色々あったんだよ」
「それをファンの人達に言ってみろ。彼らは直矢のことをずるいと思うだろう」
「もしかしたら、直矢くん刺されるかもね」
大浪さんはニヤニヤしながら呟いた。
「大浪さん。そんな物騒なことは言わないで…現実になったら洒落にならないから」
「そうだよね〜直矢くんには侑梨ちゃんを幸せにするという使命があるもんね」
大浪さんの言葉に何故か自分の顔が熱くなるのを感じた。未だに侑梨を幸せにする権利が自分にあるのか分からないが、大浪さんの言う通り彼女が幸せだと感じるように頑張ろうと思った。
と思っていると、「それで」と大浪さんは言葉を続けた。
「私、侑梨ちゃんと2人でデートしたいんだけど、直矢くんから伝えてくれない?」
「2人でって…俺と和樹はどうするんだよ」
「2人でどこかに出掛ければ?私は侑梨ちゃんとお話したいから」
「美唯…嘘だよな。俺を置いていくことはしないよな…」
和樹は大浪さんの肩を揺らして、自分も連れて行ってほしいと懇願していた。
「Wデートの話だと思ったけど、それとはまた別なのか?」
「うん!私、個人が侑梨ちゃんと遊びたいから」
「分かった。とりあえず、聞いてみるだけ聞いてみるよ」
「ありがとう!あと、和樹はうるさいから静かにして」
俺は苦笑しながらズボンのポケットからスマホを取り出し、侑梨にメッセージを送った。
メッセージはすぐ返信が来て、『直矢くんがいないのは辛いですが美唯さんとは仲良くなりたいので、その話を受けます』と来た。
「大浪さん。侑梨から返信が来たよ」
「侑梨ちゃん早いね〜 それでなんて来た?」
「簡潔に言えば、デートの話を受けますだって」
「やったー!!侑梨ちゃんとデートができる!」
大浪さんは侑梨とデートできると分かり、胸の前でガッツポーズをしていた。
その横ではポツンと和樹が落ち込んでいた。
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