第15話 彼女の元仲間がやってきた

side 寧々&紗香 

 

 インターホンがなる少し前、マンション近くの歩道では異彩を放っている二人がいた。


 一人はジージャンコーデをお洒落に着こなして歩いている———蒼井紗香。

 もう一人はトップスがピンクでスカートがチェック柄を着て可愛さをアピールしている———上条寧々。


 彼女たちは周囲の人達が通り過ぎるたびに振り返ったり見惚れているのを気にせずに、自分たちの世界へと入っていた。


「もう少しで侑梨ちゃんが住んでいる家に着くね。どんなお家なのか楽しみだな〜」

「そうだな。私は侑梨が紹介してくれる男が気になる」

「メールの時も言ってたけど、なんでそんなに直矢くんのことが気になるの?」


 グループメッセの時、紗香は男が気になると言って侑梨の我が儘に付き合った。それを不思議にずっと思っていた寧々は、このタイミングで聞くことにした。


「侑梨は私たちの大事な仲間だ。そこら辺の変な男に侑梨は渡さない」

「それは過保護過ぎるよ。コメントでの意思を尊重するはどこいったの?」

「………あれは報道関係向けのコメントだ。本心な訳ないだろ」

「マジか…紗香ちゃんにそんな一面があったとは」


 グループを組んで数年経つが、紗香の新たな一面を見れて寧々は少しだけ嬉しかった。


「寧々だって、私に隠していることあるだろ?」

「えっ…何もないよ」

「間があったから、隠し事はあるんだな」

「ないよ!!そんなことより、マンション見えて来たよ!!」


 寧々は目的地であるマンションが見えて来たので、指を差し話題を変えた。

 紗香はため息をつき、差された方に視線を向けた。


「私がインターホンを鳴らしていい?」

「寧々の好きにしろ」

「やったー!」


 寧々はインターホンまで小走りで向かい、侑梨の住む部屋を鳴らした。寧々と紗香はエントランスを開けてもらえるのを待った。


XXX


side 芹澤侑梨


 インターホンのベルが鳴った。侑梨はドアホンの受話器を手に取り、外にいる二人に声を掛けた。


「お待ちしておりました」

『侑梨ちゃんこんにちは!少し早かったけど大丈夫だった?』

「えぇ、朝食も終えてますので大丈夫ですよ。今開けますね」

『ありがとう!』


 侑梨はドアホンにある【解除】ボタンを押して、2人が中に入れるようにした。

 そして2人が中に入るのを見届けると、受話器を元に戻した。


 侑梨は踵を返して直矢の方を向いた。

 直矢は緊張した面持ちで、ソワソワしながら椅子に座っていた。


 その様子に侑梨は うふふ… と笑みを溢し、直矢の元に近寄った。


「大丈夫ですよ。寧々も紗香もとってもいい人達なので、直矢くんとも仲良く出来ますよ」

「うん、俺も2人のことをよく知っているよ。だから侑梨…ありがとう」

「いえいえ。私はずっと直矢くんの味方ですから」


 侑梨は優しく微笑み、2人を迎えるために玄関へと向かった。


「侑梨ちゃん数日ぶりだね!会いたかったよ!」

「寧々ちゃん!私も会いたかったよ!」


 ドアを開けた瞬間、寧々が侑梨の胸元に飛び込んできた。侑梨は彼女を受け止めて、再会を喜びながら抱き合った。


 そして抱き合いながら後ろにいる紗香にも視線を向け、侑梨は口を開いた。


「紗香ちゃんも!」

「そうだな。元気だったか?」

「うん!元気にしているよ!」

「そうか」


 紗香は腰に手を当てながら微笑した。


 侑梨は寧々から離れて、一つ咳払いをしたあと室内へと案内をした。


「寧々、紗香。こちらが私の許嫁であります直矢くんになります」

「い…い…許嫁?!侑梨ちゃん、メールでは好きな人としか言ってないよ?!」

「………」


 寧々は目を大きく見開きながら叫び、紗香に至っては無言で———いや、呆然としていた。


 侑梨は苦笑しながら頬を掻き、直矢に一言求めた。そして彼はため息をつき、口を開いた。


「えっと…斑鳩直矢と言います。よろしくお願いします」


 

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