第4話 推しアイドルとの関係性を迫られる
「えっと… 直矢と芹澤さんの関係を教えてくれないか?もしかして、今朝疲れていたのと関係あるのか?」
「そうそう!なんで、ごく普通の直矢くんがアイドルの侑梨ちゃんとそんなに仲良さそうなの?」
俺と侑梨、そして和樹と大波さんは学校近くにあるファーストフード店にいた。
席は俺と侑梨ペアと和樹と大波さんペアである。
事の発端は数十分前の校門前になる。
侑梨が俺のことを迎えに来たことで、野次馬たちの視線は一斉に俺の方に向いた。
『斑鳩!?お前… 芹澤侑梨とどうゆう関係だ?!』
『えっ、侑梨ちゃんの思い人ってこんな普通の人なの?』
『おいおい、俺の侑梨ちゃんがあんな変な奴に取られたのか?!』
などと、侑梨を批判するのではなく、俺に対しての批判が多かった。
それを見かねた和樹と大波さんが、俺と侑梨を野次馬から引っ張り、そして今に至る。
「どこから話せばいいんだろう…」
俺は二人に迫られて、苦笑しながら頬を掻く。
本来なら侑梨のことを話さずに今朝の話の続きをしたかったのだが、彼女が来た時点でそれは無理になった。
「とりあえず、侑梨ちゃんとの関係と迎えに来たことに関しての理由の二つかな」
大浪さんは人差し指と中指を順番に立てながら、話してほしいことを言ってきた。
その二つはすぐに答えることはできるのだが、俺はそれをなかなか口に出すことができなかった。
和樹や大浪さんを信用していない訳ではないが、どこで情報が漏れるか不安だった。
ましてや、ファーストフード店で話している以上、慎重にならないといけない。
「私と直矢くんは許嫁です。同棲をします」
俺が頭を悩ませていると、横にいた侑梨が突然俺の腕に抱きつき口を開いた。
……腕に柔らかい感触が当たっている。
恐る恐る、俺は二人の方を見た。
「なっ… 直矢と芹澤侑梨がい———」
「はいはい、大声で出さないの」
あまりの衝撃的なカミングアウトに和樹は大声で叫び、美唯が直前で彼の口を手で塞いだ。
「おい、ちゃんと順番に話さないとダメだろ?それに、俺たちは付き合っていないのに同棲や許嫁って飛躍しすぎなんだよ」
「そんな… 私、直矢くんと同棲するの楽しみにしていたのに、許嫁だって嬉しかったのに…」
侑梨は涙目になりながら、上目遣いで心情を呟いてきた。
元アイドルの上目遣いは破壊力抜群で、俺の心はキューピッドの矢が刺さった感じにドキドキしていた。
「ふむふむ、つまり直矢くんと侑梨ちゃんは同棲と許嫁の仲であり、今のところ侑梨ちゃんの片想いって感じなのね」
俺たちの様子をずっと見ていた大浪さんが、顎に手を当てながら頷いていて。
それを聞き侑梨は俺の腕から離れて、視線を大浪さんの方に向けた。
「美唯さんと言いましたっけ?貴方、最初は泥棒猫かと思いましたが、良いことをいいますね」
「えっ… 私が泥棒猫?!私は横にいる和樹の彼女だから、直矢くんとは永遠に友達だよ!安心して!」
大浪さんは驚いたあと和樹の方に指を差し、笑いながら否定した。
侑梨は安心したのか、ツンとした表情が柔らかくなっていくのが分かった。
……それよりも、片想いか。
大浪さんの言葉の中にあった、「片想い」という言葉が頭の中でリピートしていた。
侑梨は最初から俺に対して警戒心なく近寄り、ボディータッチもかなり多い。どっかのネットで見たことあるがボディータッチが多い女性は、その人に対して好意があると書いてあった。
俺は今までそーゆう場面に遭遇をしたことがなかったので信じていなかったが、現在それを体験している。それに目の前のカップルもボディータッチが多いから、ネットのやつは本当らしい。
「それで直矢と芹澤さんは付き合わないのか?」
「えっと…付き合うのはまだ分からない。侑梨のことはアイドル時代から知っているけど、プライベートとなれば話は変わるし…」
侑梨と大浪さんの会話を聞いていた和樹が、俺に話の核心をついてきた。
付き合うにしても彼女とはプライベートで会ってまだ数時間だ。そんな急に付き合えばと言われても、俺にはそんな度胸はない。ヘタレだな俺。
「ならさ、お試し期間っていうのはどうかな?同棲や許嫁はなんか色々と訳がありそうだけど、その同棲で二人のことを知っていけばいいし!なんなら、私たちとWデートをするのもいいよ?」
大浪さんが手をパンっと叩き提案をしてきた。
彼女の提案は確かに魅力的な案ではある。実際、侑梨の方に視線を向けると、侑梨もワクワクした表情をしていた。
……推しにこんな笑顔を見せられたら断れないよな。ファンってチョロいな。
俺は侑梨の方に視線を向けると、彼女は俺の方を向きながら服の袖を掴み首をコテンとしてきた。
まるで、子犬が何かを求めてきている時の表情だった。
これが最後のトドメとなり、俺は大浪さんの案に乗ることにした。
「分かった。大浪さんの言っているお試し期間をやろう。侑梨もそれでいいか?」
「はい!ですが、同棲や許嫁は決定事項なので、覆すことはできませんよ?」
「付き合う付き合わない関係なく、結婚はするのかよ…」
俺は俯きながらため息をつくと、侑梨に、「養いますよ〜」と言い、ニコニコしながら頭を撫でられた。
「和樹、私思うんだけど、この二人って相性完璧だと思うんだよね」
「奇遇だな。俺もさっきから見ていたが、話は合ってるし関係性もいい感じ。さらに直矢の推しアイドルだから、最高だと思う」
「私たちも侑梨ちゃんに負けないように、いっぱいイチャイチャしないとだね!」
「だな!」
そして目の前では人のネタをダシに使い、イチャイチャしている二人がいた。
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