第101話





 あれからお互いの家に行きし、家族ぐるみの付き合いを本格的にし始めた夏休みも終わり、本日が新学期最初の登校である。


 勿論、麗華と付き合っていく以上相手の親御さんに『こんなだらしない男にうちの娘を預ける事はやっぱりできないっ!!』と、言われないかもしれないけれども心の中ではそのような事を思われてしまう可能性もある為そこはしっかりと夏休みの宿題を終わらしてきている。


 それこそ例年通りであれば八月後半、それこそ夏休みが終わってしまう二日から三日前くらいになってから焦り出し、やっと宿題をやり始め、最終日ともなると寝ずに終わらすという流れであったのだが、今年は麗華との旅行前に全て終わらしてしまっていたのでかなり余裕のある夏休みであったと言えよう。


「おはよう」

「おう、おはよう」

「それで、お前……夏休みに何か進展はあったのか?」


 そんな、余裕しかない俺を見つけて友達が挨拶してくる。


「何かって何だよ?」


 こいつの聞きたいことはどうせ俺と麗華との仲であろうことは容易に想像できるのだが、だからこそ素直に答えてしまうのは何だか癪な為敢えて気付いていないかのように答える。


「そんなの決まっているだろう? お前だって本当は気づいているんだろう? お前に聞く事と言えばあの事しかないだろう? お前と麗華の仲についてだよ」

「はぁ? それはもう仲は良いけど? お前にとっては残念だろうけど別れるつもりは無いぞ?」

「はぁぁぁぁあっ。 お前なぁ。 わざと言ってんだろ?」


 そう俺が答えると、友人は深くため息を吐く。


「いや、いたって真剣なんだが?」

「そうかもしれないが、そうじゃないだろうっ!! 麗華とやったのかやってないのか、どうなんだって事を聞いてるにきまってんだろうっ!? お前ら二人の仲がラブラブなのは見てて分かるわっ!!」


 はやり俺の思っていた通りの内容であった為、少しばかりげんなりする。


 今日一日で既にコイツ合わせて三人には聞かれているので流石に鬱陶しいし、周囲にいる男性陣の耳が俺の方向へ向いており、間違いなく聞き耳を立てている事にも気付いている。


「はぁ、お前なぁ。 そんなプライベートな内容を言う訳ないだろう?」

「そこを何とかっ!!」

「いや、頭下げられても無理だろ。 ってかむしろなんで頭を下げたら教えてもらえると思ったのか」


 これからこういう事を聞かれるのだろうから慣れていかなければ、と漠然とそんな事を思いながら俺は友人へ頭を下げられても無理だと答える。

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