第96話 流石に性欲が強すぎませんかね?


 そして、恐る恐る麗華の方へと視線を向けると、とてもではないが人様に見せられないような、欲望に目を輝かせ、涎を垂らしている表情が目に入って来る。


「ご、ご主人様っ!! もう、ご主人様もやる気満々だったんじゃないのっ! それならそうと言ってくれれば私もここまで悩まずに済んだと言うのに……っ。 でも、ご主人様はいつも口だけで態度に示してくれなかったから、このサプライズは物凄く嬉しいかも……っ!!」


 そして普通に勘違いをした麗華を見た俺は訂正する気も失せた俺は麗華を勘違いさせたまま今一度ベッドの方へと視線を戻す。

 

 そこにはやはりと言うか目に映るベッドは一台しかなく、どう見てもツインではなくダブルベッドであった。


 確かに、急に開いているホテルを探すことになった上に『彼女と泊まる為二人用の部屋』と予約を入れてはいたもののベッドの形状まで指定はしていなかった。


 しかし今日日きょうび二人部屋の部屋、それもビジネスホテルでツインじゃなくてダブルのベッドの部屋があると誰が想像できようか。


 まぁ、結果想像できなかった俺が招いた結果が目の前の惨状なのだが……。


 てかこれ、夜はマジでヤバいんじゃなかろうか? 腹を空かせた猛獣のいる檻の中に入るようなものではないか……。


 うん、夜の事は考えるのは止めよう。


「よ、喜んでくれたのならば良かったよ……っ」

「もうっ最っっ高よっ!! では、さっそく私とご主人様とでこのベッドの使い心地を確かめようかしらっ!?」


 そして麗華は早速ベッドの使い心地を確かめたくて仕方がないのだろう。 目をキラッキラと輝かしながらそんな事を言ってくる。


 もし麗華に犬の尻尾が生えていたのならばはち切れそうな程に振りまくているであろう事が容易に想像できてしまう。


「いや、ここへ来るときも言ったけど、せっかく旅行に来ているんだからまずは荷物を置いて街を観光しに行こうぜっ」

「分かったわ……」

「分かってくれたかっ!? じゃぁ早速荷物を置いて──」

「本当は明日の朝まで、二人がどろどろに溶け合いそうなくらいにヤルつもりだったのだけれども、一回戦だけで我慢するわ……っ」

「やらないよっ!?」


 そして、当初説明していた通り観光しに行こうと麗華を説得できたと少しばかり喜んでいたのだが、その次に麗華の口から『一回戦だけで我慢する』という言葉が飛び出してくるではないか。


 流石に性欲が強すぎませんかね? 麗華さん。


「えぇ……そ、そんなっ!?」

「なんで『そんなっ、噓でしょっ!?』みたいな表情をされなければならないのかなっ!? むしろどちらかというとその表情は俺の表情だと思うんだけどっ!?」

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