第85話 流石にこれ以上はヤバい
そして俺はなおも朝比奈にペットについて話していくのだが、余計に意味が分からないというような表情をしだす。
それもそうだろう。
俺だって恋愛のあれやこれやについて話しているのに急にペットの話をされても困惑してしまうだろう。
それもどこか要領のえないふわふわした内容であるのならば尚更。
「だから何で今ペットの話をしているのよっ? そんなどうでもいい事なんて後でいくらでも聞いてあげるから今は晴れて両想いになった恋人同士、イチャイチャと手を繋いで登校しようよ。 私、好きな人と手を繋いで登校するの夢だったんだ」
そして麗華はもうペットの話はお終いとばかりに話題を恋愛へと戻して『好きな人と手を繋いで登校するのが夢だった』のだと顔を赤くしながら喋るではないか。
そんな事を喋る朝比奈は年頃の恋する乙女といった感じでやはり俺が好きになっただけの事はあると思えるくらいには可愛らしいと思ってしまう。
もしあの日、俺が告白した時に今のように素直に朝比奈が返してくれてたのならば、きっと俺の彼女として隣を歩くのは朝日奈であって麗華ではなかっただろう。
でも、朝比奈は俺を試した。 それも最悪な方法で。
だから今更そんな素直になった所で俺はもう朝比奈を選ぶ事は無い。
「朝比奈」
「さぁ、早く手を握ってよ? 祐也。 みんなに見られているから早く──」
「朝比奈っ!!」
そして朝比奈は俺に手を握るように急かしてくるのだが、俺はその朝比奈の声を遮って名前を呼ぶ。
すると、流石の朝比奈も何かを感じ取ったのか黙ってくれる。 むしろあの表情は『まさか祐也が大声で怒鳴るなんて……』というような表情に見える。
「さっきも言ったと思うけど俺は氷室麗華と恋人として付き合っているから、もう朝比奈と付き合う事はできない。 それと俺にとって麗華は──」
そして俺は隣でずっと俺の腕を組んで離さず朝比奈を睨んでいる麗華のカバンから首をとリードを取り出すと、そのまま首輪を麗華の首につけ、その首輪にリードをつける。
「──恋人でもあり俺のペットでもある。 麗華を俺のペットにしたその時に、俺は最後まで麗華と付き合う覚悟をした。 最後まで面倒をみる覚悟を。 そして何よりも俺は氷室麗華の事が異性として好きだ。 朝比奈の事は確かに前までは好きだったけど、フラれた時にその感情は無くなった。 もう俺は朝比奈の事は好きでも何でもない。 ただの幼馴染でしかない」
「あぁっ、ご主人様っ。 ご主人様っ。 流石にこれ以上はヤバいわっ」
そして俺は自分の気持ちを朝比奈にぶつけているまさにその時、麗華が太ももをモジモジと擦りながら俺の裾を引っ張るではないか。
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