第82話 これって浮気だからね

「いや、マジで何で俺がお前に怒られているのか理解できないんだが?」

「はぁっ!? そんなことも分からないわけっ!? 本当にアンタって人は昔からそうよねっ!! もう少し頭を使いなさいよっ!! こんな事も分からないなんてバカなんじゃないの? だから私にフラれるのよっ!!」


 そして俺が何で朝比奈からここまで怒られているのかが全く理解できないためその事を朝比奈に聞いてみるのだが、答えではなく罵詈雑言が返ってくるではないか。


 今まで俺は朝比奈の事を好きだったからこそこういう理不尽に怒る姿も、小さな身体でめい一杯自分の感情を伝えようと頑張っているように見えて可愛いなと思っていたのだが、今好きでもなんでも無くなった今改めて見てみると、ただの癇癪持ちの面倒臭い奴にしか見えず、なんならあの時付き合う事にならなくて良かったとすら思えてくる。


 あんな感じで訳も分からずにキレられていては、付き合っている当初ならば可愛いと思う事で誤魔化せる事ができたかもしれないが、冷めてみてから『癇癪持ちの面倒臭い奴』に見えてしまっているように、付き合っていた当初のような新鮮さが無くなっていくにつれて、やはり癇癪持ちの面倒臭いやつと思ってしまっていただろう。


 そうなってしまっては後は限界がきて俺からフルという流れになるだろう。 


 先にフラれてしまうか、後からフルかの違いしかないのだが、後者は時間を消費してしまう分、先にフラれて良かったとすら思ってしまう。


 しかしながらその結果俺は半ば脅迫じみた告白により麗華という変態、ではなくてペット、ではなくて彼女ができたのだから人生どうなるか分からないものである。


「いやまぁ、今俺がフラれた事とか何の関係も無くね?」

「はぁっ!? あるに決まっているでしょうっ!?」

「いやだから何でだよ。 その理由を言わないと分からないだろが」


 そして俺はなおもなぜ怒っているのか理由を話そうとしない朝比奈にだんだんど苛立ってきてしまう。


「だ・か・らっ、アンタは私の事が好きなのに何で麗華とかいう泥棒猫と公衆の面前でキスなんかしてんのって言ってんのっ!! 何でそんな事も分からないのっ!? これって浮気だからねっ!!」


 そして朝比奈はようやっと怒っている理由を教えてくれるのだが、その理由を聞いて俺はますます意味が分からなくなってしまう。


 そもそも俺が朝比奈の事がまだ好きだと勘違いしてしまっている事は、日数もそんなに経っていない為まだ分かるのだが、しかしながらだからと言って俺が麗華とキスをする事が浮気になるとか意味が分からないんだが? そもそも朝比奈は彼氏がいるのでは?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る