第80話 俺に死ねとでも言うのだろうか?

 そしてその誰もが氷室麗華と一緒に手を繋いで登校している男性の正体が気になるのか俺の顔を確認いては『は? コイツがっ!? これならば俺にもチャンスがあるかもっ!!』という表情(実際に口にする者もいた)をする者や『あ? こんな奴に俺の氷室麗華を取られたっていうのか? 許さねぇ……』という表情で怨念の籠った視線で睨みつけてくる(実際に口にする者もいた)者もいた。


 あぁ、これでもう俺の平穏な学生生活は終わったな……。 夜道は刺されないように一応気をつけよう。


「あら? 私のご主人様は大人気らしいわね。 私もこんなにも大人気なご主人様と付き合えて鼻が高いわね」

「いやどう見たら大人気だと思えるんよっ!? むしろこの怨念まみれの視線を見てそう思えるのならば一回目の病院に行って診察してもらった方が良いと思うレベルなんだがっ!? 後流石に学校に近づいてきて学生たちが増えてきたからその『ご主人様』っていう呼び方はやめてくれ」

「まったく、悪名であろうとも人気にか変わりないわ」

「まぁ確かに無名よりも悪名高い方がいいとはよく聞くけれども、別に有名になりたいわけでも知名度を上げて金稼ぎをしたいわけではないからな? むしろ無名でいいから平穏な暮らしをしたいだけのなだが?」

「まぁ、私は祐也さんと一緒に入れれば何でもいいのだけれども。 あ、『ご主人様』という呼び方を止めるのは良いのだけれども、その代わりに私にもしてほしい事があるわね。 それで等価交換としましょう」


 そして麗華が『ご主人様』と俺の事を呼ぶのを止める代わりに等価交換で麗華もしてほしい事があると言うではないか。


「まぁ…………それで『ご主人様』と呼ぶのを我慢してくれるのならば別に良いが、一体麗華は俺に何を……っ?」


 等価交換をするのは良いのだが、その内容によっては承諾できない、何なら『ご主人様』と呼ばれる事よりも酷い内容である可能性が、麗華ならばあり得そうなので一応その等価交換の内容を聞こうと思ったその時、麗華が手を繋いだまま俺の前に回り込んでくるではないか。


「ぎゅっとして、その……その後キスをしてほしい…………って言ったらダメかしら?」


 流石の麗華も同じ学校に通う学生たちが大勢いる、それもその殆どが俺たちに注目している中でそういう事を言うのが恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしながらそんな事を言ってくるではないか。


 何だろうか? 俺に死ねとでも言うのだろうか?


 しかしながらこのお願いを言うのに麗華がどれだけの緊張して、勇気を振り絞って言ったのかが繋いで手から伝わって来た為、ダメだと言えるわけがない。


 そして俺は麗華を抱きしめた後、唇が重なるだけの麗華にキスをする。

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